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【シェアリングビジネス】物流不動産の異業種、VBとの協業が急加速

2017.11.16

物流業界の労働力不足は物流不動産デベロッパーの戦略にも変化をもたらしている。2000年代以降、物流業界のもろもろの課題に対し、先手を打ってソリューションを提供してきたプレイヤーたちは今、AI・IoT、ロボティクスといった新たな潮流にいち早く乗るべく、異業種やベンチャービジネス(VB)との協業を急加速。物流業界でじわりと台頭しつつあるベンチャー発の“シェアリングビジネス”にも熱い視線を送る。

物流業界、変革の中心にベンチャーと“異業種”

「倉庫というインフラの担い手は、かつては倉庫会社だったが現在は違う。今、物流業界で起きつつある変革は、2000年代に物流不動産が登場したレベルを遥かに上回る、とてつもない大きな変化だ。しかもその中心にいるのは物流会社ではなく、Amazonやベンチャーといった“異業種”」と物流不動産関係者は話す。物流不動産とVBとの協業の背景にはこうした認識がある。

物流分野の労働力不足という“特需”に着目したソリューションとして、無人搬送ロボット、ロボット型自動倉庫など庫内の省人化・省力化設備のほか、AIのテイストを濃くした求荷求車プラットフォームなどが登場。ライドシェアサービス「Uber」を物流に応用したビジネスモデルも注目されている。こうした中で、新たな潮流の担い手であるVBと物流不動産業という異色のタッグが広がりつつある。

「トラックの確保」で物流版Uberとのシナジーも

従業員確保の観点から、シェアビジネスにいち早く接近したのがプロロジス(本社・東京都千代田区、山田御酒社長)。庫内作業員の通勤の利便性向上を図るため、1月から「プロロジスパーク市川」(千葉県市川市)でタイムズ24のカーシェアリングサービス「タイムズカープラス」の提供を開始。グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(GLP、本社・東京都港区、帖佐義之社長)も1月竣工の「GLP柏Ⅱ」(千葉県柏市)で入居企業向けに共用のレンタルサイクルを配備した。

テナントの最大の関心事である「トラックの確保」のソリューション提供に舵を切ったのがシーアールイー(CRE、本社・東京都港区、亀山忠秀社長)。9月に“物流版Uber”のCBcloud(本社・東京都千代田区、松本隆一社長)との資本業務提携に合意。同社が提供する荷主、物流会社と個人ドライバーのマッチングプラットフォーム「PickGo」の活用とスペースの提供のシナジーを探ろうとしている。

「垣根を越えたスペースシェアリング」の構築へ

トラックドライバーが“枯渇”しているのに対し、近年の物流不動産の大量供給によりスペースは“過剰”ぎみ。余ったスペースの有効活用の潜在的ニーズは大きい。物流不動産は10万㎡級の巨大化傾向が続いており、テナントも長期かつ大規模な賃貸借契約が多いが、一時的に施設に空きが出たり、テナントが閑散期だけ他企業にスペースを転貸したいという“スポットニーズ”がある。

こうしたスペースの有効活用に着目したのが、souco(本社・東京都千代田区、中原久根人社長)の物流施設スペースのシェアリングプラットフォーム。プロロジスはsoucoへの支援を8月に発表し、物流不動産各社や3PL会社にも空きスペースの登録を呼び掛けるなど「垣根を越えたスペースシェアリング」の構築を打ち出した。10月にはGLPもsoucoとの基本契約を結んでいる。

AI・ロボット活用で次世代物流センターの共同開発も

AI・ロボットVBとの協業も広まっている。大和ハウス工業(本社・大阪市北区、芳井敬一社長)は6月、GROUND(本社・東京都江東区、宮田啓友社長)と資本業務提携契約を締結。物流ロボットシステム「Butler(バトラー)」の独占販売権を有し、AIを活用した「物流リソース最適化ソフトウェア」を開発する同社との連携により、次世代型物流施設の共同開発を進めていく方針だ。

大和ハウスは9月には、クラウド型配車・運行管理システム「MOVO(ムーボ)」を展開するHacobu(本社・東京都港区、佐々木太郎社長)とも資本業務提携。「コネクテッド・ロジスティクス・ネットワーク(Connected Logistics Network)」の共同開発・展開の一環として、倉庫周辺でのトラック滞留の解消に向け、大和ハウスの倉庫と連携可能なクラウドベースのソリューションの共同開発に取り組む。

11月9日には、グループ会社のSCSホールディングスを通じeコマース分野に強みを持つアッカ・インターナショナル(本社・東京都港区、加藤大和社長)の発行済株式のすべてを取得して孫会社化する、と発表。大和ハウスが手掛ける物流施設開発事業において、ハード面だけでなくソフト面での強化を含めた次世代物流センターの構築を目指す。

CREはPAL(本社・大阪市西区、辻有吾社長)とロボティクスやIoTプラットフォームを活用した次世代物流センターの共同開発に着手。プロロジスはアッカ・インターナショナルと連携し、「プロロジスパーク千葉ニュータウン」(千葉県印西市)で、AI機能を持つ無人搬送ロボットを導入。次世代の物流オペレーションに適した施設開発の参考とするため、施設内のIoT化やAI・ロボット活用の課題を検証する。

物流不動産業界はワンフロアで効率的に利用できる巨大なスペースの提供とともに、免震構造、太陽光発電といった社会のニーズを先行して取り込んできた。物流分野の労働力不足が深刻化する中、複数のテナントが入居する「マルチテナント型物流施設」の特性をいかし、最新機器・システムの共同利用やトラックやパート従業員のシェアなど新たなソリューションの開発が期待される。
(2017年11月16日号)


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