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政府、今国会に“荷主規制法案”を提出

2024.01.30

政府は26日から始まった通常国会に、荷主と物流事業者に対して規制的措置を実施する法案を提出する。物流の「2024年問題」対策として荷主と物流事業者の双方に物流改善を促す。法案は荷主を所管する経済産業省、農林水産省と物流事業を所管する国土交通省が作成した。来月中旬にも閣議決定した後、国会に提出し、6月23日までの会期中に法案を成立させ、物流革新に弾みをつける。

中小に「努力義務」、大手には高いハードル

規制法は、すべての発・着荷主と物流事業者(トラック事業者、鉄道事業者、港湾運送事業者、航空運送事業者、倉庫業者)を対象に努力義務を課す方向。昨年6月に政府が取りまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」と、同時期に経産省・農水省・国交省の3省が公表した物流改善ガイドラインの取り組み事項を推奨するもので、「荷待ち時間の短縮」「荷役作業時間の短縮」「積載率の向上」について努力義務を課す。物流改善の進捗への判断基準は所管官庁が策定し、成果が見られない場合は判断基準に基づいて所管官庁が指導・助言を行う。

特定荷主には「物流統括管理者」の選任義務化

一定規模以上の発・着荷主と大手物流事業者(元請)は特定事業者に指定して、より高いハードルを課す。具体的には「荷待ち時間などの記録」「物流改善に向けた中長期計画の策定」「進捗に関する定期報告」などを義務化する。また、特定荷主には役員クラスの「物流統括管理者」(仮称)の選任を義務付ける。物流統括管理者は特定荷主の物流改善を促進するため、中長期計画の策定・実施に中心になって取り組むことが求められる。

特定事業者は企業規模に基づいて指定する方向で、貨物重量や輸送距離を基準に定めることを検討しているが、一方で着荷主にとって輸送距離を把握することは困難な場合も想定されることから、規制法の成立後に判断基準の詳細を実態に即して検討することになりそうだ。中長期計画に基づく取り組みが不十分だと判断された特定事業者には、所管官庁が勧告・命令を発出する。「物流革新に向けた政策パッケージ」の基本方針である①商慣行の見直し②物流の効率化③荷主・消費者の行動変容――はいずれも継続した取り組みが重要との観点から、所管官庁は事業者が実施する流通業務の持続的成長や生産性向上に関する取り組み状況を調査し、必要な範囲で公表する方針。

「実運送管理簿」作成を元請に義務化

規制法はトラック運送業の多重下請け構造の是正を図り、元請に対する義務を設ける。具体的には元請は荷主に対し、実運送事業者の名称、下請次数(1次下請、2次下請けなど)、貨物の内容、運送する区間などを記載した「実運送体制管理簿」(仮称)を提出しなければならない。また、下請取引の健全化を図ることを元請の努力義務とする。恒常的に下請取引を行う一定規模以上の元請に対し、健全化に関するルール集の作成や責任者の選定を義務付ける。加えて、荷主・元請間または元請・下請間のいずれの場合も、運送契約の締結に際して「書面交付(電子メールやFAXを含む)」を義務付ける。
(2024年1月30日号)


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