集中監視で〝悪質荷主〟対策強化=国交省/厚労省
国土交通省は6日、政府が同日取りまとめた「物流革新緊急パッケージ」に基づき、「トラックGメン」による荷主や元請事業者に対する監視を一層強化すると公表した。トラックGメンがこれまで収集した情報や現在実施中の調査によって得られた情報をもとに、11~12月を「集中監視月間」と位置づけ、トラック運送業の適正な取引を阻害する疑いのある悪質な荷主・元請に対し、法に基づく「働きかけ」「要請」「勧告・公表」などの措置を行う。一方、厚生労働省も「緊急パッケージ」の公表を受け、荷主対策を強化することを決めた。国交省のGメンが荷主への働きかけを実施する際に、都道府県労働局に置かれた「荷主特別対策担当官」が参加することで、より一層実効性を高める。また、情報連携も緊密化する。厚労省のHPに寄せられた荷主情報を国交省に提供することに加え、新たに厚労省の「荷主対策特別チーム」が改善を働きかけた荷主の情報を国交省に提供する。国交省は提供された情報に基づき、Gメンによる働きかけなどの対象となる荷主を選定する。
Gメンによる「働きかけ」は120件に
国交省は7月に全国162人体制でトラックGメンを創設。トラック事業者から情報収集を行い、違反原因行為を行っている疑いのある荷主・元請に対し、貨物自動車運送事業法が規定する「働きかけ」「要請」を行ってきた。発足から約2ヵ月の9月末時点でトラックGメンが実施した「働きかけ」は120件、「要請」は5件となった。これに国交省HPの目安箱や運輸局の相談窓口に寄せられた情報による「働きかけ」7件、「要請」1件と合わせると、今年度は4~9月の半年間で「働きかけ」127件、「要請」6件となる。22年度1年間の「働きかけ」26件、「要請」3件と比べ、4倍強の実績が上がった。
厚労省の対策チームは7641件の改善要請
一方、厚労省の「荷主対策特別チーム」の活動も活発に展開中だ。昨年12月23日に改善基準告示が改正されたことに伴い、都道府県労働局に「荷主対策特別チーム」を設立。労働局の荷主特別対策担当官を中心に、労働局と労働基準監督署のメンバーで構成した対策チームは、発着荷主に対し、長時間の荷待ちの改善を図るよう要請を実施。加えて、荷待ち時間解消に積極的に取り組めるよう好事例をアドバイスしている。昨年末から8月末までの約8ヵ月間で、発約荷主に対して7641件の改善要請を実施した。
荷主特別対策チームは、厚労省HPの「長時間の荷待ちに関する情報メール窓口」に寄せられたトラック事業者からの情報や、労基署が担当地域で収集した情報をもとに、改善に取り組むよう要請を行っている。対策チーム発足後、「長時間の荷待ちに関する情報メール窓口」には8月末時点で375件の情報が寄せられ、各地の労基署が担当エリア内の情報を多数収集している。
6日に政府が公表した「物流革新に向けた政策パッケージ」では、「荷主による違反原因行為の調査を踏まえた『要請』等の集中実施」を行うとしており、国交省、厚労省、荷主所管官庁、法執行行政機関などが連携して荷主対策を実施することが明記された。今後は国交省と厚労省の連携強化にとどまらず、経済産業省、農林水産省、公正取引委員会が荷主対策を強化していく可能性もある。
(2023年10月12日号)