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アルケアが「24年問題」に対応、共同物流を推進

2024.03.07

医療用品メーカーのアルケア(本社・東京都墨田区、伊藤克己社長)は安定的で持続可能な物流体制の構築に向け、取り組みを加速している。2022年2月に在庫型物流センター(DC)の「西日本物流センター」を大阪府豊中市に新設。既存DCの「東日本物流センター」(東京都江戸川区、写真)と合わせ、新たに2拠点による物流体制を構築。また、23年12月からは同業他社との共同配送をスタートした。今後も多様なアプローチで安定的なサプライチェーンの維持・構築を図り、最大の使命である製品の安定供給を果たすことで医療分野に貢献していく。

「東西2拠点」体制を構築、被災地支援も迅速対応

アルケアは1955年に創業。国産初の石膏ギプス包帯の開発・製造を皮切りに事業を拡大。国産初の人工肛門(ストーマ)用装具や弾性ストッキングを開発するなど、高度な技術による製品を開発・製造し、医療分野に提供してきた。現在は「整形外科領域」「看護領域」「ストーマ領域」「褥瘡・創傷領域」の4事業を中核として、医療用品・サービスを幅広く展開している。

同社はこれまで、千葉工場(千葉市花見川区)で製造した製品を「東日本物流センター」で保管し、全国に配送する物流体制だったが、11年発生の東日本大震災や16年発生の熊本地震、平成30年7月豪雨など、大型地震や激甚化する大雨・暴風など、自然災害へのBCP対策が重要課題に浮上。BCP強化を図るため物流体制を見直し、東日本と西日本に1拠点ずつ物流センターを設けることとした。適切な保管スペースや輸配送ルートを検討した結果、22年2月に日本通運の豊中ロジスティクスセンター内に「西日本物流センター」を新設した。BCPのさらなる強化に加え、同センターを活用することで、翌日配送が可能となる範囲が拡大した。

ロジスティクス部長の川口信彦氏はBCP強化の一環として「東西両センターで重要度・緊急度の高い品目を選定し、1~3ヵ月分の在庫を持つようにしている。患者様にとって絶対に欠かしてはならない種類の製品を〝BCP在庫〟とし、また、災害時の行政機関や学会などからの物資支援要請に対応するための医療関連品などを〝災害備蓄〟として多めに在庫を持っている」と説明。「平時では東日本・西日本それぞれに合わせ、東西のセンターがカバーしているが、有事の際は販売店や医療機関向けに必要な製品をどちらのセンターからも供給できる」体制とした。加えて2拠点体制で保管スペースが拡大したことから「大規模災害を受け、万が一、工場機能が一時的にストップしたとしても、一定期間の需要に対応できるだけの在庫を持てるようになった」こともメリットだとした。

なお、元日に発生した能登半島地震を受け、アルケアは行政機関・学会・業界団体などの要請に基づき、石川県・富山県の被災地に向け、足の静脈に血が留まることを予防し、血液の流れを促進「弾性ストッキング」や、入浴時にストーマ装具を目立たせず水濡れを防ぐ「入浴用シール」、傷口部分の安静を保つ「創傷用シリコーンゲルドレッシング」などを無償提供した。さらに、ストーマ装具、弾性ストッキング、皮膚保湿・清浄クリームなどを災害時支援用として在庫を確保しており、東西の物流センターから迅速に配送できる体制を整えている。

「24年問題」対策、納品頻度の見直しも視野に

アルケアは共同物流にも積極的に取り組んでいる。昨年12月から整形外科領域など一部の事業で競合関係にある日本シグマックス(本社・東京都新宿区、鈴木洋輔社長)と連携し、東日本の一部取引先向けに共同配送を始めた。両社は共通の取引先も多いことから、輸送の共同化を検討。「2024年問題」への対応や物流コストの抑制を図るため、物流は協調可能な領域として共同配送の実施に至った。

従来は両社がそれぞれ運送会社に委託し、各取引先への配送を行っていたが、新たな共同配送スキームではSBS東芝ロジスティクス(本社・東京都新宿区、金澤寧社長)が両社の製品をまとめ、各取引先へ配送する形態に切り替えた。車両数の削減やドライバーの省力化を図るとともに、積載率向上や物流コストの抑制、環境負荷の低減などを目指していく。

川口氏は「安定的なサプライチェーンをしっかりと維持・構築するには、物流事業者任せではなく、荷主が主体的に改善に取り組むことが重要だ」と強調。共同配送については実績を積み上げた上で「取引先や対応エリアの拡大を検討していく」と今後の方向性を示した。

また、政府が昨年6月に策定した「物流革新に向けた政策パッケージ」では“商慣行の見直し”が重要項目のひとつに掲げられていることを指摘し、「ドライバーの労働環境を改善する観点から、納品先の販売店が倉庫を持ち一定の在庫保管を行える場合は、配送頻度を週5回よりも減らすことなども検討している」と述べ、「2024年問題」への対応を様々なアプローチで取り組んでいく姿勢をみせた。
(2024年3月7日号)


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