日本通運が21年9月に本社移転を決定
日本通運(本社・東京都港区、齋藤充社長)は23日開催の取締役会で東京・神田和泉町に新本社ビルを建設し、2021年9月に本社を移転すると発表した。現在の汐留本社ビル内の各部門に加え、都内に分散している支店機能も新本社に集約することでワンストップ営業体制をさらに進める。同時に、汐留本社ビルなど各自社ビルを賃貸することで、不動産事業の収益強化を図る。4月1日付の組織改正で専門部署「グループCREマネジメント部」を新設し、CRE(Corporate Real Estate)戦略を加速化する。
神田に新本社ビル建設、18年ぶりの本社移転に
日通が新本社ビルを建設するのは、千代田区神田和泉町2の1の社有地。現在は東京北支店とグループの日通神田中央運輸が拠点を構えているが、ここを再開発して、鉄骨造地下1階・地上13階建て、延床面積4万2554㎡の社屋を新設する。19年12月に着工し、21年8月に竣工、同年9月に本社を移転する。定款上の本社所在地の変更は21年6月に開催する定時株主総会に付議する予定。
新本社ビルに入居するのは、現在の汐留本社ビルに入居している本社各部門、支店、グループ会社に加え、現在、都内に分散している首都圏支店、海運事業支店、航空事業支店も集約する。それにより、15年5月の組織改正で実施した陸・海・空のワンストップ体制をさらに推し進める。
なお、日通が現在の汐留本社ビルに移転したのは03年で、予定通り21年9月に移転が実現すれば18年ぶりの本社移転となる。
専門部署の新設でCRE戦略を本格化
一方で今回、本社移転を決めた背景には、ワンストップ体制の推進に加え、不動産事業の強化という狙いもある。移転後、汐留本社ビルは賃貸ビルとして運用するほか、首都圏支店がある自社ビル「NEX人形町ビル」(東京都中央区)、航空事業支店がある同じく自社ビルの「ピアシティ芝浦ビル」(東京都港区)も賃貸ビルに転用し、収益向上を図る考え。
同社は18年度に最終年度を迎える中期3ヵ年経営計画で「不動産事業の再構築」を掲げており、将来的に同事業を100億円規模の収益事業に拡大させる考え。その一環から4月1日付の本社組織改正で、本社管理本部内に専門部署「グループCREマネジメント部」を新設し、企業不動産の最適運用を進めていく。
不動産で得た収益を“本業”強化に充当
同社の齋藤社長は昨年末、不動産事業の強化について「当社グループは長年、駅前の好立地に土地を持ってきたが、例えば平置きの駐車場にしてお茶を濁し、話があれば対応するというスタンスだった。しかし、今後は整理すべきは整理する、活用すべきは活用するといった形で、マーケットプライスや時価に対するリターンを考えていく」「今後、本業である物流で大きな資金需要が出てくる中で、不動産事業などで得たキャッシュを新たなM&Aや設備投資に振り向けていきたい」と述べ、物流事業の強化に向け財務戦略を積極化していく考えを語っていた。
(2018年3月29日号)