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白ナンバー有償運送、許可拡大を視野=国交省・秡川自動車局長

2020.12.03

国土交通省の秡川直也自動車局長(写真)は11月27日、専門紙記者会見を開き、自家用トラックの有償貨物運送について許可の適用時期を繁忙期以外にも広げることや、上限日数の拡大を視野に入れて検討していることを明かした。11月6日に開催された政府の規制改革推進会議第3回投資等ワーキング・グループで、自家用トラックによる有償貨物運送の繁忙期以外での許可や150日の上限規定の見直しが検討課題となったとし、「自家用トラックを使った有償貨物運送の実施を希望している荷主企業に対し、ヒアリングを行っているところだ」と述べ、「来年のしかるべき時期には一定の結論を出す方向にある」との姿勢をみせた。

「白ナンバー」は「緑」が足りないところを補うべき

規制改革推進会議第3回投資等ワーキング・グループでは、経済同友会と日本IT団体連盟が自家用トラックの有償貨物運送許可の促進を図る方向で要望を行ったが、国交省では2年前にも許可を拡大する方向で検討した経緯がある。大手ネット通販事業者の要望を受けたことを踏まえ、貨物自動車運送事業法が認める繁忙期(夏期・年末年始などで150日以内)に限った現行の期間設定を見直し、150日以内ならば夏期・年末年始以外でも許可する方向で考えをまとめた。併せて、繁忙期以外で自家用トラックを利用できる貨物は個人住宅への宅配貨物に限定し、自家用トラックのドライバーには適切な安全指導を行われていない場合は行政処分を実施するとの方向で通達を出す方針を固め、パブリックコメントを実施した。

これに対し、トラック業界からは「許可日数の拡大には反対する。自家用トラックの利用は極力限定的であるべき」とする反発が起きた。一方、ネット通販事業者からも「期間限定ではなく通年で行いたい。安全の確保に関して行政処分を含めた許可要件が厳しい」とする反対意見が出たことから、継続して意見調整を行うこととなっていた。

今回、規制改革推進会議で、自家用トラックの有償運送の許可拡大の要望があらためて持ち出されたことを受け、秡川局長は「貨物自動車運送事業法の趣旨から、白ナンバー(自家用トラック)による有償運送は緑ナンバー(営業用トラック)のサービスを補うものであるべきだ。また、輸送の安全を確保するためにも運行管理が必要不可欠だとする立場は変わらない」と強調。

一方で、慢性的なドライバー不足により安定的な輸送の確保が重要な課題となっている現状認識に立ち、繁忙期以外の適用をはじめ、150日の上限設定や、宅配への限定、安全確保策などについて「白ナンバー活用を希望する荷主企業へのヒアリングを行っている」と述べ、来年には一定の結論を出す考えを示した。

標準的な運賃、事業者への全国説明会は一巡

会見では、標準的な運賃の浸透状況に関しても言及。告示制度が発表された4月以降、全国で事業者を対象にトラック協会と共同で普及・活用セミナーを開催しているが、コロナ禍により実施スケジュールが遅れていたと説明。11月26日に大阪でのセミナーを開催し、「ようやく47都道府県の全てで実施でき、一巡したところだ」と述べ、荷主への周知に関しては「先日もJA大分への説明を実施した。今後はより一層荷主向けの説明に力を入れていく」と強調した。

また、標準的な運賃の意義について「事業者が健全な経営を行うための諸元を分析し、荷主と運賃交渉を行うための分析ツールという意味もある」と述べ、自社の経営体質や取引条件の改善に活用すべきと強調。「コロナ禍で苦しい状況にある荷主も多いことは理解できるが、標準的な運賃をお互いのテーブルに載せ、事業者と荷主が一緒になって考えてほしい」と訴えた。
(2020年12月3日号)


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