「24年問題」対応、物流改革は“総力戦”に
2024年4月にトラックドライバーに時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」が半年後に迫る中、物流停滞リスクを回避するため、企業の枠を超えた“総力戦”の物流改革が加速している。ドライバーに「選ばれる企業」から「選ばれる業界」になるため、物流の負荷軽減につながる各種商慣習の見直しが進む。「2024年問題」を見据え、19年4月にスタートした「ホワイト物流」推進運動は、企業単独の取り組みから業界、サプライチェーンの各層が連携した取り組みに進化しつつある。
物流改善、個社の効率化から全体最適へ
働き方改革法により、24年4月からトラックドライバーに年960時間の時間外労働上限規制が適用され、運行のルールを現行よりも厳しくした改正改善基準告示が実施される。ドライバーの運行できる時間が短縮されるため、NX総合研究所では「2024年問題」の影響で輸送力の1割強が目減りすると試算する。
政府は、「2024年問題」に適切に対応するため、6月2日に「物流革新に向けた政策パッケージ」を公表。同日、関係省庁は「政策パッケージ」に基づきガイドラインを策定し、荷主・事業者に対し速やかに物流改善に取り組むことを要請した。来年度には荷主・元請け事業者を法的に規制し、物流の効率化計画策定を義務付ける新制度を創設することも決めた。
「ガイドライン」では、これまで物流改善が十分に進展していなかった要因として、企業が個社の効率化・合理化に専心し、物流全体・サプライチェーン全体の視点からの取り組みが不足していたことを指摘。発荷主、着荷主、物流事業者の3者が連携・協力し、全体最適の観点から改善を図るよう方策を示した。
水平連携からサプライチェーンの垂直連携に
企業の物流改革も個社から複数企業間の水平連携、さらにはサプライチェーンの垂直連携に発展してきた。
味の素など加工食品メーカーが共同で持続可能な物流の構築に取り組む「F―LINEプロジェクト」では、メーカー出資の共同物流会社F―LINEが主導し、「ガイドライン」をメーカーの取り組みのチェックリストとして活用。課題のある納品先に対しては、リードタイムの延長や附帯作業の削減、納品時間指定の緩和などの施策を検討し、是正を協議する。
サプライチェ―ンの川下にあたる小売業も物流面での協力を強める。首都圏に店舗を展開するスーパーマーケット4社は3月に「首都圏SM物流研究会」を発足。加工食品における定番商品の発注時間の見直し、特売品・新商品における発注・納品リードタイムの確保、納品期限の緩和(2分の1ルールの採用)、流通BMSによる業務効率化に取り組む。
日用品業界では、メーカーと卸間の連携が始まった。ライオンなどメーカー12社、物流会社13社が参加する「日用品物流標準化ワーキンググループ」(流通経済研究所などが事務局)は、「事前出荷情報(ASN)の活用による納品伝票レス・検品レス運用ガイドライン」を策定。メーカーから卸へのASN配信を順次開始し、物流業務の効率化を図る。
業界団体も「2024年問題」対応を公表
業界団体が各業界の「2024年問題」への対応策を公表するケースも出てきた。日本百貨店協会は、アパレル業界と連携し、開店前納品の是正および納品リードタイムの緩和に向けた取り組みを開始すると発表。日本鉄鋼連盟は、納入条件の緩和、トラック受渡条件におけるルールの再徹底のほか、これまでの商慣習見直しに取り組むとした。
化学品業界では、経済産業省の「フィジカルインターネット実現会議」内に、4社(三菱ケミカルグループ、三井化学、東ソー、東レ)を事務局とする「化学品ワーキンググループ」を7月に設置。荷主、物流企業含めて59社(8月8日現在)が参加し、物流の商慣行の改革、標準化、DX推進に関するアクションプランの策定・ステークホルダーへの周知・実行などの施策に取り組む。
(2023年9月14日号)