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日新/23年3月期 化学品・危険品事業拡大へ、熊本進出も

2023.06.01

日新(本社・横浜市中区、筒井雅洋社長)は、現行の中期経営計画で化学品・危険品物流事業を強化していく。今秋、横浜市神奈川区で大型拠点「神奈川埠頭危険物倉庫(仮称、完成イメージ)」を竣工するほか、半導体大手の台湾TSMCが進出する熊本でも倉庫用地を確保し、現地に進出するベンダー向けに輸入倉庫サービスを提供していく。

同社は2022~26年度の5ヵ年を期間とする中計「Nissin Next 7th(NN7)」で、自動車、化学品・危険品、食品の3分野をコア事業に位置づけ、その深耕を図っていく。このうち化学品・危険品では、2023年3月期に280億円だった同事業の売上高を、27年3月期に400億円まで引き上げる計画。

具体的には、総額50億円を投じて「神奈川埠頭危険物倉庫」を今秋に竣工予定。敷地面積約2万1400㎡、総保管面積8570㎡。5月26日にオンラインで開催された決算説明会で、筒井社長は「既存施設と合わせ、京浜地区における危険物倉庫の供給面積で業界ナンバーワンになる」と述べた。新倉庫では、半導体の製造過程で使用される高圧ガスの保管にも対応するほか、EV向けリチウムイオン電池のニーズも視野に入れている。「(事前の引合いなどは)極めて順調。現在、危険物を取り扱う当社の鶴見倉庫で人員の訓練を行っており、慎重を期しながら満床にもっていく」(渡邊淳一郎専務)という。

また、TSMCの新工場建設が進む熊本では、倉庫用地の取得・建設が最終段階を迎えていることを明らかにした。当初はベンダー向けの輸入倉庫とし、ミルクランや高圧ガスの取り扱いも進める。半導体完成品の国内配送についても「国内配送に強い会社と提携して一貫輸送を視野に入れていきたい」(渡邊氏)と述べた。

さらに、国産半導体・ラピダスが進出する北海道でも、グループの北海道日新が苫小牧に保有する土地を活用して、一般品や危険物の倉庫を建設する計画を進めている。

デジタルFW事業も順調にサービス拡充

中計の重要施策のひとつである「DX推進による新サービスの開発」では、デジタルフォワーディングサービス「Forward ONE」の提供を開始している。当初は需要動向を探るためにシンプルな機能だけで構成されていたが、今年4月からは同社の基幹システムと連携したフェーズ2のサービスを開始しており、「アカウントが順調に増えている」(渡邊氏)という。年内には顧客ごとに違ったタリフが適用できるほか、トレーサビリティ機能が強化されたフェーズ3のサービスも開始する予定となっている。

24年3月期は減収減益も「実力値は着実に向上」

23年3月期の連結業績は、売上高1941億6500万円(前期比0・8%増)、営業利益126億4300万円(39・0%増)、経常利益136億3400万円(38・3%増)、当期純利益105億2800万円(65・4%増)の増収増益。物流事業が概ね好調だったほか、コロナ禍で赤字が続いていた旅行事業が大幅に改善した。円安の影響は営業利益ベースで4億円の押し上げ効果があった。

24年3月期の連結業績は、売上高1900億円(前期比2・1%減)、営業利益85億円(32・8%減)、経常利益90億円(34・0%減)、当期純利益65億円(38・3%減)の減収減益を見込む。前期後半からの荷動き低迷や海上・航空運賃の下落などにより、物流事業が減収減益となる一方、旅行事業は4期ぶりの黒字化を計画している。筒井氏は「国際物流の正常化などで減収減益となるものの、コロナ前の19年3月期の営業利益65億円と比較して実力値は着実に向上している」とした。
(2023年6月1日号)


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