トラック法の制度改正=国交省・一見自動車局長会見
国土交通省の一見勝之自動車局長(写真)は10月31日、専門紙記者会見を開き、改正貨物自動車運送事業法(改正トラック法)に基づき今月1日から施行される事業者を対象とした制度改正について概要を説明した。一見局長は「改正トラック法の目的は、わが国の経済や国民生活を支えるトラック運送業の健全な発達を図ることだ」と述べ、「コンプライアンスを遵守しない事業者は市場から退出してもらうため『規制の適正化』や『事業者が遵守すべき事項の明確化』など制度改正を行った」と説明した。
悪天候時の運行休止、判断基準づくりへ
また、改正法では7月より荷主対策の深度化の一環として、事業者の違反につながる恐れのある荷主の行為として「悪天候にもかかわらず運行の強要をする」ことが挙げられており、荷主勧告制度の対象となることが具体的に示されている。
それに伴いトラック業界から、悪天候での運行休止の判断に関して行政が基準を定めてほしいとの要望があることを受け、一見局長は「航空輸送や海上輸送では、風速や波浪の大きさなど天候状態によって運行の可否を判断する基準を設けている。自動車においても同様の判断基準を設ける必要はあるだろう」と指摘。
こうした動きを踏まえ、自動車局貨物課は悪天候時の運行休止の判断基準策定に向けた検討を開始。業界の意見を集約するとともに他の輸送モードでの運行・運航休止判断の基準や事例を収集している。
コンプライアンス違反のトラック業者は退場を
1日から実施した制度改正について、一見局長は「法令を遵守して経営を行っている正直な事業者が〝バカを見る〟ことがあってはならない」と述べた上で「運送事業の〝一丁目一番地〟は安全の確保であり、安全を担保できず、コンプライアンスをないがしろにする事業者には速やかに退場していただきたい」と強調。国交省では昨年12月に公布された改正貨物自動車運送事業法によりコンプライアンスを遵守しない事業者を排除する目的で規制の適正化と事業者が遵守すべき事項の明確化を図っている。
今月1日に公布・施行した制度改正では新たな処分量定として、健康保険、厚生年金保険、労働者災害補償保険、雇用保険など社会保険料の未納付については車両停止処分を「10日車」とし、損害賠償の支払い能力確保義務違反では「20日車」に処することを定めた。また、必要な認可を受けずに営業所に配置するトラックを増車または減車していた場合は「10日車」の車両停止とする。
すでに8月1日に公布し、今月1日から施行した制度改正では、新規参入の許可審査を行う際、審査事項を拡充し、行政処分歴の確認期間を3ヵ月から6ヵ月に延長。事業資金計画に掛かる費用についてもより長期間を見込んで計上することを義務化した。また、各営業所に配置するトラック台数を変更する場合、改正前は事前に届出を行うだけだったが、改正により最低車両台数5台を下回る場合や増車を行う場合は認可を受ける必要がある。
荷待ち時間削減は生鮮食品、飲料・酒類なども
加工食品、紙・パルプ、建設資材分野での待機時間削減に向け、荷主、事業者、行政が参加する懇談会が課題把握と改善方策の検討を進めていることについて「いま検討中の3品目は時間短縮の優良事例を取りまとめ、公表することにより改善に資することを目指す」と説明。その他の品目についても「まだ決まってはいないものの来年度予算に基づき、生鮮食品や飲料・酒類、金属部品・金属加工品などを対象として、同様に懇談会を設置する方向で検討しているところだ」と述べた。
赤羽大臣がトラックに感謝の意
また、一見局長は、現在、国交省非常災害対策本部において台風19号による甚大被害への対策に省を挙げて取り組んでいることを説明。会議の席上、本部長を務める赤羽一嘉国交大臣がトラック事業者による支援物資輸送への協力に対して感謝の意を表したことを紹介した。
(2019年11月7日号)