【レポート】倉庫の〝中継拠点化〟に注目
トラックドライバーの時間外労働厳格化に伴う「2024年問題」への対応として、倉庫の〝中継拠点化〟が注目されている。最終輸送先までの距離が長距離になる場合に、その中間地点などに拠点を置くことによって運行の距離を短くし、ドライバーの労働時間短縮、集車力の向上につなげる狙いがある。荷主や物流会社の拠点新設のほか、需要を見越した物流不動産の開発も進む。
中間地点に拠点、「24年問題」に対応
来年4月から、ドライバーに年960時間の時間外労働上限規制が適用される「2024年問題」――。ドライバー1人による長距離の運行が難しくなるため、物流見直しの一環として、関東~東北、関東~関西、関西~九州南部といった幹線ルートなどで、荷主や物流会社が中継地点を設ける動きが広まっている。
トヨタ紡織では自動車部品の物流効率化を目指し、愛知県豊田市で物流中継拠点(延床面積約2万5000㎡)の開設に着手。24年7月の稼働を目指す。輸送事業を担う子会社のTBロジスティクスが拠点運営を担当。同拠点を活用することで、外部倉庫や既存中継拠点の廃止や集約を加速し、国内物流の整流化を推進する。
青果物専門商社のデリカフーズは、広島県坂町に青果物の冷蔵包装や仕分け機能を有する「広島センター」(約1072㎡)を24年4月に稼働予定。関西地区と九州地区の中間地点にあたる広島に中継拠点を設けることで「24年問題」への対応と幹線便ネットワークの強化を進めていく。
物流事業者も中継拠点稼働を活発化
エア・ウォーター子会社の東日本エア・ウォーター物流は、7月に3温度帯対応の「盛岡低温センター、写真」(約8282㎡)を岩手県滝沢市に開設。「24年問題」で食品の長距離輸送が困難さを増す中、全国と東北エリアの低温物流をつなぐ役割を担い、全国から東北へ、東北から全国への食品や原材料を集約・配送するための拠点として運用する。
同じくエア・ウォーターの物流子会社である桂通商は、熊本県玉名市に「熊本低温物流センター」(建設面積約2434㎡)を24年2月に稼働する予定。大消費地までの距離が長距離になりがちな貨物の輸送で、県内各地から集荷した青果物を保管し、積み合わせを行う共同センターとしての機能を果たす狙いだ。
大和物流では近年、地方物拠点の開設・拡充を積極的に進めており、ストックポイントとしてはもとより、中継拠点としての活用も推進。中継拠点のニーズが旺盛な中国・四国エリアでは、今年1月に広島市西区で「広島観音物流センター」(延床面積約1万3875㎡)を、4月には香川県丸亀市に「丸亀物流センター」(約1万4478㎡)を稼働。8月には首都圏と東北を結ぶ長距離輸送の中継拠点としての機能を持つ「福島物流センター」(約1万1676㎡)を福島県本宮市で稼働した。
横浜冷凍(ヨコレイ)は、岡山市南区に中国・四国地方で最大規模の冷凍冷蔵倉庫となる「岡山物流センター(仮称)」(約2万8784㎡)を25年春に新設する。「24年問題」における運送業界などの要望もあり様々な視点で検討してきたもの。24年に開通予定の岡山環状南道路を活用することで、阪神・中国エリアへのアクセスの利便性が向上。同社は阪神エリアに5ヵ所の物流拠点を設けており、今回初めて中国エリアに拠点を設け、阪神から九州エリアまでをつなぐネットワークが強化される。
大手物流不動産も東北・中四国エリアに熱視線
物流不動産デベロッパーも中継地点としての需要が高まっているエリアでの施設開発を拡大。大和ハウス工業は3月、岡山市北区の岡山空港付近に「DPL岡山空港南B棟」(約1万5714㎡)を竣工した。同施設では、九州地方と関東地方をつなぐ中継拠点としての需要を見込んでいる。
日本GLPは中国エリアでの開発に積極的で、2月には広島市中区で、従業員不在時でも荷物の積み降ろしができる「置き配バース」を整備した「GLP広島Ⅱ」(約4万9792㎡)を竣工。今後は岡山県早島町で「GLP早島Ⅲ」「GLP早島Ⅳ」の25年内の竣工を予定しており、岡山県に設ける施設を全7件に拡大する。
プロロジスも中継拠点の機能を備えた施設の開発を加速する。岩手県矢巾町で11月に竣工した「プロロジスパーク盛岡」(約9万9592㎡)を皮切りに、24年から25年にかけて愛知県東海市に「プロロジスパーク東海1」「同2」、岡山市に「プロロジスパーク岡山」の開発を計画する。さらに、同様の施設開発を静岡、九州、北海道、日本海側エリアでも進めていく方針。
〝拠点をシェア〟で中小運送事業者を支援
中小の運送事業者など自前で中継拠点を確保するのが難しい企業をサポートするため、自社拠点を中継拠点として他社に利用してもらうサービスも生まれている。物流不動産協同組合では、地方から首都圏へ長距離輸送する運送事業者が、荷物の積み替えや一時仮置きを行うための中継輸送拠点を共同利用できるサービス「シェア・クロス」を開始。運送事業者はサービスの協力企業の倉庫を中継地点として利用することでトラックの運行時間を削減できるほか、同サービスでは荷受け先までの輸送車両の手配や他の運送事業者とのマッチングによる帰り荷の確保にも対応する。
(2023年11月30日号)