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【レポート】SCイノベーション大賞2023=ユニリーバ

2023.09.28

ユニリーバ・ジャパングループのユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング(本社・東京都目黒区、ジョイ・ホー社長)は、卸からの発注時に、付随する物流サービスのレベルに応じて物流価格を変動させる取引制度「メニュープライシング」を導入した。「商品価格」と「物流サービス価格」を分離し、物流サービスの内容と価格を可視化。物流効率化につながる発注をした企業には割引などのインセンティブを付与する。一連の施策を通じ、荷物のパレット化などによる荷役作業の負荷・時間削減および積載率向上、集荷曜日固定などによる配送の効率化といった効果を上げていることが高く評価され、経済産業省の「サプライチェーンイノベーション大賞2023」を受賞した。今後は、スイッチ輸送の拡大や物流EDIを活用した卸との事前出荷データ(ASN)の連携など、物流改善に向けた施策を前進させていく。

「商品価格」と「物流サービス価格」を分離

ユニリーバでは2016年頃から、輸送用トラックを確保しにくくなり、卸への納品に苦労する場面が増えてきた。同社物流担当の宮口昌久氏は「物流事業者に対応をお任せするのではなく、荷主として根本的な物流改善に取り組んでいくことが必要となった」と振り返る。まずは企業単独でできる取り組みから着手し、一部商品の外装の段ボール箱をパレット積みしやすい形状へとリニューアル。1パレットに積める段数を増やすことで、積載率を改善するなどの施策に努めてきた。

トラックドライバーの時間外労働厳格化に伴う「2024年問題」への対応が求められる中で、21年4月には「積載率」「車両台数・往復実車率」「作業効率」「物流波動」の改善を目標に、卸・小売・物流事業者と協議し、新たな取引制度を導入。「商品価格」と「物流サービス価格」を分離した価格体系を設定し、付随する物流サービスの内容に応じて価格が変動する「メニュープライシング」を開始した。
日用品業界では、離島を除き全商品の価格を全国一律とする商習慣がある。その上で、ユニリーバでは物流サービスについて、注文数や荷姿など「基準」となる配送単位を設定した。

新取引制度では、この「基準」よりも物流効率化につながる発注をした場合、割引という形でインセンティブを付与。たとえば、荷室が満載になる発注に対しては「満車割」、ケース単位ではなくパレット単位で注文し、積載率の向上や荷役業務の負荷を軽減に寄与する発注には「パレット割」、リードタイムに余裕を持たせる、1週間以上前からの発注には「早期発注割」などの割引サービスを導入した。
一方で、「基準」に満たない発注や返品に対しては、従来通り手数料が発生する。最低配送単位に満たない発注については、発注があった時点で、着荷主に対して自動的に受注キャンセルを通知する仕組みを継続している。

パレット化促進、荷役作業を年5800時間削減

新取引制度開始にあたり、荷役業務の負荷軽減に向けて荷物のパレット化を推進。パレットへの積載率を向上させるため、1パレットずつの発注での対応を基本としつつ、発注の単位として、パレット満載に荷物を積む「パレット発注」、1パレットには満たないものの一定の段数に荷姿を整える「面発注」、バラ積みの「バラ発注」の3つを設けた。

できるだけ多くの荷物をパレットにまとめるため、月曜日と金曜日の週2回の発注において、計1・5面の発注となる場合は、追加で0・5面分を発注してもらい、注文を1回にまとめて2面での発注に切り替えてもらうことで割引を適用する――といった提案も行う。こうして卸に対しパレット発注や面発注への移行を促したことで、約80万ケースがパレット発注へ、約10万ケースが面発注へと移行。バラ発注の数量自体も約43%削減し、バラ発注率は従来の21%から15%に減少した。荷役作業の負荷も軽減され、年間で約5800時間相当の作業時間削減を実現した。

また、卸に対し納品の曜日を固定してもらうことで、輸送の頻度を抑制。例えば、着荷主の協力のもと、発注・納品のサイクルを週2~3回から週1~2回に変更するなどの改善を進めている。

着荷主と連携し、物流波動の調整のテストも実施した。新製品の発売1ヵ月前から事前発注をもらい、一定の出荷量を超える量が発注された場合は、納品日の前倒しなども活用することで波動を平準化。この波動調整の取り組みは、入出荷作業の負担の軽減にもつながったほか、新製品の出荷情報を早めに把握できることから、効率的な生産調整にも貢献した。

一連の取り組みを通じた積載率の改善・輸送回数の削減により、年間の配送台数は新制度実施1年目の時点で、全体の約10%に相当する約4000台、2年目には約15%にあたる5800台の削減につながった。さらに、CO2排出量は年間で約950tの削減を実現。早期発注の件数については、新制度開始前は1週間以上前の発注の割合は2割強程度だったが、2年目には5割以上となるなど、大幅に向上した。

リードタイム確保へ「翌々日配送」を原則に

さらに、沖縄県を除くすべての得意先の最短納品日は、受注から中1日を確保した「翌々日配送」を原則とすることを定めた。化粧品・日用品大手としては国内初の取り組みで、日用品は突発的な発注が多く、即日配送が求められる品目が多いことから、翌々日発送へとシフトするのは〝大きな決断〟だったという。リードタイムに余裕を持たせることが新取引制度における最も重要な「基盤」であるとし、宮口氏は「配送を中1日空けることで物流事業者が業務を調節する余力を生まれる。各荷主がリードタイムを『翌々日配送』でそろえることができれば、連携や協働による物流効率化をさらに前進させることができる」と強調する。

卸からは、リードタイム延長に際し、試験運用の実施や小売店への影響の確認を求められることもあった。また、メーカー~卸の「上流」の物流だけが改善できても、卸~小売店までの「下流」が改善されていなければ、小売との調整において卸に大きな負担がかかってしまう。サプライチェーン全体で迅速に足並みをそろえるためにも、まずは「上流」から改善を進めていく必要があることを説明し、理解を得ることができた。

低床トレーラ交換によるスイッチ輸送を開始

実車率の改善では、従来からユニリーバの一部配送を担っている鈴与、卸のPALTACに加え、同じ日用品メーカーであるライオンと協働。鈴与の戦略車両である低床トレーラを活用したスイッチ輸送の取り組みも22年5月から開始した。ライオンの大阪府の倉庫から荷物を積んで出発したトラックと、神奈川県からユニリーバの荷物を積んだトラックが、中間地点となる静岡県磐田市でトレーラを交換。ライオンの荷物は同社の関東倉庫へと輸送され、ユニリーバの荷物は大阪府堺市や近畿にあるPALTACのRDC(地域配送センター)へと運ばれる。

スイッチ輸送によりドライバーの拘束時間を約6時間削減し、日帰り運行を実現したほか、パレット発注なども活用し、低床トレーラには38パレットの積載を実現。実車率は98・3%、トラックの台数は従来比で約3割減となる年42台を削減し、CO2排出量も41・5t抑制した。この取り組みは昨年度の「グリーン物流パートナーシップ優良事業者表彰」で国土交通大臣賞を受賞。スイッチ輸送は現在、他の物流事業者や卸売とも連携して、北海道、名古屋などの中部圏、九州圏へと運用を拡大している。

PALTACへの納品車両をユニリーバが再利用する、ラウンド輸送も行っている。ユニリーバの倉庫で積んだ商品をPALTACのRDCで降ろした後、同じ車両に販売店向けの商品を積み、ユニリーバの倉庫に近い販売店の倉庫へ輸送。倉庫で荷降ろし後、再びユニリーバの倉庫へと積み込みに向かうことで、車両を有効活用し、空車率の削減をさらに進めている。

ASN活用で検品レス・ペーパーレスを促進

さらなる物流効率改善のために卸との出荷情報共有も強化する。プラネットと連携し、出荷情報のEDI(電子データ交換)による事前共有の取り組みを開始。共通の物流システム基盤「ロジスティクスEDI」を通じ、ASNを配信することで、納品時の検品作業の簡素化や紙伝票の電子化を進め、荷受け時間の短縮につなげる。8月に試験運用を終えており、今月から実運用をスタートした。

今後の課題のひとつとして、荷役時間の把握が急務となっている。6月に経産省、農林水産省、国土交通省が連名で発表した「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」の中では、荷主事業者に対し、荷役・荷待ち時間にかかる時間を合計2時間以内に定めるルールを設けている。このルールを遵守するため、緻密な情報共有の体制構築を進めていく。
(2023年9月28日号)


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