【ズームアップ】物流不動産がデータセンター事業に参入
物流不動産デベロッパーによる「データセンター」開発がいよいよ本格化してきた。グッドマン、大和ハウス工業、ESRに続き、最大手の日本GLPもこのほどデータセンター開発事業への参入を表明。政府は今後のデジタル需要・データ通信量の急増に対応するため、高性能・低消費電力のデータセンターの「国内分散立地」を推し進めており、国内外物流不動産デベロッパーは土地の調達力と物流施設開発のノウハウを活かし、「デジタル社会」のインフラ整備でも存在感を増しつつある。
地方分散化や省エネ、再エネ化のニーズ
国内データ通信量は2021年までの2年間で倍増し、今後、クラウドサービスの利用拡大などによりデータセンター需要が一層高まるとみられている。政府はデジタル社会基盤整備の方針のもと、大都市に集中しているデータセンターの地方分散化を促進。「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、30年までに全ての新設データセンターを30%省エネ化、データセンター使用電力の一部再エネ化義務づけを検討する。
他の物流不動産デベロッパーに先駆けて、早くからデータセンターに着目したのが、グッドマン。千葉県印西市のグッドマンビジネスパークに19年にGoogleのデータセンターを誘致。昨年秋には、シンガポールのデータセンター運営大手、STテレメディア・グローバル・データセンターズ向けに新たなデータセンター2棟を開発することを発表した。2棟は合計6万㎡、IT電力は計60メガワットとなる計画だ。
大和ハウス工業も千葉県印西市の千葉ニュータウンで総敷地面積23万5000㎡、総延床面積33万㎡となる日本最大のデータセンター団地「千葉ニュータウンデータセンターパークプロジェクト(仮称)」に着手。データセンター開発を物流施設開発の次の柱と位置づけ、同社が手掛ける工業団地内にデータセンターを最大で15棟開発。最大電気容量600メガワットを誇るプロジェクトとなる。
ESRも昨年、大阪市でデータセンター開発の要となる不動産を取得。1棟目は23年の竣工を目指す。日本GLPもこのほど、データセンター事業に本格参入することを決定。首都圏および近畿圏で合計約600メガワットの供給電力を確保した複数の適地を取得しており、24年から順次竣工する計画。三井不動産もデータセンターなどのBTS事業を強化する方針で、三菱地所は東京センチュリーと米国でのデータセンター事業参入を公表している。
「札幌市」「福岡市」は次の有力な候補地に
CBREによると、データセンターに求められる立地条件は、①大量の電力が確保できる②高品質な通信環境が構築できる③自然災害リスクが低い――の3点に集約される。しかし、既存のデータセンターは都心に集中し、データセンターの大規模化に伴い、都心部郊外または地方都市のウエイトが高まりつつある。中でも「札幌市」と「福岡市」はデータセンターに適した立地条件を備えており、有力な候補地となるとしている。
(2022年3月3日号)