【ズームアップ】「2024年問題」、“倉庫”への影響は…
働き方改革法に基づきトラックドライバーの労働時間のルールが厳しくなる「2024年問題」――。実施を1年後に控え、サプライチェーンの結節点となる“倉庫”への影響も注目される。行政は倉庫での長時間の荷待ち時間に対する監視を強めており、改善できなければ企業名が公表される恐れもある。労働環境を改善するため、ドライバーを「運転」業務に特化させる動きが、倉庫側での作業の負荷増大を招く懸念もある。「2024年問題」が倉庫にもたらす影響を、マイナスとプラスの両面から探る。
トラックに悪影響及ぼせば通報の可能性
改正貨物自動車運送事業法の「荷主対策の深度化」では、トラック事業者の長時間労働労働など違反の原因をつくっているという「疑い」のある段階から、荷主に対して国土交通省が「働きかけ」を行うことができ、改善が見られなれば「要請」「勧告」と厳しい措置に至る。「勧告」となれば企業名が公表される。
2月28日時点で「働きかけ」は76件、「要請」は3件発出され、この中には倉庫も含まれており、3件目の「要請」先は、長時間の荷待ち時間を改善できなかった倉庫業だった。つまり、「荷主対策」とはいうものの、実際には倉庫も対象となり、トラックの事業運営に悪影響を及ぼす倉庫はトラック事業者から通報”されかねない。
2021年の国交省の調査によると、ドライバーの付帯作業が発生している割合は3割、荷待ち時間が発生している割合は7割に上っていた。倉庫に明らかな原因がなくても、待機や付帯作業が発生している現場であるために、「〇〇倉庫で5時間も待たされた」「〇〇倉庫では棚入れまでやらされる」と倉庫が槍玉に挙げられる可能性がある。
作業シフトや値上げ、物流拠点見直しも
スワップボディコンテナ車の投入をはじめ、従来ドライバーが行っていた荷役や付帯作業が倉庫側にシフトすれば、倉庫側で作業員を増員しなければならない。トラックの集荷都合に合わせた作業体制が求められ、倉庫側のオペレーションの負荷が増す可能性もある。さらに、ドライバーを待たせないためにトラック予約システムなど新たな投資が必要になるケースも考えられる。
トラック運賃の値上げの影響も予想される。大手運送会社が相次いで値上げを発表し、緩やかながらも値上げ基調が続く中、契約によっては倉庫会社の支払い運賃が増えて利益率が下がる場合もある。物流費の予算には制約があるため、荷主がトラック運賃の値上げを受け入れる代わりに、倉庫に対して値下げを求めてくる懸念もある。
物流拠点の見直しに、倉庫が巻き込まれる可能性もある。足元では物流不動産は過去最大の供給量が計画され、首都圏では空室率が5%を超えた。物流不動産デベロッパーが荷主に直接営業をかけ、条件が良ければ荷主がそうした施設にシフトすることも考えられる。荷主の共同配送が加速し、拠点の統廃合に伴い、自社の倉庫の取り扱いが減ってしまうリスクにも留意が必要だ。
荷主に対して問題を可視化、改善提案を
ただし、倉庫にとってプラスの影響も考えられる。トラックの輸送距離を短縮するためのストックポイントの増設、輸送回数を減らすための在庫の積み増しは、端的に倉庫のスペース需要拡大につながる。また、食品の賞味期限の「年月表示化」など、物流に配慮した商慣習の改善が広がれば、煩雑な在庫管理が緩和され、倉庫での負担が減ることになる。
なお、物流拠点の見直しや共同配送などは、倉庫から提案することよってビジネスチャンスにもなる。「2024年問題」を巡って荷主への規制が強まる中、倉庫で起きている非効率を可視化し、改善を荷主に提案すれば、荷主は不名誉なことで企業名を公表されるリスクが下がり、倉庫のパートナーとしての価値が高まることになる。
(2023年4月27日号)