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ネスレ日本、中距離帯で定期貨物鉄道輸送を開始

2024.03.28

ネスレ日本(本社・神戸市中央区、深谷龍彦社長兼CEO)は、長距離が主体だった貨物鉄道輸送を、より貨物量の多い中距離にも拡大した。2月から静岡~大阪間で「ネスカフェ ボトルコーヒー」の定期貨物鉄道輸送を開始。「2024年問題」を機にさらなる深刻化が予想されるドライバー不足対策に先手を打つとともに、温室効果ガスの削減を推し進める。今回の取り組みにより、静岡エリアから関西エリアへ1日あたり200t/日、年間4000台分のトラック輸送を鉄道へ移行することとなり、年間のCO2排出量を約900t削減できる見込み。今後も段階的に対象品目や地域の拡大を図っていく考えだ。

鉄道輸送で画期的なスキームを導入

ネスレ日本がJR貨物と連携して鉄道輸送を開始したのは2009年。11年にはネスレ日本、JR貨物、全国通運の3社による「神戸モーダルシフト協議会」を設立、14年には「イオン鉄道輸送研究会」の専用列車にメーカーとして参加。翌15年には同専用列車による静岡~福岡間での往復鉄道輸送を実現した。

16年には霞ヶ浦工場と姫路工場間の社内物流で往復鉄道輸送を開始。18年にはJR貨物の土浦駅を“倉庫”として活用する「土浦モデル」を構築。20年には、新潟県からの米の輸送用に回送される鉄道コンテナを製品輸送に有効活用する取り組みを「新潟モデル」として開始するなど、鉄道輸送では常に画期的なスキームを導入してきた。

サプライ・チェーン・マネジメント本部物流部の坂口治夫プロジェクトマネージャーは、鉄道輸送の継続的な拡大について、ネスレが掲げる「共通価値の創造」に触れ、「社会に貢献する活動のひとつとして、経済合理性に配慮しつつ環境にやさしい物流を目指し、鉄道輸送を推進してきた」と話す。

同本部物流部物流企画課の伊澤雄太課長は、「神戸モーダルシフト協議会」の設置を通じモーダルシフトの機運を醸成できたことも鉄道輸送を後押ししたと振り返り、「31ftコンテナを扱える駅や大型荷役機器を備えた駅が徐々に増え、鉄道を利用しやすくなった」などJR貨物のインフラ整備が進んだこともモーダルシフト拡大の背景に挙げる。

中距離帯の輸送にも鉄道輸送を拡大

今回新たにスタートしたのが、先進的な取り組みとなる、中距離帯での定期貨物鉄道輸送。これまでは効率性・経済性の観点から500㎞以上となる長距離輸送が中心だったが、JR貨物、同社グループの全国通運、日本運輸倉庫と連携し、200~350㎞を中心帯とする中距離帯の輸送にも鉄道輸送を拡大することとした。ネスレ日本、JR貨物の調べによると、24年1月末時点において1社で200t/日規模の輸送でのこうした取り組みは食品・飲料業界で初めだという。

モーダルシフトの対象としたのが、島田工場で生産された「ネスカフェ ボトルコーヒー」の関西エリアの納品先顧客への輸送。輸送距離は約330㎞あり、従来、島田工場から出荷された製品は、静岡県内の保管拠点で保管され、関西の納品先顧客にトラックで全工程を輸送していた。

2月からの鉄道輸送導入後は、島田工場へ12ftコンテナで集荷、または島田工場から静岡貨物駅に製品を持ち込み、駅でコンテナに積み替えて鉄道輸送する。コンテナ専用の集配車両(緊締車)の数に限りがあり、1日あたり5tコンテナ40個分の輸送のキャパシティを確保するのは難しいため、トラックで持ち込む方式を併用する。

中距離帯の鉄道輸送を始めるにあたり、「ネスカフェ ボトルコーヒー」のロゴと写真が掲載されたラッピングコンテナ3個を投入。「2024年問題」など社会課題に対応する姿勢を社内外に表明するとともに、中距離帯のモーダルシフトを発信し、普及につなげることで、ダイヤの確保をはじめ利用環境の整備促進も期待している。

メインで利用する列車は7時10分に静岡貨物駅を出発し、百済貨物タ駅に15時7分に到着。メインの列車以外にも複数列車を利用する。悪天候などによる輸送障害発生時には、他の輸送モード(船舶、トラック)を使い分けるBCP対策を従来から講じており、万一の場合のバックアップ体制も整えている。

側線倉庫の活用では物量の平準化に配慮

今回の鉄道輸送では、貨物駅に直結した「側線倉庫」を活用しているのが大きな特徴だ。百済貨物タ駅に列車が到着後、貨車ごとにJR貨物グループの日本運輸倉庫が運営する倉庫内の線路に入り、倉庫内でコンテナを開けて直接入庫。貨物駅構内の側線倉庫を保管拠点として利用し、ネスレ日本の関西地区の各納品先に届ける。

坂口氏によると、「側線倉庫を使えることが、中距離帯の鉄道輸送実施の決め手となった」。到着駅から物流センターまで1日40個のコンテナを緊締車で運ぶのはキャパシティ的に困難で、仮に運べたとしても、物流センター側で1日40個分のJRコンテナからの荷卸しを行うとなると作業負荷が大きくなってしまうからだ。

側線倉庫を活用すれば、到着駅から物流センターへの横持ち輸送が生じず、ホームに入ってきたコンテナから直接商品を倉庫に荷降ろしし、搬入できる。日本運輸倉庫ではネスレの商品の受け入れにあたって、必要なスペースを確保するとともに、1度の搬入量を5割増やすなど搬入能力を増強した。

一方、ネスレ日本側では物流の平準化に取り組んでいる。「ネスカフェ ボトルコーヒー」は夏場に出荷のピークを迎えるが、物量の波動が大きくなって側線倉庫のスペースや作業量の変動が極力生じないように、輸送計画と連動した生産計画を策定。ピーク時は鉄道とトラックを併用した搬入により波動を吸収する。

鉄道シフトで約900tのCO2を削減

中距離帯の輸送は長距離に比べて貨物量が多く、今回の取り組みによりネスレ日本では24年の貨物鉄道輸送量を前年比4倍とする計画。年間で4000台のトラック輸送を鉄道にシフトすることで約900tのCO2排出量削減を見込む。今後は対象貨物の拡大とともに、今後は順次、中四国、東北向けに鉄道輸送の利用を検討する。

モーダルシフト拡大のカギとなりそうなのが、貨物駅の機能のさらなる向上だ。荷物の積み降ろしに関する5tコンテナの作業性はトラックと比べどうしても劣るため、工場からはトラックで出荷し、駅でコンテナに積み替える方式をより増やしたい考えで、駅の積み替え施設のキャパシティ拡充を期待する。

31ftコンテナの普及にも期待を寄せる。積載量のみならず、積み降ろしの作業性においても10tトラックとほぼ同等で、鉄道に切り替えやすい。現状では31ftコンテナの「絶対数が少ない」ため「往復利用」を前提とした料金体系になっており、増備が進んでワンウェイで荷主が使えるようになればモーダルシフトの拡大につながると見る。
(2024年3月28日号)


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