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ネスレ日本、静岡~大阪間で定期貨物鉄道輸送を開始

2024.02.27

ネスレ日本(本社・神戸市中央区、深谷龍彦社長兼CEO)は、JR貨物(本社・東京都渋谷区、犬飼新社長)とそのグループ会社である全国通運(本社・東京都中央区、永田浩一社長)、日本運輸倉庫(本社・東京都中央区、柏井省吾社長)と連携し、長距離輸送を対象としてきた貨物鉄道による輸送を、より貨物量の多い中距離輸送にも拡大する。2月から静岡~大阪間における「ネスカフェ ボトルコーヒー」の定期貨物鉄道輸送を開始。「2024年問題」への対応や温室効果ガスの削減に向け、持続可能な物流の構築を目指す一環で、中距離帯での定期貨物鉄道輸送は食品・飲料業界では初の取り組みとなる。ネスレ日本では2024年の貨物鉄道輸送量を前年比4倍とする計画で、今回の取り組みによりCO2排出量を年間約900t削減できる見込み。また、25年以降、中四国、東北エリアでの貨物鉄道輸送の利用を検討する。

鉄道移行で年間約900tのCO2削減

モーダルシフトは長距離になるほど効率的な輸送が期待でき、ネスレ日本ではこれまでは走行距離は500㎞以上となる長距離輸送を中心に行っていた。ネスレ日本とJR貨物グループは昨年9月、より貨物量の多い中距離輸送(走行距500㎞以下、200~350㎞を中心帯に想定)にも段階的に拡大し、持続可能な物流モデルの構築に向けて共同で取り組みを進めることに合意した。

今回、2月からネスレ日本の島田工場(静岡県島田市)からJR貨物静岡貨物駅、百済貨物ターミナル駅を経由した関西方面への「ネスカフェ ボトルコーヒー」の中距離帯での定期貨物鉄道輸送を開始。これにより、静岡エリアから関西エリアへ毎日40コンテナ、重量換算で200t/日のトラック輸送を鉄道へ移行することとなり、年間約900tのCO2削減を見込む。

貨物駅構内の側線倉庫を保管拠点として利用

島田工場から関西の納品先顧客までの距離は約330㎞。従来、島田工場で製造された製品は静岡県内の保管拠点で保管され、関西の納品先顧客にトラックで輸送していた。鉄道輸送導入後は、島田工場へ12ftコンテナで集荷または島田工場から静岡貨物駅に持ち込み、駅でコンテナに積み替え、7時10分に出発のメイン列車に載せ、百済貨物タ駅には15時7分に到着する。メインの列車以外にも複数列車を利用する。

今回のスキームで特徴的なのは、貨物駅と直結し、引き込み線のある“側線倉庫”を活用すること。百済貨物タ駅に列車が到着後、貨車ごとに日本運輸倉庫が運営する倉庫内の線路に入り、倉庫内でコンテナを開けて直接入庫する。貨物駅構内の側線倉庫を保管拠点として利用し、ネスレ日本の関西地区(大阪府、和歌山県)の各納品先に届ける。日本運輸倉庫では今回のスキーム構築にあたり倉庫の搬入能力を増強した。

持続可能な物流に挑戦、共通価値の創造へ

21日には定期輸送の開始式が行われ、ネスレ日本の深谷社長兼CEO、ピエール・アラン・ミショー常務執行役員サプライ・チェーン・マネジメント本部長、JR貨物の犬飼社長、全国通運の永田社長、日本運輸倉庫の柏井社長が登壇し、プレス向けの説明会とともに、側線倉庫内でオリジナルデザインのコンテナを前にしたセレモニーが行われた。

ネスレ日本の深谷氏は、今回の取り組みの背景について「物流の『2024年問題』により、トラックドライバーの働き方の規制が4月から始まることを踏まえ、持続可能な物流にさらにチャレンジしていかなければならない。また、ネスレグループとして2050年までに温室効果ガス実質排出量ゼロを達成することをコミットメントとして発表しており、物流においてもいかに温室効果ガスを削減するかが課題となっている」と説明した。

ミショー氏は、中距離帯での定期貨物鉄道輸送のプロジェクト概要を説明。「今回の取り組みで24年の貨物鉄道輸送量は23年の4倍になり、トラック換算すると年間4000台の中距離輸送が鉄道にシフトすることになる。年間のCO2排出量は約900t削減できる見込み。今後も共通価値の創造、社会と企業の両方に価値を生み出すような取り組みを積極的に行っていく」と語った。

JR貨物の犬飼氏は「『2024年問題』が目前に迫っており、物流の観点からは重要な問題だ。10月には政府の物流革新に向けた緊急政策パッケージが発表され、モーダルシフトを10年で倍増する計画が示された。鉄道輸送への期待と責任感を感じており、期待に応えられるようグループで一丸となって取り組む。ネスレ日本様の持続可能なサプライチェーンの構築にしっかり貢献できるよう品質向上に取り組む」と表明した。

全国通運の永田氏は09年からスタートしたネスレ日本によるモーダルシフトを振り返り、貨物駅の“倉庫”としての活用や空回送コンテナを使った製品輸送などの先進的取り組み、各種表彰実績などを紹介。「全通系の利用運送事業者による輸送網『みどりのネットワーク』を活用し、環境に配慮した、持続可能で安定的なサービスを提供することによって、ネスレ日本様の目指す持続可能な物流構築にしっかりと貢献していきたい」と述べた。

日本運輸倉庫の柏井氏はネスレ日本の製品の受け入れについて、「従来以上に鉄道貨車で搬入される貨物が増え、夏場に向けた繁忙期に貨物が増えることに備え、従来は1度に貨車4両・12ftコンテナ20個だった搬入作業を、6両・30個の搬入が可能となるよう1度の搬入量を5割引き上げた」と報告。また、環境への配慮を主軸とする顧客から日本運輸倉庫の4ヵ所の側線倉庫に期待が寄せられていることも明かした。
(2024年2月27日号)


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