全国に「適正化事業調査員」を創設=国交省
国土交通省は8月1日、都道府県トラック協会に荷主対策を担当する「適正化事業調査員(仮称)」を設置し、運輸局・支局に配置された「トラックGメン」とともに悪質な荷主・元請への監視体制を強化する。適正化事業調査員は都道府県トラック協会の適正化事業実施機関の指導員から選任される。巡回指導などを通じて得た情報を定期的にトラックGメンと共有し、運輸局・支局が実施する荷主・元請への働きかけ・要請につなげる。
「適正化事業調査員」は地方トラック協会が選任
貨物自動車運送事業法では荷主対策の深度化として、トラック事業者の健全な事業運営を妨げ、法令違反の原因をつくる悪質な荷主に対し、「働きかけ」「要請」「勧告」を行うことを規定している。荷主・元請による違反原因行為に関して情報を収集する窓口として国交省HPに〝目安箱〟が設置され、地方運輸局には相談窓口が置かれているものの、情報提供を行ったことを荷主に知られる可能性を危惧し、躊躇するトラック事業者が一定数いることから、情報が十分に寄せられているとは言いにくい面もあった。
そこで昨年6月、「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」で取りまとめられた「物流革新に向けた政策パッケージ」に基づき、発荷主企業のみならず、着荷主企業も含め、適正な取引を阻害する疑いのある荷主企業・元請事業者の監視を強化するため、同7月に「トラックGメン」を創設。緊急に体制を整備するとともに、「トラックGメン」による調査結果を貨物自動車運送事業法に基づく荷主企業・元請事業者への「働きかけ」「要請」等に活用し、実効性を確保することとした。
「トラックGメン」は合計162人の体制だが、運輸局・支局などの職員が兼任していることがほとんどで、通常業務と並行して荷主対策に従事している。業務の遂行体制を強化するため、8月から、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関(地方実施機関)に所属する適正化事業指導員から、調査員を選び、荷主対策業務も受け持ってもらう。調査員は47都道府県で2人ずつ選任され、8月以降94人が情報収集に従事する予定。これにより荷主・元請への監視体制は、トラックGメン、調査員合わせて256人体制に拡充される。
適正化事業は1990年の貨物自動車運送事業法施行時に導入され、違反行為を行っている事業者に対する指導、遵法意識の啓発、荷主に対する要請などを行う事業。地方実施機関は都道府県トラック協会が委託を受け、業務を行うかたちとなっており、適正化事業指導員は、地域の事業者の事情や荷主との関係などについて一定の理解を有していることが多い。その知見を有効活用する意味でも、情報収集を行う調査員は適正化事業指導員から選ぶこととなった。
全ト協は「調査員研修」を各地で開催予定
調査員は荷主への働きかけは行わないが、違反原因行為に関する情報収集を行うことで国交省の荷主監視体制を補完。役割を明確にするため、調査員には適正化事業指導員と同様、身分証明書が交付される。国交省の関係者は「トラック運送の課題解決を図るため、運輸局・支局のトラックGメンと適正化事業調査員が緊密に連携して違反原因行為を指摘し、改善を図っていくことがますます重要になる」としている。
なお、5月15日に公布された「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」ではトラックGメンによる指導体制の強化が盛り込まれている。全国適正化事業実施機関でもある全日本トラック協会(坂本克己会長)は、調査員が実効性の高い業務を実施できるようにするため、8月の制度発足以降、地方トラック協会ごとに「適正化事業調査員研修」を実施。各地の具体的な事情を把握しながら、調査員活動の改善を図り、地方運輸局と連携しながら、適切な情報収集体制づくりを支援する。
(2024年7月11日号)