【輸送網集約・共同化】国交省が改正物効法施行1年を総括
国土交通省は24日、2016年10月1日の改正物流総合効率化法の施行から1年が経過したことから、同法に基づき、物流の省力化や環境負荷低減へ向け、2者以上の事業者が連携した総合効率化計画の実績について取りまとめ、発表した。
16年10月1日から17年9月30日までに認定された同計画は51件だった。
ドライバー200人の省力化
総合効率化計画では主な事業分類として3類型があるが、類型別の件数をみると「モーダルシフト」が29件、「輸送網の集約」が21件、「輸配送の共同化」が6件だった(累計は重複あり)。
CO2削減量をみると、約216万本のスギのCO2吸収量に相当する1万9000t/年となった。これは面積に換算すると約21・6㎢で品川区の面積と同程度となる。省力化についてみると、トラックドライバーの労働時間では年間39万6000時間の省力化となり、これはドライバー200人分の労働力の確保に相当する。また、省力化に有効な設備として輸送網集約事業ではトラック予約受付システムの導入が推奨されているが、導入されたのは10件だった。
モーダルシフトの取り組み29件についてみると、貨物鉄道への転換は18件で6割を占めた。内航海運への転換は11件で全体の4割となっており、そのうちフェリーが5件、RORO船が5件、フェリー・RORO船両方が1件だった。
関東~九州間など、鉄道輸送や海上輸送が優位となる500㎞以上の長距離輸送だけでなく、それを下回る距離でもモーダルシフトへの取り組みが見られた。地域別の割合では関東~九州が21%、関東~近畿が17%、九州~中部が10%、関東~北海道が10%、近畿~九州が10%など、長距離間が大半を占めるが、一方では甲信越内が4%、北海道内が4%、近畿~北陸が3%、近畿内が3%など短距離の事例もみられた。
国土交通省の重田雅史物流審議官は、近距離の事例に関して「競争力を発揮する長距離輸送だけでなく、比較的短距離でもモーダルシフトが進んできている。その要因には、輸送モードのリタンダンシー(複数多様性)を確保しておこうとする動きがあるのではないか。効率性に基づく輸送モード選択に加え、BCP(事業継続性)を重視する考え方の表れだ」と説明した。
連携の取り組みが進む
実施事業者の総数は157事業者となり、計画1件あたり平均3・1事業者が参画していることになる。1件あたりの事業者数で最多は8件だった。
重田氏は「物流効率化の実効性を高めるには、複数の荷主や事業者が連携することが必要だ。平均では3事業者が参加し、5者以上の取り組みも目立つことから、連携・協同による取り組みへの意欲の高まりが感じられる」と評価した。
認定取得件数で最多は、モーダルシフトの主要を担うJR貨物の13件だった。次いで、センコーの6件、日本通運と佐川急便が5件で並んだ。
国交省では、今後の取り組み方針として、認定した優良案件の水平展開を図るとともに、これまで認定事例の少ない分野の案件の発掘に注力する方針。輸送分野では、中継輸送や農産品の輸送効率化、鉄道利用の貨客混載輸送、内航海運活用のモーダルシフトなど。加えて、オープン型宅配ボックス導入による共同配送や大規模施設などでの館内物流の共同化などでの計画取得を促進していく。
同省は計画認定取得へのインセンティブとなる支援措置として、18年度予算概算要求にモーダルシフト関連で8600万円と17年度の4000万円の2倍以上を要求。税制の面でも認定計画用に取得した事業用資産に係る特例措置の延長を要求している。
(2017年10月31日号)