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陸海空の横断的な取り組みで課題を解決=寺田 公共交通・物流政策審議官

2021.07.27

7月1日付で国土交通省の物流部門を所管する大臣官房公共交通・物流政策審議官に就任した寺田吉道氏(写真)は16日、専門紙との記者会見を開き、就任の抱負を語るとともに、6月15日に閣議決定された「総合物流施策大綱(2021年度~25年度)」に示された施策への取り組み姿勢を表明した。新大綱で設定されたKPI(重要業績評価指標)について、「数値目標を定めることで、達成に向けた意欲を高める利点もある」と強調した。会見の要旨は次の通り。

交通・物流のフロンティア的役割果たす

公共交通・物流政策審議官部門は陸海空の輸送モードと物流分野を対象としており、省内で陸海空を専門的に所管する各局と連携し、横断的に取り組みを進めていく。公共交通と物流とを一体的にとらえ、直面する課題に対し、現代的な政策手法によって対応していくことが重要だ。交通運輸行政でのフロンティア的な役割を果たしていきたい。
我が国の物流政策を定める5ヵ年計画である「総合物流施策大綱」が6月15日に閣議決定された。物流大綱はこれまで6次まで策定・実施され、今回は第7次となる。新大綱に示された方針に基づき、着実に施策を実行していくことが我々の使命だと認識している。

政府は50年にカーボンニュートラルの実現を掲げているが、国交省など関係省庁が民間と連携しながら強力に推進していかなければならない。通り一遍の施策では進捗が困難と思われ、物流の分野などでは運送事業者や荷主、消費者など多くの関係者が一致協力し、目標に向かって取り組んでいくことが不可欠。様々な山積する課題に対し、公共交通・物流政策審議官部門が横断的かつ整合性をとりながらリーダーシップを発揮していくことが重要だ。

物流大綱のKPIを官民で共有、施策を可視化

今次の物流大綱では初めて大綱の本体に数値目標としてKPIが設定された。これは非常に意義がある。これまで施策を具体化するための「推進プログラム」が策定されたことはあった。今回は本体部分にKPIを「別表」として付けたことは施策推進への強い意気込みを示す意味もある。

個々の施策について進捗状況や達成度を検証するため荷主や物流事業者と行政とが参画するフォローアップ会議を開催し、KPIを官民で共有し、有効活用しながら評価を行うことで、施策の深度化を図る。KPIによって取り組みを見える化し、確認しながら個々の施策を推進していくことが必要だ。人間は面白いもので、数値目標があると頑張りたくなるもの。KPIは物流改善の〝バロメーター〟として機能し、達成に向けた意欲を高める利点もある。

新大綱では物流分野でのデジタルトランスフォーメーション(DX)として自動化・機械化やDXの前提となる標準化の推進が重要テーマとなっている。こうしたデジタル関連の取り組みではKPIという手法がなじみやすく技術的な面でもいいチャンスだ。新しいニーズや新しい技術が出てきていることに目配りを欠かさず、柔軟に対応しながら、物流業界と行政とが官民一体で物流課題の解決に向けて邁進していく。

「地域の足」の確保が重要、貨客混載への支援も

公共交通分野で最も切実な課題は地域交通の維持だ。私も前職の鉄道局ではローカル線の維持をはじめとして諸課題に取り組んでいたが、地方では都市部とは全く異なり、交通を維持するという深刻な課題がある。自治体の首長からは「最重要なのは地域の足の確保」という話が最初に出てくる。国交省としてもしっかりと受け止め支援を図っていかなければならない。

各地で旅客と貨物の事業者が連携して「貨客混載」の取り組みが進んでいるが、地域交通の維持のためのひとつのやり方として評価できる。国交省でも地域公共交通活性化・再生法に基づき、旅客事業者が貨物運送を行いやすいよう手続きのワンストップ化を実施している。ただ、事業自体は確固たるビジネスモデルとして成立するためのトライアルの状態にあるのではないか。地域交通維持への寄与にとどまらず、新幹線や地域の鉄道を利用した貨物輸送も行われている。貨客混載はトラックドライバー不足への対応としても一定の意義があると考えており、支援していきたい。

また、人流と物流のどちらにも関連するものとして自動運転技術の進展があるが、大いに期待できる。過疎地域での自動運転車両を活用した人流・物流の取り組みが進んでいるが、社会実装が進み、普及すれば、人とモノの移動に関する多くの課題が解決するのではないか。その後押しをするために技術のハード面での支援とともに法制度などソフト面での整備に注力していく。

寺田吉道(てらだ・よしみち)1965年生まれ、岐阜県出身、55歳。89年東京大学法学部卒。同年運輸省入省。航空局管制保安部保安企画課長、大臣官房広報課長、自動車局旅客課長、新潟県副知事、大臣官房審議官(総合政策局、鉄道局、観光庁担当)、鉄道局次長などを経て7月1日付で大臣官房公共交通・物流政策審議官に就任。趣味は映画・ドラマ鑑賞。好きな映画のひとつにビリー・ワイルダー監督の「アパートの鍵貸します」を挙げる。
(2021年7月27日号)


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