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卸・複数小売が連携して調達を鉄道シフト=全国通運

2023.12.14

全国通運(本社・東京都中央区、永田浩一社長)は、日本物流団体連合会(物流連)の今年度の「モーダルシフト取り組み優良事業者公表・表彰制度」で、最優秀賞にあたる大賞を受賞した。案件は「卸売業者と複数の小売業者の連携による鉄道貨物へのモーダルシフト」。日本最大のコーペラティブチェーンであるシジシージャパン(CGC)と傘下の小売業者3社(ラルズ、フレスタ、原信ナルスオペレーションサービス)が連携して、これまで各社が個別にトラックなどで調達していた農産品や食品をまとめることで鉄道コンテナにシフト。年間841t(削減率77・5%)のCO2排出量を削減したほか、ドライバーの運転時間も年間8848時間削減するなど大きな効果をあげた。

今年度は12ftコンテナ換算で1850個が目標

スーパーなどの店頭に並ぶ野菜や果物などの農産品・青果物は、商材が多種多様にわたる上に、季節や作柄などによって調達先や収穫量が大きく変動する。比較的計画どおりに進めやすい食品メーカー製の加工食品などに比べ、調達業務は煩雑だと言われる。このため、小売各社も調達する商品の輸送手段や経路は産地任せになりがちで、各社が個別に少量から調達を行うため非効率な輸送になっていた面があったという。

全国通運ではこうした状況に対し、鉄道コンテナ輸送を活用した輸送効率化策をJR貨物とともに提案。折衝や調整を重ねる中で、複数の小売業者が共同で買い付けた商材を鉄道コンテナでまとめて輸送するスキームができ上がっていった。当初はCGCとその傘下で北海道を地盤とするラルズに限定された取り組みだったが、CGCグループ内で横展開を図った結果、現在は広島が地盤のフレスタ、新潟を中心に店舗展開する原信ナルスオペレーションサービスが参画するなど、連携の輪が徐々に広がっていった。輸送量も年々拡大しており、2022年度は12ftコンテナ換算で1678個を運んだ。今年度(23年度)は1850個を目標に掲げているが、現在のところ目標を上回るペースで推移している。

全国通運で開発営業を担当する野上剛取締役は「卸や小売といった川下分野は当社やJR貨物にとってもあまり経験がなく、チャレンジだった」と振り返る。「従来は、小売各社が個別に調達していたことに加え、生鮮品が多いこともあってトラックの輸送コストが割高になっていた。これを調達・輸送をとりまとめることでCO2排出削減だけでなく、コスト面でもメリットを生み出せたことが大きかった」と強調する。

月1の協議会でモノの流れやデータを〝見える化〟

このスキームが順調に拡大しているもうひとつの理由が、月1回ペースで開催される「モーダルシフト推進協議会」の存在だ。16年3月にCGCとラルズ、JR貨物、全国通運の4社でスタートした協議会は現在、フレスタ、原信ナルスも参加し、「ラルズ・CGCグループ・フレスタ・原信モーダルシフト推進協議会」として毎回活発な議論を交わしているという。協議会の場では、買付商品の一覧や輸送ルートなどの詳細なデータを参加者が共有してモノの流れを「見える化」。実際のデータをもとに調整を重ねていくことで、調達品目や輸送量の拡大につながっていったという。開発営業部の永野幸三担当部長は「当初、グロサリーだけだった品目が野菜や果物などの青果物に広がっていった。データを〝見える化〟することで、関係者全員が共通の目標を立てやすくなったことも大きい」と説明する。

ただ、運用面での難しさもある。その最たるものが需要などの急激な変動だ。タマネギやブロッコリーなどの野菜類、ミカンやリンゴ、柿といった果物は、季節や気候などによって需要や作柄状況が刻々と変わり、調達先の変更による輸送経路の見直しも頻繁に起こる。また、鮮度が重視されるために急な変更にも即時に対応することが求められる。開発営業部で実務担当者を務める佐藤貴広係長は「毎回、同じような動きはほぼない。急な変更も多く、生きているものを扱う難しさを痛感している」と語る。現在は実務担当者の対応に頼っている面が大きいが「今後は、急な変更などについてどこまで対応していけるかを含めて、協議会の中で仕組み化について話し合っていきたい」(野上氏)と課題を指摘する。

CGCグループ内での展開余地が多くある

CGCグループの総年商は5兆円を超え、参加企業は208社、店舗数は4436店舗を数える(23年11月現在)。このため、グループ内での展開余地はまだまだ多く残されている。現在は国土交通省から交付されたモーダルシフト補助金などを活用してポスターを作成し、CGCグループ内で取り組みの認知度アップに努めているほか、売り場のポップなどで購入者に鉄道コンテナ運ばれてきたことをアピールしている。

永野氏は「『2024年問題』によってトラックでの輸送が難しくなっていく中で、鉄道コンテナ輸送に挑戦しておいてよかった、と言っていただけることが増えた。来期以降も参加企業が増えることが見込まれている」と期待を寄せる。

また、鉄道コンテナで輸送する商材の広がりも期待できる。今年、鳥インフルエンザが発生した際には、調達先の変更などに伴い鶏卵の鉄道輸送にも挑戦した。「JR貨物でもここまでの量の鶏卵は運んだことがないという事例だったが、これまでのところ卵が割れたという報告はない。鉄道で運んだことがない食品はまだまだ多く、新たな挑戦が鉄道輸送の可能性を広げるという意味でやりがいは大きい」(佐藤氏)と展望する。
(2023年12月14日号)


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