消費財企業の8割が利用拡大の意向=「内航海運モーダルシフト」調査
国土交通省は16日に開催した「モーダルシフト推進・標準化分科会」の第2回会合で内航海運でのモーダルシフトに関するアンケート調査の結果概要を発表した。食品・日用品など消費財メーカーとその委託先である物流事業者(物流子会社含む)など広義の荷主企業47社を対象とした調査で、流通経済研究所が実施。40社から回答があった。国内幹線輸送での長距離フェリー・RORO船の利用割合(トンキロベース)をみると、利用割合が10%未満の企業が最も多かった。「1~10%」の企業が45%と半数近くを占め、「11~20%」は20%、「21~30%」は17・5%、「31~40%」は7・5%だった。一方、「利用なし」の企業も5・0%あった。
利用が多いルートは「関東・関西」と「北海道・九州」を結ぶ航路となった。5割以上の企業が利用しているルートは、関東から九州が60・5%、関東から北海道が57・9%、関西から九州が55・3%だった。内航海運は北海道や九州との長距離輸送を中心に利用されていた。
「集配スケジュールに合わない」との指摘も
内航海運の利用にあたっての課題は、半数以上が「運送コストが上昇する」「リードタイムが延びる」ことを挙げた。また、3割以上が「自社の集配スケジュールに船舶の運航ダイヤが合っていない」「適当な航路がない」ことが課題だと指摘。回答数は少ないものの「便ごとの空き状況などの情報が入手しづらい」という意見もあった。コストとリードタイムが基本的な課題だが、加えて適切な運航ダイヤの調整やニーズに対応した新航路の検討が今後対処すべき課題となりそうだ。
「2024年問題」に対応し長距離輸送をシフト
こうした現状がある一方、3~5年後を想定して内航海運を利用する意向は強かった。「現状より利用を拡大したい」が80%と大勢を占め、「現状と同程度利用する」が20%あった。一方、「現状より利用を縮小したい」「利用しない・利用をやめる」という企業はなかった。利用拡大を検討する理由については回答した全社が「時間外労働の上限規制により長距離トラック輸送が難しくなるため」だとした。また「CO2排出量を削減するため」が8割を超え、「BCPとして輸送ルートの多元化を図るため」が約6割に達し、「2024年問題」への対応をはじめ、ESGやサプライチェーンの安定性維持の観点から内航海運への注目が高まっていることがわかった。
利用拡大の意向のある企業が拡大の対象とするルートは「関東から九州」が46・9%、「九州から関東」が34・4%と関東・九州ルートが多かった。次いで「関東から北海道」「関西から関東」「関西から九州」「四国から関東」がいずれも28・1%で並び、「関東から関西」が21・9%だった。
東京湾(神奈川)と伊勢湾(三重)を結ぶ新たなフェリー航路(東海道フェリー)を開設するとした場合の利用可能性などを聞いたところ、35%が有意義だと肯定的に評価した。大型トラックを利用したモーダルシフトをはじめ、輸送ルートの多元化、フェリー乗船時のドライバーの休息時間の確保がメリットとして期待されていた。タイムスケジュールでは、神奈川・三重の〝19時発・翌日5時着〟の運航については往復とも利用可能性がある企業が3割以上となった。
共同輸送の「拡大の余地は大きい」
内航海運を利用した共同輸送の実施状況については、実施企業と非実施企業が分かれた。「実施している」は55・3%と半数を超え、「現在、検討している」も5・3%あることから6割が共同輸送に積極的な姿勢だった。一方、「実施していない」も39・5%と約4割を占めており、共同輸送はまだ拡大の余地があることがうかがえる。今後は荷主連携による取り組みや成功事例の普及が重要となりそうだ。メーカーからの意見では「1社でチャーターできれば問題がないが、チャーターできない程度の物量では共同輸送を検討したい」「LCL(混載貨物)サービスがあってもいいと感じる」などの意見があった。
(2023年8月24日号)