「荷主・元請」規制に新制度創設へ=経産省/国交省
経済産業省と国土交通省は今後想定される〝物流危機〟に対し、発荷主、着荷主、物流事業者の3者が積極的に改善に取り組むことを促すための措置を行う新制度を創設する考えを示した。17日に開催した第6回「持続可能な物流の実現に向けた検討会」で提案した。新制度は省エネ法の手法に基づき、荷主と物流事業者から特定荷主・特定物流事業者を選定し、生産性向上など物流改善の取り組みを促すもの。特定荷主には物流改善の責任者として「物流管理統括者」(役員クラス)の選任を義務付ける。
「2024年問題」控え、危機意識不足に焦り
同検討会は8日に物流改善政策の中間とりまとめを公表。その中で、2024年4月からのトラックドライバーの労働時間規制の厳格化によって懸念される物流課題「2024年問題」への対応が急務だとの認識を示し、課題解決には荷主に対して当面の物流課題への認識を高め、意識改革に導くことが不可欠だと指摘。その上で、荷主の物流改善を促進するには、一定の法規制が必要だと提言した。
これまで行政主導による各種ガイドラインを作成して改善促進を図ってきたが、「2024年問題」が目前に迫る中、サプライチェーン全体では改善が進んでいない。そこで経産省と国交省は、荷主と物流事業者を制度的に規制する省エネ法の手法を見習い、〝荷主対策措置法〟を新設することで改善を促すこととした。新制度は、荷主対策に力点を置くが、発荷主よりも物流改善意識が乏しいと想定される着荷主を規制することが注目される。
トラック運送業界は元請・下請の多重構造となっており、物流改善を徹底するには元請事業者への規制も必要との観点から、新制度の規制対象には一定規模の物流事業者を「特定物流事業者」として政府が指定し、規制対象に含める。
取り組みが不十分な荷主や物流事業者に対して、経産省、農林水産省、国交省など所管する官庁が勧告・企業名公表・罰則などの処分を行うことで実効性を高める。
現在、業界団体などに荷主対策措置案について意見聴取を行っている。夏ごろにはヒアリング結果に基づき最終的な提言をとりまとめ、新制度創設の方針を打ち出す。
「改正トラック法とは〝向き〟が違う」
物流改善に向けた既存制度には、改正貨物自動車運送事業法が定める荷主対策制度がある。トラック事業者に対し、法令違反の原因となる運行指示(違反原因行為)などを行った荷主に対し、そのおそれがある段階で改善を働きかけ、改善に取り組まない荷主には要請や勧告・企業名公表などを行うものだ。ただ、この制度では、荷主の違反原因行為についてトラック事業者からの情報提供がなければ実情の把握が困難であり、荷主への働きかけを行うことができない。そこで事業者の違反の有無とは関わりなく、荷主をはじめ物流の関係者全体を規制できる制度を創設したい考え。「改正貨物自動車運送事業法の『荷主対策の深度化』に対し、創設を意図する荷主対策は〝向き〟が違っている。法制度に基づく荷主対策により物流改善を加速する」(国交省関係者)。
(2023年2月28日号)