【ズームアップ】「トラックGメン」で荷主対策強化=国交省
国土交通省による荷主対策が加速している。6月14日に成立し、16日に公布・施行された貨物自動車運送事業法の一部改正により、柱となる施策のひとつである「荷主対策の深度化」制度を当分の間、継続的に運用することが決まった。また、「2024年問題」対策として政府が取りまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」は物流改善を促進するために荷主対策の強化を盛り込んだ。これを受け、国交省は7月21日に「トラックGメン」制度を創設し、全国162人の陣容で本省と運輸局・運輸支局のGメンによる積極的な情報収集活動に注力している。来月以降、荷主への働きかけや改善要請を強化することで「2024年問題」への対応とともに「中長期的な観点から持続可能な物流を実現していく」(国交省関係者)。
「目安箱」への投稿数が増加
貨物自動車運送事業法が規定する「荷主対策」の一環として国交省HPに設けた情報収集の「目安箱」に寄せられる情報件数は、ここに来て増加している。各運輸局への相談件数も同様に増加傾向にあり、「トラックGメンが足で稼ぐ情報と、既存の窓口に寄せられる情報がこの数ヵ月で急増している印象がある」(国交省関係者)。「目安箱」に投稿された情報は内容を十分に精査する必要があることから、情報件数そのものは公表していない。また、寄せられた情報に基づき、荷主や元請事業者に対して違反原因行為の実態をヒアリングする必要があるため、情報提供から働きかけを実施するまでに一定の日時を要している。
トラックGメンが創設され約3ヵ月。全国で情報収集が行われ、確度の高い情報が集まり、精査が進んでいる。国交省は今月中に一定程度まで対象を絞り込んだうえで、トラック運送の繁忙期となる11月から年末に向け、違反原因行為のおそれのある荷主に対し、貨物自動車運送事業法に基づく「働きかけ」や「要請」を行う考え。
荷主対策のさらなる強化に期待
6月14日に議員立法により貨物自動車運送事業法の一部が改正され、16日に公布・施行された。時限措置として創設された「標準的な運賃」と「荷主対策の深度化」の制度を当分の間、継続的に運用することが決まったが、その背景にはコロナ禍や燃料価格高騰などの影響を受け、トラック事業者の経営環境が悪化の度合いを増していることがある。慢性的なドライバー不足への対応として、長時間労働の削減や適正な運賃の収受を促進し、労働条件を改善することも喫緊の課題だ。
また、24年4月には働き方改革関連法によりドライバーの時間外労働上限規制が適用され、違反した事業者には行政処分ではなく労働法による罰則が科せられることになった。加えて、ドライバーの労働時間を規制する新たな改善基準告示が施行され、違反事業者は行政処分を受ける。物流にとっての〝逆風〟が吹く中、国交省による荷主対策の進捗に期待が集まる。
(2023年10月10日号)