公取委、荷主の共同物流促進に〝お墨付き〟
「2024年問題」まで1年を切る中、〝運べなくなる危機〟を回避するため、トラックドライバーなどの物流資源の有効活用につながる「共同物流」への関心が一段と強まっている。一方で、共同物流に参画する荷主の一部からは、業界でのシェアが相当程度高くなるため、独占禁止法への抵触を懸念する声も挙がっていた。公正取引委員会は16日に開催された、国土交通省、経済産業省などが主催する「持続可能な物流検討会」の第11回会合で、共同物流に関しては多くの事例が「独禁法上問題となるものではない」と報告。公取委から〝お墨付き〟が与えられたことで、大手荷主を中心に共同物流の検討がさらに加速する可能性が出てきた。
「政策パッケージ」共同輸配送促進を明記
今月2日に政府の関係閣僚会議が策定した「物流革新に向けた政策パッケージ」では、「共同輸配送や物流事業者間の協業などを促進する」と方針を明記。政策パッケージと関連し関係省庁がまとめた物流ガイドラインにも、荷主や事業者が「共同で輸配送を実施することにより積載効率の向上に取り組む」ことが盛り込まれ、帰り荷の確保や空車回送の削減によるトラックの有効活用策が示された。
これまでも国交省は物流総合効率化法に基づき、共同物流の実施計画策定への支援などを行ってきたが、今回、「2024年問題」を見据えた「政府パッケージ」の施策に盛り込んだことで、政府全体の課題として共同物流を促進し、予算措置による補助制度の拡充が期待される。一方で、大手荷主による共同物流の検討・実施にあたっては、独占禁止法に違反する不安もハードルとされていた。
「独禁法上問題にあたらない事例」を紹介
こうした動きを背景に、公取委では、共同物流促進を〝側面支援〟するため、「持続可能な物流検討会」の場で「独禁法上問題にあたらない」具体的事例を紹介。相談制度の設置についてもあらためて周知し、「書面による事前相談制度では回答まで一定期間を要する場合があるが、事前相談制度とは別に、電話・来庁により相談を受け、迅速に口頭で回答する『一般相談』も併せて実施している」と利用を呼び掛けた。
具体的事例では、ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)に加盟する事務機器メーカー15社が2021年11月から北海道で実施した複合機の共同配送を紹介。公取委では、①各社の社内で共同配送担当者と営業担当者との間の情報遮断措置をとり、②15社間の複合機などに関する費用の共通化割合は僅少であることから、複合機などの製造販売市場での15社のシェアはほぼ100%だが独占禁止法上問題とならないとした。
また、運送会社11社が関東~関西間の幹線輸送で大型トレーラを利用して共同輸送を実施する事案では、①輸送区間における11社による輸送量に占める共同輸送の輸送量は1%未満であり②単位あたりの輸送コストに占める共同輸送区間における輸送コストの割合が5%未満と低く③11社は顧客と個別に運賃交渉を行うなど引き続き独立の競争単位として事業活動を行うことから、11社の合算市場シェアは不明ながら独禁法上問題とならないとした。
共同物流実施は2割未満、伸びしろあり
「2024年問題」を控え、共同物流は物流の停滞を回避するカギとなる。加工食品メーカーは共同出資会社F―LINEを中核とした共同物流を推進。日本出版販売とトーハンの取次2社も物流協業を進めている。化学品業界では、三菱ケミカルグループ、三井化学、東ソー、東レがこのほど、経済産業省などが主催する「フィジカルインターネット実現会議」に「化学品WG」を設置し、共同物流の本格展開に入ろうとしている。
野村総合研究所が20年に実施した荷主・事業者への調査では、同業種間の共同輸配送は19%、異業種間は14%で実施されていた。いずれも2割未満で伸びしろは大きいと言える。野村総研によると共同輸配送の進展によりトラック積載率を現状の約38%から25年に50%、30年に55%に向上させると、需給バランスは25年にマイナス6%、50年にマイナス7%程度に改善し、トラックの供給不足を緩和できると見込んでいる。
(2023年6月27日号)