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ヤマト運輸/アルピコ交通、バス乗務員によるEC宅配が稼働

2021.04.01

ヤマト運輸(本社・東京都中央区、長尾裕社長)と、長野県を本拠に路線バスや鉄道事業を展開するアルピコ交通(本社・長野県松本市、小林史成社長)は1日から、アルピコ交通のバス乗務員がヤマト運輸のEC荷物を運ぶ取り組みを開始した。アルピコ交通が15台の軽貨物車両を用意し、ヤマトのEC配送パートナー「EAZY CREW」として長野県内3地区の宅配業務を担当する。

アルピコ交通が配送を行うのは同社の本拠である長野県松本地区(7台)と、長野地区(5台)および茅野地区(3台)。1日15稼働の365日体制でヤマトのEC荷物を購入者宅へ届ける。バス会社がEAZY CREWとしてヤマトのEC宅配を担うケースは、これまでにも北海道の十勝バスと岡山県の備前交通が今年1月より開始しているが、両社とも1~2台前後の稼働となっており、この規模の業務委託は全国でも例がない。

アルピコ交通は、新型コロナウイルス感染症の影響で高速バスをはじめとする路線バスの減便が続いており、「本業であるバス事業で回復時期の見定めが困難な中、新たな収益源を探していた」(同社)という。そうした中、同じ運輸業で業務内容の親和性も高い貨物輸送に注目。今年2月に、松本営業所と長野営業所、茅野営業所で貨物軽自動車運送事業の届出を提出し、業務受託の準備を整えた。

各営業所で路線バスの乗務員などをしていた社員が配達に当たるため、運転業務を熟知していることに加え、土地勘があり、道路事情にも詳しいことが強み。運転技能と接客技術を備えたバスドライバーが宅配を担当するため、業務品質にも期待が寄せられる。
ただ、アルピコグループとしては2009年に物流子会社の松本運送をハマキョウグループへ事業譲渡した後、貨物運送事業から離れており、今後の拡大については「まずは1年間、15台体制でEAZY CREWの仕事をした上で、外部環境の状況やヤマト運輸との調整の中で判断したい」との考えだ。

客貨混載からスタート年末には社員の出向も

ヤマト運輸とアルピコ交通では昨年11月より、長野県松本市安曇地域(奈川、上高地、乗鞍、白骨)でアルピコ交通が運行する路線バスの空きスペースに宅急便荷物を積み込んで運ぶ客貨混載をスタート。同事業の調整を進める中で両社間での人材の有効活用についても協議してきた。

12月からはアルピコ交通のバス乗務員4人と窓口社員ら3人がヤマト運輸へ出向して、宅急便の集配業務や宅急便センターの受付事務を担当。アルピコ交通は毎年11月に上高地が閉山すると同所への路線バスの運行に係る人員に余剰が生じており、逆にヤマト運輸では冬季、歳暮繁忙期や特産であるリンゴの出荷、スキー宅急便集配などで物量が増え、両社の業務波動を補う施策として取り掛かった。ドライバー出向者は最終的に7人となり、出向期間は先月末で終了したものの、続けて今回のEAZY CREWとして活躍する社員もいる。こうした取り組みも並行して継続するとしている。
(2021年4月1日号)


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