サントリーHD/若松梱包運輸倉庫、北陸で新配送センター
サントリーホールディングス(本社・大阪市北区、新浪剛史社長)は、北陸エリアにおける物流効率化を目的とし、サントリーグループの新たな配送拠点「石川金沢配送センター」(石川県白山市)を23日から本格稼働させる。大和ハウスグループの若松梱包運輸倉庫(本社・石川県金沢市、江田修一社長)が、「美川第2共配センター」敷地内に増設した自動倉庫(写真)を活用し、北陸エリアで分散していた9ヵ所の倉庫を集約。倉庫間の横持ち輸送をなくし、トラックドライバーの労働時間短縮に寄与するとともに、CO2を約30%削減する。今回、2社は連携して輸配送網の再構築や施設設計を行い、国土交通省から物流総合効率化法(物効法)の認定を受けた。
ドライバーの時短効果は年間約4400時間
サントリーHDでは北陸エリアの物量増加に対応し、これまで若松梱包運輸倉庫の「美川第1共配センター」「美川第2共配センター」をはじめ外部倉庫も含め9ヵ所に倉庫を配置しており、拠点間の横持ち輸送が発生していた。保管需要に対応するため、若松梱包運輸倉庫では、「美川第2共配センター」の平屋の倉庫2棟のうち1棟を取り壊し、自動倉庫を新設。サントリーHDの北陸エリアの飲料、酒類の物流拠点を同所に統合することとした。既存の平屋の倉庫1棟は引き続き飲料の拠点として使用する。
新倉庫は、保管能力増強と業務効率化を図るため、自動倉庫を採用。庫内作業に必要な人員数が大幅に減少する分、荷受け対応に人員をシフトし、荷受け可能時間が拡大することから、ドライバーの待機時間短縮にもつながる。サントリーHDでは、輸配送網や倉庫の運用効率化により、ドライバーの労働時間を年間で約4400時間、輸送距離を延べ約16万5000㎞、CO2排出量を約150t削減できると見込む。また、トラック受付予約システムの導入などによりドライバーの手待ち時間を約60%削減する。
4日の竣工式でサントリーHDサプライチェーン本部の熊谷陽一郎物流部長は、北陸エリアでの物流拠点集約の背景について、「販売量の増加に対応して倉庫を増やしてきた結果、拠点間の横持ちの無駄が発生し、CO2排出量の削減も課題となっていた」と説明。トラックドライバーに時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」にも言及し、「ドライバーの労働時間、運ぶ距離が制限され、遠方への物の移動を減らしていくことを考えなければ、物流が停滞してしまう」と物流課題への解決に意欲を見せた。
収容能力は8640パレット、BCP対策も
新倉庫の出荷対象エリアは北陸3県(石川県、富山県、福井県)で、1日あたり入庫が約60台(大型車、トレーラ)、出庫は約80~100台を想定。北陸自動車道美川ICまで0・7㎞と関西・中部エリアからのアクセスに優れ、集約メリットを発揮できる拠点となる。若松梱包運輸倉庫の江田社長は、自動倉庫の採用について、「限られた敷地で保管効率を高めることができる。『美川第1共配センター』『美川第2共配センター』を合わせた保管効率は従来の2倍となり、業務の負荷軽減にもつながる」と説明した。
新倉庫の延床面積は約1万6000㎡で、飲料、酒類製品を保管。基本的にはサントリーHDの専用施設との位置づけで、一部他社飲料・酒類メーカーの在庫および共配拠点となる。自動倉庫は村田機械製で、収容能力は8640パレット(ビールパレット換算)。30m級スタッカークレーン6台、周回式有軌道搬送台車9台、パレットコンベア(ピッキングステーション4台)で構成される。処理能力は、入庫/出庫それぞれの作業で1時間あたり252パレット、入出庫同時の作業で318パレット。
自動倉庫のBCP対策では、建物を耐震構造とし、ラック構造の揺れを抑え、高層での荷崩れを抑制する制振ダンパーと、荷物の挙動を制御し、荷崩れを抑制する制振ストッパーを組み合わせることで、地震が起きた際にも荷物の落下を防ぐ。停電時に自動倉庫の持つデータを守るためのUPS(無停電電源装置)も備えている。有事の際に、優先的な出荷が想定される飲料水などは自動倉庫の下方に格納し、万が一、自動倉庫が停止した場合にも人手で出荷が可能となっている。
(2023年8月10日号)