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迫る「2024年問題」、荷主の改善指針を提示=経産省/農水省

2022.04.14

トラックドライバーの長時間労働規制が厳格化される2024年4月まで残り2年を切った。「2024年問題」を前にして荷主業界は安定的なサプライチェーンの維持に向け、物流改善に本腰を入れ始めた。行政もその動きに対応。経済産業省はサプライチェーン全体で効率的な物流を実現する「フィジカルインターネット」の考え方に基づく物流改善計画の策定を進める。40年までにフィジカルインターネットを実現することで持続可能なサプライチェーンの構築を目指す。一方、農林水産省も物流改善の加速を図っている。20年に食品流通合理化に向けた提言をまとめたのに続き、現在は青果物流通の効率化に着手。効率化の前提となる物流標準化のガイドラインを今月中にも策定する。「2024年問題」を目前に、行政主導による物流改善の動きが目立ってきた。

経産省はフィジカルインターネットを旗印に改善促進

経産省はフィジカルインターネット・ロードマップを3月7日に公表。その上でロードマップに基づき、業界別の物流改善計画を順次策定している。3月前半に「スーパーマーケット等(加工食品・日用雑貨メーカー、卸、小売)」と「百貨店(百貨店・アパレル)」の各業界を対象としたアクションプランを策定したのに続き、同31日には「建材・住宅設備」業界のアクションプランをまとめた。3業界以外の業界に対してもアクションプラン策定を働きかけている。

それぞれのプランは共通してメーカー・卸・小売の円滑な連携を重要課題と定めており、商慣習の見直しを図ることで輸送を担うトラックへの負担を軽減する。スーパーやコンビニのアクションプランでは、パレットなど輸送容器の標準化でドライバーの手荷役解消を推進するとともに、情報タグやQRコード、デジタル化された製品情報と出荷情報を活用し、検品レスや配車業務の効率化を実現する。

百貨店では、デジタル化による伝票と検品業務の標準化や国際標準商品コード(GTIN)を活用した製品管理による専用荷札の廃止、慣習的に行われている開店前納品の是正など納品時間・リードタイムの緩和、バース予約システムの導入などを推進し、ドライバー時短につなげる。

また、建材・住宅設備では、①商慣習の見直し②垂直連携の円滑化③共同輸配送の推進④情報基盤の構築――の4テーマを具体化するタスクフォースを業界内に設置し、改善に取り組む。そのうち、商慣習の見直しを最優先事項とし、運送業務の見える化を図り、トラック輸送の負担軽減や取引条件を改善する。具体的には今年度下半期には課題と優良事例を抽出し、23年度に附帯業務の区分や業務分担のあり方、納品時間の枠設定、発荷主先での積み込み作業など業務を見える化する運送契約ガイドラインを策定し、荷主側が主体的に改善に取り組むことを促す。

農水省は「青果物流通標準化」ガイドを策定

農水省主導による農水産品物流の改善に向けた取り組みも進んでいる。20年に策定された食品流通合理化の提言では、パレット化や輸送機材の規格統一、物流拠点の整備や集出荷場の集約、共同輸配送の推進、モーダルシフトの推進などを方針として示した。青果物についても、その方向性を踏まえた上で、物流効率化の前提となる標準化促進に向けた「青果流通物標準化検討会」を設立し、今月にもガイドラインを策定する予定。同検討会は国土交通省が主導する官民物流標準化懇談会とも連携しながら標準化を促進していく。ガイドラインでは、①パレットの循環体制の構築②場内物流の改善③コード・情報の活用による効率化④外装サイズの標準化――などを推進する。

事業者と荷主の連携強化を促進=国交省

経産省・農水省の施策と並行し、国交省の物流改善の取り組みも進捗している。厚生労働省と共同主催により15年に「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」を立ち上げた後、現在までに中央協議会と各都道府県に設置した地方協議会を基盤としながら改善に向けた実証事業を展開。その成果として20年以降はドライバーの荷待ち件数が特に多い「加工食品、飲料・酒」「建設資材」「紙・パルプ(家庭紙)」「紙・パルプ(洋紙・板紙)」の4分野について厚労省・経産省と連携の上で改善ガイドラインを順次策定。直近ではこれに加え、紙オムツや生理用品など軽量・かさ高の紙加工品(衛生用品)について手荷役からパレット荷役への転換を促進すためのアクションプランを策定するなど物流改善の対象を広げている。
(2022年4月14日号)


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