メニュー

【コンテナ輸送実績】JR貨物、輸送好調も収支はギリギリの状態

2017.10.17

JR貨物(本社・東京都渋谷区、田村修二社長)のコンテナ輸送が好調だ。今年度上半期(4~9月)のコンテナ実績は前年比4・0%増の1099万5000tを記録。9月単月では7・7%増の197万8000tとなり、同月の鉄道取扱収入はリーマンショック前の2008年以来、9年ぶりに100億円の大台を超えた。だが、今期は当初から線路使用料や貨車の修繕費などコスト上昇が見込まれており、2期連続での鉄道事業黒字化を確保するためには、さらなる収入増と輸送効率化が必須だ。

9月の取扱収入はリーマン前の水準に

同社の9月の輸送実績は、コンテナが7・7%増の197万8000t、車扱が0・9%増の69万4000tとなり、合計で5・9%増の267万1000tとなった。コンテナ品目別ではトラックドライバー不足を背景にした積合せ貨物に加え、自動車部品が好調で、それぞれ2ケタの伸びを記録。また、前年に台風の影響を受けた北海道発の農産品が好調で、農産品・青果物も13・1%増という高い伸びを示した。

11日に会見した田村社長は「9月は極めて順調だった。特に下旬は1日当たりの収入が4億円を超える日が続いた」と述べた。これを受け、9月の速報ベースの鉄道取扱収入は102億円となり、リーマンショック前の高い水準を回復した。

上半期の輸送実績も好調。コンテナは4・0%増の1099万5000t、車扱は1・3%増の396万2000t、合計では3・3%増の1495万7000tとなった。コンテナ品目別では紙・パルプを除く全品目で前年を上回り、モーダルシフトの追い風を受けていることを裏付けている。

荷動き好調も、対計画では若干のビハインド

ただ、その一方で収支面では予断を許さない状況が続いている。もともと今年度は、JR旅客に支払う線路使用料が上昇するほか、例年よりも貨車の全般検査が多い年でもあり、当初から経費上昇が見込まれていた。このため、「収入を頑張って伸ばすのが今年のスタンス」(田村社長)であり、収入計画も高いハードルが設定されている。実際、輸送実績は好調だが、「計画に対しては若干のビハインド」(同)というのが現状。

上半期の段階では、収入増で相殺できていない“紐付けられていない”コストが20億円程度あるとも言われており、鉄道事業の黒字を維持していくためにはコスト削減に加えて、さらなる収入アップが求められている。

輸送余力は限界に近づく空コン削減など効率化必須

とは言え、平日の積載率は8割を超えるなど、輸送余力は限界に近づいており、今後さらなる収入増を実現するためには、運賃施策の強化と空コンテナ回送の削減など輸送効率化が必要になる。

犬飼新・取締役兼執行役員営業統括部長は会見で「平日は積載率が85%を超える日もあり、空コンにも積み荷しないと収入は増えない」と語る。このため、同社では全国通運連盟と連携して、31ftコンテナなど私有コンテナのラウンド輸送による空コン回送の削減に力を入れている。「情報開示により企業の枠を超えたマッチングを進めることで、ラウンド利用を拡大していく」(同)としている。

また、運賃施策についても「従来からの“強いところはより高く”という方針をさらに徹底していく」(田村社長)という。イールドを示すトンキロ価は、4年前と比べ4%増になるなど効果は出ているが、需要増の追い風を受けさらなる単価アップが求められている。

「強い輸送品目をより強く」下期の荷動き

下期以降の荷動きについては、積合せ貨物や自動車部品などのさらなる増送に期待する。「積合せ貨物は、年末繁忙期に向けてさらに需要が高まるほか、自動車部品についても新たなお話をいただいている。強い品目をより強くしていく」(犬飼取締役)。

また、市況悪化により出荷調整が続いていた玉ネギについても、輸送需要の回復が見込まれるほか、日照不足により収穫が遅れていた東北のコメについても、「収穫が遅れていたが、作柄は悪くないと聞いている。今後は出荷が増えていくことを期待している」としている。
(2017年10月17日号)


関連記事一覧