YKK AP、埼玉・加須に在庫型拠点「首都圏DC」開設
YKK AP(本社・東京都千代田区、魚津彰社長)は、最大消費地である首都圏エリアにおける住宅用商品の供給体制を強化するため、埼玉県加須市に在庫機能を持つ新物流拠点「首都圏DC」を開設し、10月2日から稼働を開始した。無在庫/クロスドック型のTCが中心だった首都圏エリアに在庫型拠点を置いたことで、全国各地の製造拠点などから運ばれるトラックの長距離輸送を削減するなど「2024年問題」に対応。また、新拠点では同社の物流拠点として初めて棚搬送ロボットを使ったGTP(Goods To Person)システムを採用し、構内作業の省人化を実現していく。
TCからDCへ、在庫配置を見直し
首都圏DC(写真)は、「ESR加須ディストリビューションセンター2」の1階・2階部分に開設し、使用面積は2万6202㎡(1階1万5094㎡、2階1万1108㎡)。構内作業や輸配送業務など物流業務全般をセンコーが担当する。配送管轄エリアは埼玉、千葉、山梨、茨城、群馬、栃木の6県に加え、東京と神奈川のエクステリア代理店向けの配送も担当。トラックによる配送先は約100方面に及ぶ。稼働当初はフェンス、門扉など即納ニーズが高いエクステリア商品から取り扱い、来年3月以降は、首都圏での需要が高いものの、従来は遠距離拠点から輸送していた住宅・エクステリア商品の保管・在庫管理も開始する計画。
YKK APはこれまで、大規模製造拠点に隣接するDCで商品を在庫し、受注が確定した商品のみを輸送する方式を採用することで、横持ちなどムダな輸送を発生させない物流体制を構築していた。このため、首都圏向けの物流は、北陸DCなど全国の拠点から出荷された商品が、首都圏TCと神奈川TCの2ヵ所のクロスドックセンターを経由する形で納品されていた。しかし、ドライバー不足が顕在化し、ドライバーの働き方改革に伴う「2024年問題」への懸念が高まる中で、最大消費地である首都圏エリアで適正在庫を持つ必要性が浮上。消費地近くで一定の在庫を確保することで、各地のDCからのトラックによる長距離輸送を効率化し、輸送回数を削減する。また、これまではリードタイムの都合上、夜間に出荷することも多かったが、今後は昼間の作業に変えることでドライバーの労務負担を軽減していく。
さらに、リードタイム面で余裕が生じてきたことで、今後は拠点間輸送で鉄道・船舶へのモーダルシフトを拡大していく。輸送距離700㎞以上を中心にトラックからの転換を進めていく方針で、25年度に輸送におけるCO2排出量を22年度対比で30%削減していく目標を掲げている。
トラックによる長距離輸送をゼロに
9月28日に開催された施設見学会および説明会で岩﨑稔・執行役員ロジスティクス部長は、同社の物流施策について「当社は大きな生産拠点に併設してDCを持っており、これまでは横持ち輸送などを廃止する観点からTCを全国に配置して輸送ネットワークを構築してきた。しかし、『2024年問題』などドライバーの働き方の見直しが大きなテーマになる中で、在庫の持ち方や配置を見直すことになり、今回、首都圏DCを開設することになった」と説明。同社の物流拠点はこれまで全国10拠点(DC6ヵ所、TC4ヵ所)だったが、首都圏DCの開設と今月16日に開設予定の福岡TCにより、全国11拠点体制(DC7ヵ所、TC4ヵ所)となる。岩﨑氏は「現時点では全国を網羅できる体制が整った」と述べた。
今後のモーダルシフトについては「現在、全社で1日200便程度ある拠点間輸送のうち、3割程度が長距離輸送となっており、これをゼロにしていく。そのためにモーダルシフトを進めていくが、どうしても輸送リードタイムが長くなるので、そのためにDCで在庫を持つようにした。今後、在庫配置の見直しが完了すれば、船舶を中心にモーダルシフトを進めていく」と語った。
GTPシステムで作業時間を半減へ
首都圏DCの大きな特徴が、同社の物流拠点として初めて、作業者のいる場所へロボットが在庫保管棚を運んでくるGTPシステムを導入したこと。エクステリア関係の部品など小型商品のピッキング・仕分け業務で運用していく。
従来は、スタッフが保管棚のまわりを歩いてピッキングした商品を、まずは県別など10方面程度に仕分けた後、さらにトラックに積み込む際に最仕分けする2段階作業となっていた。これを、GTPシステムを採用することで、一度に100方面別に仕分けられるようになったほか、作業時間も従来の半分程度に短縮できる。岩﨑氏は「まずは、首都圏DCで効果を確認した上で、他拠点への展開を考えていきたい」と述べた。
(2023年10月3日号)