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〝物流革新〟へ3省合同会議発足=国交省/経産省/農水省

2024.07.04

国土交通省、経済産業省、農林水産省の3省は6月28日、5月15日に公布された改正物流効率化法の荷主・物流事業者に対する規制的措置の施行に向けた検討を行うため、合同会議を初開催した。すべての荷主・物流事業者に課す努力義務の基本方針や国の判断基準を定めるとともに、大手荷主・大手物流事業者に対し、中長期計画の作成や定期報告を義務化する。8月に骨子案を示し、10~11月頃に基本方針や判断基準を定める。その後、パブリックコメントを経て来年1月にも政省令を公布し、4月以降、規制的措置を順次施行する。

物流改善はすべての荷主・事業者の努力義務に

合同会議の正式名称は「交通政策審議会交通体系分科会物流部会・産業構造審議会商務流通情報分科会流通小委員会・食料・農業・農村政策審議会食料産業部会物流小委員会合同会議」。3省の関係会議体が合同により開催するもので、根本敏則・敬愛大学特任教授が座長に就任し、厚生労働省、環境省、警察庁、総務省、財務省、国税庁、文化庁などがオブザーバーで参加した。

すべての荷主・物流事業者(トラック、倉庫・港湾運送・航空運送・鉄道)が努力義務として課せられる物流改善の内容は、昨年6月に政府が策定した「物流革新に向けた政策パッケージ」に基づき3省が公表した物流改善ガイドラインに沿ったものになる。具体的には、トラックの積載率向上やドライバーの荷待ち・荷役時間の短縮。着実に実行するため、社内で実施体制を整備し、効果を把握しながら、関係する物流事業者と連携・協力することを求める。罰則はないものの、国交省のトラックGメンをはじめ、厚労省、中小企業庁、公正取引委員会などの関係部署が取り組み状況に基づき働きかけなどを行い、改善を促す。

大手荷主・大手物流事業者を「規制対象」に指定

改正法は、一定規模以上の大手荷主と大手物流事業者を規制的措置の対象とし、物流改善の「中長期計画」の作成や定期報告を義務付けた。対象企業の指定基準は政令で定め、実施が不十分な場合、国が勧告・命令を実施する。指定基準は、全体への改善効果が高いと認められる大手企業から順に、国内貨物量の半分程度をカバーできる水準を想定している。

荷主・フランチャイズチェーン本部については、製品や原料・素材などの取り扱う貨物重量の多い順とし、国内全体のトラックが運送する貨物重量の半分程度になる企業を指定する。倉庫業者は貨物取扱量が多い順、トラック運送業者は保有車両台数が多い順に指定する。トラック保有台数は省エネ法が規定する特定輸送事業者と同様、200台以上とする腹案があるが、合同会議の委員には異論もあることから、8月に開催する次回会議までに検討する。

中長期計画は、毎年度提出することを原則とするが、計画に変更がない場合は5年に1度提出するかたちとする考え。一方、定期報告は年1回以上の頻度で行い、荷待ち時間の改善状況を必須事項とする。なお、荷待ち・荷役作業時間の算定方法も合同会議で検討する。
また、荷主・物流事業者の企業努力を評価する仕組みを創設する。取り組みの実施状況について、優良事業者や努力が期待される事業者、停滞している事業者、注意を要する事業者などランク評価を行い、消費者や市場からの評価につなげる。

CLOは役員レベルのミッションを担う

改正法により、大手荷主・フランチャイズチェーン本部には、物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられた。CLOは中長期計画を作成するとともに、ドライバーへの負担軽減につながる事業運営方針の作成と管理体制の整備を行い、トラック運送と荷役の効率化を推進することをミッションとする。そのため、CLOは「事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者であり、改正法に基づく義務に対し、全社的な責任を持って対応すべき」とした。

そのほかCLOは、定期報告の作成や、物流・調達・販売など社内の関係部門間の連携体制の構築、物流改善のための設備投資計画やデジタル化・標準化の推進を担う。また、商慣行の見直しや業界全体の物流標準化に向け、物流効率化のための関係事業者との調整を図ることを求める。荷主所管官庁は25年1月にもCLOの要件を定め、一定の周知期間を置いたうえで26年4月にCLO選任を要請する。
(2024年7月4日号)


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