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加工食品製配販、持続可能な物流実現へ3層が連携強化

2023.09.26

加工食品の持続可能な物流の実現に向け、製配販3層の連携が強まっている。「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」への対応では、メーカー、卸、小売の各団体が参加する「フードサプライチェーン・サスティナビリティプロジェクト(FSP)」の「協同ワーク」として3層が共有できる指針をまずまとめ、そのうえで各業界の自主行動計画を策定する方針。サプライチェーン各層の“個別最適”を脱し、“全体最適”を目指す具体的な取り組みのモデルケースになりそうだ。

荷待ち・荷役作業削減へガイドライン

「FOOD展2023」の一環として21日に開催されたセミナーでは、「持続可能な物流の構築に向けて」と題しパネルディスカッションが行われ、キユーピー執行役員ロジスティクス本部本部長の前田賢司氏、三菱食品執行役員SCM統括統括オフィス室長の小谷光司氏、ライフコーポレーション首都圏物流部部長の渋谷剛氏がパネリストとして登壇。日本加工食品卸協会(日食協)の時岡肯平専務理事がコーディネーターを務めた。なお、サプライチェーンの3層が集結してのパネルディスカッションは初めてとなった。

キユーピーの前田氏はメーカー~卸間のリードタイムの延長(中1日配送)について、卸の在庫が増えるなどの課題を解決するため、メーカーが受注締め時間を「13時」ないし「14時」に後ろ倒しする取り組みを報告。キユーピーでは現在、「14時」の受注締め時間としており、リードタイムの延長により車両が確保しやすくなったり、自然災害への対応力が向上したことをメリットに挙げた。また、「中1日」を使ってASN(事前出荷情報)を活用した検品レスの取り組みも紹介した。

三菱食品の小谷氏は、メーカー~卸間の荷待ち・荷役作業削減に向けた取り組みのガイドラインを策定したことを報告。荷待ちの発生要因や定義のほか、「メーカーの車両を卸の物流で活用したり、『マザーセンター化』など踏み込んだ」対策を盛り込んだことも明かした。フォーク作業を含む荷役作業に関しては、これまでグレーゾーンだった卸、ドライバーの業務範囲を明確化。今後、同ガイドランについて周知するとともに、小売の在庫型センターにも水平展開したい意向を示した。

ライフコーポレーションの渋谷氏は、3月に立ち上げた「首都圏SM物流研究会」の発足経緯と、同研究会が定めた「加工食品における定番商品の発注時間の見直し」をはじめとする4つの実施事項の進捗を説明。物流課題の認識にあたり、「小売、卸が個社でなく、複数社で直接対話できた」意義を語った。欠品の恐れに起因するサプライチェーンの非効率を解消するため、「確定でモノを動かす」ことを提案。「部分最適が効率を下げ、全体最適で効率化するには3層の連携が不可欠だ」と強調した。

FSPとして製配販行動指針を策定

続いて、日食協の時岡氏が政府による「物流革新に向けた政策パッケージ」と、それを受けて関係省庁が発出したガイドランについて説明。今年中にガイドラインに基づき業界・分野別の自主行動計画の作成・公表が求められている中で、自主行動計画を有効に運用するために業界個別ではなく、3層連携の場であるFSPとして、加工食品業界の製配販行動指針(FSP版)を作成していることを報告。これに沿って各層の自主行動計画を策定し、指針をPDCAのツールとして活用していく考えも語った。

政策パッケージやガイドラインの動向に関し、前田氏は「これまでも国のガイドラインはあったが、今回は法規制も絡み、しっかり対応しなければならない」、小谷氏は「従来からのメーカー、小売との取り組みをあらためて後押しする」、渋谷氏は「消費者の行動変容については国が主導して物流問題を共有してほしい」とコメント。時岡氏は、「『2024年問題』はあくまでも通過点であり、物流の持続可能性に向けて物流事業者も含めてサプライチェーン間のさらなる『協同ワーク』が不可欠」と締めくくった。
(2023年9月26日号)


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