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日清食品/JA全農、「物流」と「調達・供給」で包括連携

2023.11.07

日清食品(本社・東京都新宿区、安藤徳隆社長)と全国農業協同組合連合会(JA全農、野口栄理事長)は10月31日、製品の効率的な輸送と原料米の安定した調達・供給を目的として、包括的な連携を開始したと発表した。岩手~茨城間と福岡~山口間の2区間でトラックのラウンド輸送を運用して輸送を効率化し、「2024年問題」への対応を図る。併せて、コメをはじめ国産農畜産物の中長期的な安定供給に関する仕組みづくりも進める。将来的には鉄道コンテナでのラウンド輸送や海上輸送、トレーラの混載輸送でも連携を検討していく。

岩手~茨城・福岡~山口の輸送でトラックを共用

今回の連携では、岩手~茨城間と福岡~山口間の輸送において、JA全農のコメを運んだトラックに日清の製品を帰り荷として積載することで、往復での積載効率の向上を図る。岩手~茨城間のラウンド輸送では、岩手にあるJAおよびJA全農の保管倉庫から関東にある精米工場へコメをトラックで輸送した後、帰り便で茨城にある日清の生産工場から岩手にある同社の製品倉庫までインスタントラーメンを輸送する。このラウンド輸送により、トラック1台あたりの実車率は約12%の向上を見込んでいる。

一方、福岡~山口間のラウンド輸送では、福岡にあるJA全農の精米工場から山口にある日清の生産工場へ、カップライスの原料米をトラックで輸送した後、帰り便に同工場で製造されたインスタントラーメンやカップライス製品を積み、福岡にある日清の製品倉庫へ輸送する。荷降ろしと積み込みを同拠点で行うことで、横持ちにかかる時間をゼロにできるため、ドライバーの労働時間を従来比で約7%削減できる。また、従来の輸送では、空きパレットやフレコンバッグなどの物流資材を日清の生産工場からJA全農の精米工場へ返却するために別のトラックでの輸送が必要だったが、今回の取り組みでは一部区間で物流資材と日清の製品を混載することで返却を効率化する。これらの取り組みにより、トラックの積載率が9%向上するほか、CO2排出量も約17%削減できると見込む。

両区間とも試験輸送を終え、岩手~茨城間のラウンド輸送は10月から週2回の運用を開始。福岡~山口間は、11月から月4~5回での運用を予定している。

鉄道・海上モーダルシフトでの連携も視野に

同日、都内のJAビルで行われた調印式に出席した日清食品の深井雅裕取締役(写真右)は「輸送力不足による物流クライシスの解消は当社にとっても喫緊の課題。輸送の効率化ではこれまで、飲料メーカーとの共同配送といった〝水平連携〟を進めてきたが、今回の取り組みは生産物流と組み合わせた〝垂直連携〟となる」と強調。「当社は現在、カップライス商品がヒットしており、今後もさらなる成長を見込んでいる。原材料の安定した確保は急務であり、今回の取り組みを通じて原材料の安定調達を確立するとともに、物流課題の解決にもつなげていく」と意欲を示した。

また、JA全農の高尾雅之常務理事(写真左)は「JA全農が出荷するコメの一日の輸送量は5000t程度で、重量物であることから手荷役が重労働になっており、物流業界から敬遠されている」と説明。「改善にあたって日清食品と話し合いを進め、今回の連携強化を決めた。生産者や農協にとって安定的な供給先を確保することで、コメの消費拡大や国産農畜産物の取り扱い拡大を進めていきたい」と述べた。

両社は今後、さらなる物流改善に向けて、トラック輸送だけでなく鉄道コンテナでのラウンド輸送や海上輸送など「モーダルシフト」での連携や、トレーラへの混載輸送も視野に入れている。
(2023年11月7日号)


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