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物流不動産、冷凍冷蔵倉庫に熱視線

2022.11.22

物流不動産デベロッパーが冷凍冷蔵倉庫の開発に本格的に乗り出している。国内では目下、大都市圏を中心に冷凍冷蔵倉庫のスペースがひっ迫し、老朽化も進む。冷凍食品のEC需要の高まりや、食の安定供給の観点からの在庫の確保、既存の施設の建て替えなどによるスペース需要の拡大を見込み、冷凍冷蔵倉の賃貸市場が広がり始めている。

冷食の好調、老朽化による建て替え需要も

国内の冷凍冷蔵倉庫の大半は、大手の冷蔵倉庫会社や低温物流会社の自社所有物件。温度設定など個別性が高い分、施設の流動性が低く、ドライの倉庫と違い賃貸用市場が確立されていない。テナント契約が満了するとその後のリテナントが難しいことから、物流不動産デベロッパーも開発を躊躇する傾向が強かった。

こうした制約もあって、物流不動産デベロッパーによる冷凍冷蔵倉庫の開発はこれまで、テナントが確定しているBTS型が主体だった。キユーソー流通システム向けの「プロロジスパーク仙台泉」、関西丸和ロジスティクス向けの「AZ‐COMロジスティクス京都」、第一倉庫冷蔵向けの「GLP新座」などが先行する事例として知られている。

だが、ここにきて、物流不動産デベロッパーがテナントの決定を待たずに冷凍冷蔵倉庫を開発したり、不特定多数のテナントを想定するマルチテナント型物流施設の開発段階から、冷凍冷蔵スペースを設けるケースが出てきた。霞ヶ関キャピタルのように冷凍冷蔵倉庫の開発をメインターゲットに据えるデベロッパーも登場した。

デベロッパーが冷凍冷蔵倉庫に熱視線を送る理由のひとつが保管需要の高まり。好調な冷凍食品やそのEC化もスペース需要を押し上げるとみられている。また、既存の冷凍冷蔵倉庫の老朽化に伴う建て替え需要も見込まれる。冷凍冷蔵倉庫に目を向ける背景には、ドライの施設の大量供給によるリーシング競争の激化もあるようだ。

低い保管料率、高い賃料とのミスマッチも?

デベロッパーの開発も相次ぐ。日本GLPはこのほど、神戸港で全館冷凍冷蔵物流施設「GLP六甲プロジェクト(写真)」の開発に着手、藤原運輸が1棟全体を利用する。東京建物は埼玉県上里町で吉見グループ向けのBTS型の「T‐LOGI本庄児玉(仮称)」がまもなく竣工。KICホールディングスは、BTS型の冷凍冷蔵型物流施設を神奈川県厚木市で10月に竣工した。

CBREはその調査レポートで、冷凍冷蔵食品のEC化率の進展、老朽化した施設の増加やフロンガス規制の下での建て替えニーズなどを念頭に、「現在は圧倒的に自社所有が多いコールドストレージも、EC普及を契機とする開発ニーズの増加と相まって、少しずつ賃貸不動産にシフトしていく可能性がある」と分析している。

ただ、大手冷凍冷蔵倉庫の関係者は施設の「所有」と「利用」の分離には慎重な構えだ。冷凍冷蔵倉庫で扱う食品は単価が低いため保管料の料率が低く、デベロッパーが提示する高い賃料と冷蔵倉庫のビジネスモデルがマッチしない――との見方だ。営業用冷凍冷蔵倉庫は貨物に応じて施設の改修が生じることも多く、賃貸物件では柔軟に対応しにくいとの意見もある。
(2022年11月22日号)


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