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サントリーHD、「スマートロジスティクス」で全体最適を追求

2023.10.26

「スマートロジスティクス」を掲げ、全社を挙げて物流課題の解決に注力するサントリーホールディングス(本社・大阪市北区、新浪剛史社長)。様々なスキームで業種を超えた荷主との共同輸送を推進し、モーダルシフトを拡充。6月には業務効率化に向けて物流管理システムを刷新し、物流拠点の省力化に向けた自動化機器の導入も加速している。間近に迫る「2024年問題」を乗り切るため、協力会社との連携をさらに強化し、サプライチェーン全体の最適化を前進させていく。

「計画性」に加え「全体最適」を重視

サントリーの商材である飲料は、夏場には出荷量が増えるなど気温や季節による物量波動の変化が大きく、さらにはSKUも多い。輸送を安定化するためにサプライチェーン全体の調整が欠かせない。とくに出荷量が多い時期には輸送用トラックの確保が難しくなることもあり、加えて、来年にはトラックドライバーの時間外労働の規制強化に伴う「2024年問題」も控えていることから、輸送力確保に向けた物流の最適化は急務となっている。

同社は持続可能な物流構築の方針として、自動化・省力化による業務効率化や労働負荷軽減、環境負荷低減などを目指す「スマートロジスティクス」を掲げている。その要となる考え方について、サプライチェーン本部物流部部長兼戦略部部長の大泉雪子氏は「『計画性』に加えて、部分最適ではなく、全体を俯瞰した『全体最適』を重視している」と説明する。社内ではサプライチェーン本部が原料の調達・生産から配送に至るまでサプライチェーン全体を統括しており、その中で物流部は個々の物流の最適化を担う位置づけにある。

実物流の業務に関しては、大手も含む多くの物流事業者に委託しているほか、一部業務はグループ会社であるサントリーロジスティクスが担当している。物流改善にあたっては協力会社へのヒアリングを積極的に行い、物流現場の意見を汲み取ることにより、サプライチェーンの末端まで最適化された物流の構築を進めている。

異業種荷主と荷物混載、鉄道コンテナの共用も

今後さらなる不足が見込まれる輸送力を補うため、サントリーでは他荷主との共同輸送を積極的に推進。同業種はもとより、異業種との連携も強化している。2022年8月からは、異業種である大王グループと、関東~関西間の長距離輸送において、荷物混載による共同輸送を開始した。

サントリーが取り扱う飲料などの重量物はトラックの荷室へ重量いっぱいに載せてもスペースに空きが生じてしまう。一方、家庭紙をはじめ、紙製品など軽量で、かさ高貨物が多い大王製紙の場合、荷室を満載にしても積載重量に余裕がある。

両社は、荷室の下部にサントリーの飲料を積載し、上部に大王製紙の紙製品を混載することで積載率の向上を実現。また、大王グループの拠点を中継地としたトレーラのスイッチ輸送も並行して行うことで、ドライバーの運転時間削減と労働負荷低減を実現した。共同輸送は毎週定期的に行われており、多いときには週に6回程度実施されている。

また、大王グループとは東京~大阪間の長距離輸送における鉄道輸送でも連携。サントリーは関東から関西向けの荷物が多く、一方、大王グループは関西から関東向けの荷物が多かった。そこで両社は31ftコンテナを共同利用し、それぞれ片道ずつ貨物を積載することで往復での輸送を実現。大泉氏は「他荷主と連携し、それぞれの需要に合致した取り組みを通じてアセットを有効活用することで、サントリーのみに留まらない物流の『全体最適』につながっている」と語る。現在は四国エリアでも、大王グループとの共同輸送を開始している。

また、同社はかねてよりモーダルシフトにも積極的に取り組んでいる。22年時点で、中長距離輸送におけるモーダルシフト率は65・2%、そのうち海上輸送が59・4%、鉄道輸送が5・8%となっている。ドライバー不足への対応だけでなく、災害時には水を中心とした飲料は需要が大きく増加するため、BCP対策の点でも輸送の複線化は極めて重要となる。新たなルートの開拓のみならず既存ルートのさらなる活用も含め、モーダルシフトは今後も拡充していく方針。

動態管理や自動化設備で労働負荷を軽減

さらなる物流業務の効率化や現場の労働負荷軽減にあたって、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みも加速。6月には配送状況管理システムを刷新し、そのベースとなるシステムとして、動態管理プラットフォーム「traevo(トラエボ)」を導入した。同PFは、デジタルタコグラフやGPS機器などの車載機器と連携することで、荷主や物流事業者が車両の位置・動態をリアルタイムで共有できるため、電話連絡などによる確認作業が不要となる。また、今後は位置・動態情報の把握によって車両の到着時刻を予測し、荷受け側が事前準備を進めやすくなり、さらなる業務効率化につなげていく。

PFの導入にあたっては、協力会社から理解を得る必要があったが、「導入ハードルがそれほど高くなく、車両の位置把握などの課題の認識が共通していたこともあり、ほとんどの会社が協力してくれている」(大泉氏)という。サントリーはまず、首都圏を対象にPFの運用を開始し、順次全国に展開していく予定だ。同社製品の輸送では、繁忙期に1日6000台の車両が稼働しているが、首都圏の車両はその約4割を占める。PF導入により、協力会社による対応時間の削減は全国で年間約6万時間、サントリーの問い合わせ対応時間としても年間9000時間を見込んでいる。

今後、作業員不足が見込まれている物流拠点においても、自動化・省力化の取り組みを進める。21年11月に開設した「浦和美園配送センター」(さいたま市緑区)では、天然水を取り扱うエリアで4台の自動運転フォークリフト(AGF)を運用。倉庫管理システム(統合WMS)およびコンベアと連動させることで、入出庫における省力化を徹底している。

今年8月に開設した「石川金沢配送センター」(石川県白山市)では、北陸エリアに分散していた9ヵ所の倉庫を集約し、トラックの移動・待機の大幅削減を実現。大きな特徴として村田機械製の大型自動倉庫を備えており、荷物の庫内移動を自動化することで、空いた人員・時間で荷受け作業に対応する。これらの施策により、年間で、ドライバーの労働時間は約4400時間、輸送距離は約16万5000㎞、CO2排出量は約150tの削減を見込む。

出荷情報の早期確定・共有も現場の負荷を解消

リードタイム延長など一部の取り組みにおいては、物流のみならず商流の面でも調整が必要となるが、大泉氏は「物流部門の要望を営業部門や生産部門に伝えやすく、情報の連携・共有が早いなど、他部署との距離が近いことが当社の強みとなっている」と語る。

今後の課題のひとつが生産段階からの最適化だ。消費地までの輸送距離を短縮する生産体制を整えたうえで、エリアごとの生産量調整や輸送ルート設計といった緻密な計算を行うことなどを挙げる。大泉氏は「ドライバーの負荷を軽減することは、サステナブルな物流を構築するうえで不可欠。たとえば、物量が少ない時期には出荷をしない『休配日』を設けたり、出荷情報を早急に確定して共有するなど、現場の負荷につながることをひとつひとつ解消していくことが、荷主である私たちに求められている」と強調する。
(2023年10月26日号)


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