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物流生産性向上へ、1.5億円=国交省/20年度予算

2019.12.26

国土交通省の2020年度の予算がまとまった。一般会計は5兆9311億円(前年度の1・00倍)で臨時・特別の措置を含めると6兆7363億円(1・14倍)となった。また、東日本大震災復興特別会計は3662億円(0・79倍)、財政投融資は2兆4555億円(1・03倍)に決まった。

生産性と成長力の引上げの加速に向けた関連予算では、物流ネットワークの強化に4304億円(1・04倍)を充てる。大都市圏の環状道路整備やトラック輸送と空港・港湾等との輸送モード間の接続を強化する。平常時・災害時での安全で円滑な物流を実現するための道路ネットワーク構築を推進する。
物流の生産性向上や運輸業・建設業・造船業での人材確保・育成の取り組みには35億円(1・02倍)。生産性向上の分野では、トラック輸送の労働生産性向上や取引環境の適正化の推進、内航海運の活性化、企業間連携や新技術活用による効率化や国際物流のシームレス化・標準化の推進に取り組む。

トラック輸送効率化やゼロエネ倉庫を支援

公共交通・物流政策部門の予算では、豊かで暮らしやすい地域づくりを支える交通サービスの確保や、AI、IoTなど情報通信分野の技術革新を活用した次世代モビリティの実現や物流の効率化を推進。加えて、交通・物流のネットワークのより一層の充実を図る。同部門での予算207億8800万円(0・93倍)に加え、環境省と連携したエネルギー対策特別会計(エネ特)などによる予算を活用し、施策を実行する。

物流分野では5000万円を充てる。物流総合効率化法に基づく総合効率化計画やモーダルシフト事業への支援、トラック幹線輸送の効率化に向けた調査事業を行う。19年度補正予算の1億円を加えると予算額は1億5000万円となり、前年度予算の4・03倍に相当する。
また、エネ特予算の7億8200万円の内数を充て、トラック輸送の効率化や倉庫業の環境負荷低減、ドローンを活用した物流の実用化を支援する。

トラック輸送関連では、ダブル連結トラック車両の導入支援には一般的なトラック2台分との差額1/2を補助し、スワップボディコンテナ車両の導入支援では一般トラックとの差額1/3を補助する。倉庫では「ゼロエネルギー倉庫」をキーワードとして環境負荷低減を図る倉庫を支援する。照明・空調の省エネ設備や無人フォークリフト、無人自動搬送車(AGV)導入に対して補助率1/2で補助を実施する。ドローン物流の実用化支援では、計画策定費を上限500万円で補助するほか、機材・設備の導入経費を補助率1/2で補助する内容とした。また、環境省と連携した省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業では、エネ特予算73億円の内数から、省エネ型自然冷媒機器の導入経費を1/3以下の補助率で支援する。

ASEANでCCガイドラインの普及を推進

国際物流分野では予算額1700万円により、ASEANでのコールドチェーン構築に向け、「日ASEANコールドチェーン物流ガイドライン」の規格化と普及に取り組むほか、保冷小口貨物輸送(クール宅配便)のISO規格の普及を支援する。また、官民連携による海外交通プロジェクトの推進予算17億7300万円の内数より、ASEANでの我が国の物流システム普及に向けた各国との物流政策対話やワークショップを開催するほか、シベリア鉄道を利用した貨物輸送普及のためのパイロット事業を行う。

自然災害に強い物流の構築に向けた取り組みでは、予算額1100万円を活用する。大型台風など大規模自然災害により成田空港が機能不全に陥った場合を想定し、空港と航空貨物フォワーダーを軸とした災害時BCPの机上訓練を実施する。人材育成事業では、予算額1000万円により、高度な物流人材育成に向けた具体的方法を取りまとめるための調査活動などを行う。

このほか内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」予算額280億円の内数を充て、18年度からの5ヵ年計画として、サプライチェーンの効率化の基盤となる物流・商流データ基盤の構築事業を継続する。

トラックの品目別取り組み、生鮮品、飲料・酒も対象

自動車部門の予算では、一般会計が19億4400万円(0・95倍)、自動車安全特別会計が545億700万円(1・01倍)で、全体では564億5100万円(前年度並み)となった。このほかに一般会計から自動車安全特別会計へ40億3000万円を繰り戻した。

トラック運送分野では、労働生産性向上や多様な人材の確保・育成、取引環境の適正化を通じ、労働条件改善を推進するため9500万円を計上した。ドライバーの長時間労働削減に向けた取り組みでは、加工食品、紙・パルプ、建設資材など輸送品目別に改善方策を検討する対象を来年度は生鮮食品と飲料・酒に拡大。また、「ホワイト物流」推進運動を継続して展開するとともに、荷待ち・荷役時間や労働時間の実態調査を実施するほか、IT機器の利用状況も調べる。

関連して19年度補正予算1億円により、中小トラック事業者のテールゲートリフター、ユニック車、フォールド・デッキの導入を支援する。
環境対応車両の導入支援では、環境省と連携し、エネ特予算10億円を活用し、中小トラック運送事業者が最新の低炭素型ディーゼルトラックを導入する際、標準的燃費の車両との差額1/3~1/2を補助。またEVトラックの導入では標準的燃費の車両との差額2/3を補助し、電気自動車用充電設備の導入費用の1/2を補助する。

安全対策では、トラック事業者への監査の強化に5800万円を充てるほか、先進安全自動車(ASV)の導入やドライブレコーダー導入への支援に8億7400万円(トラック以外も含む)。健康起因事故の防止を図るため、スクリーニング検査のモデル事業や普及状況の調査、事故防止セミナーの開催などに4000万円を計上した。

隊列走行の技術的検証を継続

経産省と連携した高度な自動走行・MaaS実現に向けた事業は20年度も継続。トラック隊列走行の実証実験(写真)や、ラストマイルの自動走行実験を実施し、予算額50億円の内数を充てる。隊列走行では電子連結技術などの開発や後続車両有人による3台の隊列走行の社会受容などを検証する。また、経産省と連携した省エネ化推進事業では、予算額62億円の内数より、荷主と事業者が連携した車両動態管理システムや予約受付システムの導入支援を継続。クラウド型システムの場合、導入費用の1/2、メモリーカード型システム導入には1/3を補助する。
(2019年12月26日号)


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