次期物流大綱で省力化・自動化を推進=久保田公共交通・物流政策審議官
7月21日付で国土交通省の物流部門を所管する公共交通・物流政策審議官に就任した久保田雅晴氏は4日、専門紙との記者会見を開き、今年度を最終年度とする「総合物流施策大綱(2017~20年度)」に続く次期物流大綱について「新型コロナウイルス感染症拡大に対応した新たな物流の課題を位置付け、対策の指針を盛り込んでいく」と表明。具体的には「省力化・自動化を推進する方針だ」と方向性を示した。会見の要旨は次の通り。
感染症対策で「非接触化」がキーワードに
このたび公共交通部門と物流部門を総合的に担当する公共交通・物流政策審議官に就任した。公共交通は国民生活の足を確保する不可欠ものであり、物流は人々の生活と経済発展を支える社会インフラとして非常に重要だ。どちらも相携えて発展すべきものであり、行政として全力で支援に取り組んでいく。直近では九州を中心とした「7月豪雨」においても公共交通と物流の事業者は交通網の維持や緊急支援物資の輸送など様々なかたちで貢献していただいている。とくに物流事業者は、新型コロナウイルス感染拡大の状況下においても感染リスクのある中で安定的な輸送を維持し、加えて豪雨に見舞われた地域での物資輸送に尽力していることに対し、大変感謝している。
現在の物流には人手不足への対応や生産性向上など積年の課題がある。解決に向け、AI、IoTなど最新技術を用いたデジタル化を推進し、省力化や自動化を強力に推進することが必要だ。とくにコロナ禍における物流を考えると、宅配需要などBtoC分野の急激な伸長によりドライバー不足が改めて注目され、省力化がより一層重要となる。
加えて、感染予防の観点からも物流において「非接触化」がキーワードとなり、その実現が急務となる。省力化や非接触化はデジタル技術によって具体化できるが、前提となるのはサプライチェーンの標準化だ。貨物や輸配送などあらゆる分野で標準化を推進し、その基盤の上に省力化・自動化が実現すると考えている。
キーコンセプトは「省力化・自動化」
今年度は、今次「総合物流施策大綱(2017~20年度)の最終年度となる。次年度の新・大綱の策定に向け、荷主業界・物流業界とともに協議を開始したところだ。次期物流大綱では省力化・自動化の推進がキーコンセプトとなる。積年の課題解決と、今般のしかかったコロナ禍に対応した新たな物流課題をきちんと位置付け、解決への指針を盛り込む。内閣府が推進する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)における「スマート物流」の取り組みは、この意図に基づくものであり、しっかりと成果を出していきたい。
6月3日に改正地域公共交通活性化再生法が成立した。現在、11~12月に同法を施行するために準備を進めている。改正法の趣旨では自治体が人流と物流を踏まえたマスタープランを策定することが重要となるが、国交省も改正法に魂を入れるべくしっかりと趣旨説明を行うなど支援に取り組んでいく。
久保田雅晴(くぼた・まさはる)1964年8月8日生まれ、56歳。奈良県出身。88年東京大学工学部卒。同年運輸省入省。近畿運輸局自動車交通部長、観光庁国際観光政策課長、航空局航空ネットワーク部長、大臣官房総括審議官などを経て7月21日付で公共交通・物流政策審議官に就任。仕事のモットーは「現場の声をしっかり聞くこと」。趣味は健康維持を兼ねての街歩き。
(2020年8月11日号)