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「24年問題」、倉庫業へのしわ寄せ懸念=日倉協/記者説明会

2024.03.05

日本倉庫協会(久保高伸会長)の広報委員会(柴山恒晴委員長)は2月29日、記者説明会を開催し、「2024年問題」への対応、労務費の価格転嫁といった主要課題のほか、日倉協の活動状況を説明した。

柴山委員長(杉村倉庫)は、「2024年問題」について、「働き方改革関連法案によるトラックドライバーへの時間外労働の上限規制の適用まで、あと1ヵ月まで迫ってきた。今後、トラックドライバーの荷待ち時間の短縮や、サービスとしての荷役作業の提供の撤廃など、トラックドライバーの負担軽減に関係者が協力して取り組むことになっている。倉庫業界として可能な限り協力していく方針だが、こうした課題を解決するには、荷主、物流事業者が一体となって取り組む必要があり、倉庫事業者だけにしわ寄せがくることを強く懸念している」と強調。

さらに、「そうしたことにならないよう対処していただくことを行政に要請していきたい。例えば、トラックドライバーが行っていた荷役作業などを倉庫事業者が委託を受ける場合には、適正な対価をいただくことは当然であり、また、トラックドライバーの荷待ち時間の短縮に関しても、倉庫事業者として真摯に取り組むが、荷主または運送会社の都合によるものは対象外と考えている」と述べた。

価格転嫁について、昨年11月末に公正取引委員会が出した「労務費の適切な価格転嫁のための価格交渉に関する指針」に触れ、「労務費の価格転嫁について政府が問題意識を持って取り組んでおり、この動きは歓迎したい。しかし、倉庫業はトラック運送業と異なり、法令に基づく『標準的な運賃』制度も『トラックGメン』制度もなく、業界だけではその価格転嫁を円滑に実現することは容易ではない。政府には実現可能な対策を検討のうえ、措置を講じていただくことをお願いしていきたい」と語った。

3月18日の理事会で承認を得る令和6年度の事業計画案についても事務局から説明があった。24年度は「2024年問題」への対応として規制的措置を盛り込んだ法律の内容が具体化されていくことから、より良い制度になるよう倉庫業界の立場を明確にするとともに、必要な提案を行っていく。また、物流効率化の観点から、令和5年度補正予算などによって、様々な補助制度が講じられてきており、会員事業者がこれらの制度を有効活用できるよう、情報の収集・提供に努める。

さらに、2年かけて検討を進めてきた委員会活動の見直しについては、理事会への報告、承認を経て新体制のもとで会員事業にとって有意義な活動を展開していく。重要課題である人手不足への対応では、物流DXの推進とともに、人材確保策として、外国人の活用に関し会員事業者のニーズを確認のうえ、特定技能の対象職種への「倉庫業」の追加を目標に体制を整備して取り組む。このほか今年中に事務所を倉庫会館から仮事務所に移転することも想定し、準備を行う。

物効法改正、チャンスの一方、過度の負担懸念

質疑応答では、「トラックGメン」による倉庫への要請の内容について問われ、米田浩理事長は「詳細については把握していない」としたうえで、労務費の価格転嫁に関する指針が出た際、道路貨物運送業が受注者であるときに、価格転嫁できていない発注者の上位3業種に倉庫業が入っているという指摘を受けたことに言及し、「その理由としては、倉庫は(価格転嫁を受け入れるのに十分な)原資を持っておらず、公取委の指針に従って荷主に値上げを受け入れてもらって初めて、トラック事業者に支払う原資ができる。そういう形になるように、国交省に対しては支援をお願いしたいと伝えている」と説明した。

また、倉庫の開発許可や倉庫税制との関係が深い、物流総合効率化法(物効法)が、荷主・物流事業者に対する規制を盛り込む形で改正されることへの受け止め方について、「いままでは物効法の認定を受けて税制の特例を受けられるという内容の法律だったが、今回、(荷主や物流事業者への)規制的措置を物効法の中に入れると聞いている。荷主を巻き込んで法的な義務を課してまで(物流改善を)やろうとしていることは大変歓迎し、チャンスだと感じている。一方で、倉庫事業者も義務を課されるということになり、それが過度の負担になり、倉庫側にしわ寄せがきたり、倉庫が悪者にならないように気を配りながら、前向きに取り組んでいきたい」と述べた。
(2024年3月5日号)


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