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【ズームアップ】賃貸型危険物倉庫の開発が活発化

2024.05.30

リチウムイオン電池などの需要増やコンプライアンス遵守の動きを背景に、危険物倉庫の需要が高まる中、物流不動産デベロッパーが賃貸型危険物倉庫の開発に力を入れている。危険物倉庫は消防法上の規制で保有空地を確保しなければならないなど、土地の利用効率は悪い一方、1000㎡の平屋が大半のため、建築費は抑えられる。普通倉庫は供給過剰気味で空室率が上昇傾向にあるのに比べると、危険物倉庫の需要は堅調。需要と開発コストの両面で魅力が高まり、デベロッパー各社の供給を後押ししている。

プロロジスは古河で8棟の危険物倉庫を建設中

物流施設を専門とした大手不動産デベロッパーの中でも、危険物倉庫の大規模な開発戦略を進めているのがプロロジスだ。茨城県古河市での物流開発プロジェクト「プロロジスパーク古河 フェーズ2」では、化粧品やアルコール類などの保管などを視野に、2023年5月に竣工した「プロロジスパーク古河4」など、危険物倉庫(HAZMAT倉庫)を併設した物流施設の開発が進捗している。

「古河」のプロジェクトでは以前にも、ロジスティードケミカル(旧日立物流ファインネクスト)と共同開発した既存施設「プロロジスパーク古河2」に8棟、センコー専用施設の「プロロジスパーク古河3」に2棟の危険物倉庫を併設。他エリアの施設も含めて、プロロジス全体で危険物倉庫を併設した物流施設は15棟にのぼる。

大型物流施設に危険物倉庫を併設する狙いについてプロロジスでは、普通品と危険物をそれぞれ離れた倉庫で保管すると、倉庫管理者は各倉庫に配置する必要があるが、エリア内のマルチテナント型物流施設と併用することで1ヵ所だけの配置で済むため、人件費の削減につながるほか、施設が隣接していることから、倉庫間の輸配送距離の短縮にもつながるなど、効率的な運用が見込めるとしている。

さらに「フェーズ2」では危険物倉庫8棟で構成される大型倉庫「プロロジスパーク古河6」(約8900㎡)が、今年12月の竣工に向けて開発中にある。昨年竣工し危険物倉庫を併設した「古河4」に多くの問い合わせがあったことから開発を決めたもので、オール危険物倉庫からなる「古河6」は竣工前ではあるものの、すでに複数の企業から引き合いがあるという。

地方・首都圏を問わず新設相次ぐ

このほか、シーアールイー(CRE)では、2月に福岡県小郡市でBTS型施設「ロジスクエア福岡小郡」を竣工。地上4階建て(倉庫3層)の倉庫棟と平屋建ての危険物庫棟4棟(約726㎡)で構成されており、倉庫棟も含めた合計延床面積は約2万3913㎡で、福岡ロジテムが入居している。

物流施設を専門としない大手不動産デベロッパーも、地方や首都圏を問わず危険物倉庫の開発に意欲的だ。三菱地所は昨年11月にマルチテナント型物流施設「ロジクロス座間」(神奈川県座間市)を竣工。阪急阪神エクスプレスと西濃運輸が入居し、敷地内に危険物倉庫2棟(計1832㎡)を併設している。

大和ハウス工業は「DPL富山射水」(富山県射水市)を21年6月に竣工。敷地内に危険物倉庫2棟(計約1922㎡)を併設した。また、22年5月には「DPL名港弥富Ⅰ」(愛知県弥富市)を竣工しており、敷地内には約557㎡の危険物棟を併設している。

日鉄興和不動産は、物流施設「LOGIFRONT」シリーズで初となる危険物専用倉庫「LOGIFRONT越谷Ⅲ」を埼玉県越谷市で着工した。全4棟の平屋建てで総延床面積は約1454㎡となり、24年6月末の竣工を予定。入居予定である東武運輸のニーズに沿った設計を採用している。

全国的に物流会社による危険物倉庫の新増設が続き、「賃貸型」の潜在需要も見込まれるが、デベロッパーが開発した賃貸危険物倉庫の中にはテナント誘致に苦戦している物件もある。普通品倉庫との〝セット売り〟が入居のハードルとなったり、建設コストの上昇を反映した高額な賃料水準が、物流会社の目線と合っていないとの指摘もある。
(2024年5月30日号)


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