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「トラックGメン」全国162人体制で発足=国交省

2023.07.25

国土交通省は21日、トラック運送事業者が荷主や元請事業者から不当な取引を強いられていないかなどを調べる「トラックGメン」を創設し、本省などで辞令交付式を行った。全国の地方運輸局・運輸支局などに計162人を配置し、荷主や元請事業者への監視体制を強化。トラック事業者に対して不適切な取引を強いる荷主・元請の情報を収集していく。悪質な荷主・元請には改善を図るよう働きかけ、改善が見られない場合は是正措置を要請する。さらに改善がみられない場合、勧告を出して社名を公表する。

不適切な取引の是正に「一層強力に取り組む」

6月2日に政府が取りまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」では、荷主・元請への監視強化など荷主対策を推進する体制の強化を提言しており、その施策の一環として「トラックGメン」を創設した。

斉藤鉄夫国交大臣は18日に開催した記者会見で、「トラックGメン」の創設について「本省および地方運輸局に162人体制で設置。トラック事業者からの情報収集を強化し、貨物自動車運送事業法に基づく荷主・元請への『働きかけ』『要請』『勧告・公表』制度の執行力を強化し、荷主対策の制度の実効性を高める。また、関係省庁・産業界と緊密に連携し、ドライバーの労働条件の改善と取引環境の適正化に向けた取り組みを進める」と制度の趣旨や概要を説明。また「荷主の都合による長時間の荷待ちや運賃・料金の不当な据え置きなど不適切な取引の是正に向け、一層強力に取り組んでいく」と述べ「トラックGメンはプッシュ型の情報収集を行い対応を強化する」と強い意気込みを示した。

全国に配置するGメン162人のうち、80人は専従で担当し、82人は既存のトラック担当者が併任するかたち。80人の専従者の内訳は本省2人、地方運輸局19人、運輸支局59人。併任者は本省13人、地方運輸局16人、運輸支局53人。併せて全国のトラックGメンを統括する「トラック荷主特別対策室」(トラックGメン室)を本省内に設置し、自動車局貨物課長の小熊弘明氏が室長を兼務した。

〝プッシュ型〟で前広に情報収集を実施

トラックGメンの設置により国交省の情報収集は増強され、荷主対策では執行力が強化される。悪質な荷主・元請に関する情報は、これまでは国交省のHPに設けた情報収集の窓口〝目安箱〟への情報提供や各地方運輸局の相談窓口に寄せられるものが中心で、いわば〝プル型〟となっていた。トラックGメンはこれにとどまらず、〝プッシュ型〟で情報収集を実施することとしている。具体的には、トラック業界団体などの協力を得ながら、全国のトラック事業者に対し書面を発送し、荷主・元請に関する〝困りごと〟について調査を定期的に実施する。加えて、トラックGメンは適正な取引が行われていない疑いのある事例などについて聞き取り調査を行う。得られた情報は必要に応じて、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省など関係省庁とも共有し、各省庁が行う荷主対策に活かされる。

荷主への「働きかけ」が地方運輸局でも可能に

荷主対策の執行力も強化された。貨物自動車運送事業法に基づく荷主対策制度では、荷主・元請に対して改善に向けた「働きかけ」や是正の「要請」などを行うのは、国交省本省に限られていた。トラックGメン創設により、今後は「働きかけ」については各地方運輸局のトラックGメンも行うことができる。地方の実情について詳しい情報を得やすい各運輸局レベルで荷主や元請に対して改善の「働きかけ」を実施することで、実効性が一層高まることが期待される。

辞令交付式では鶴田自動車局長が訓示

21日の辞令交付式には鶴田浩久自動車局長と本省、関東運輸局、東京運輸支局から20人のトラックGメンが参加した。鶴田氏は「全国162人のトラックGメンに斎藤国交大臣から辞令が発令された。事業者から収集した情報に基づき、荷主・元請事業者に対する是正措置に取り組んでいただきたい」と訓示を述べ、「ドライバーの労働条件改善や取引環境の適正化、持続可能な物流の実現に向け、奮闘を期待する」と激励した。

訓示を受けて小熊室長は「事業者に寄り添い、その声を丁寧に聞き取るとともに、適正な取引を阻害する疑いのある荷主や元請事業者には法令に基づく『働きかけ』『要請』を集中的に行い、最終的には『勧告・公表』まで行うことで理解と協力を求めていく」と決意を表明した。

オブザーバーとして全日本トラック協会から坂本克己会長ら幹部が出席。坂本会長は「業界にとっては歴史的な日だ。トラックGメンの活躍により適正取引が実現し、労働環境が改善されれば運送業界が強くなる。地域経済や国民生活の発展にもつながる」と語った。
(2023年7月25日号)


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