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関税・消費税立替え払いに公取委が見解

2023.02.07

荷主が通関業者に対し、輸入貨物の関税・消費税の立替え払いを要請することは、独占禁止法上の優越的地位の濫用の観点から問題につながるおそれがある――。通関業者による関税・消費税の立替え払いについて、公正取引委員会の見解が明らかになった。当該荷主との取引数量や取引額の増加など立替え払いよって得られる「直接的な利益」が通関業者に明示され、それが立替え払いの負担を上回っていなければ、不当な経済上の利益の提供要請とみなされる可能性がある。

立替え払い、条件や具体的利益の明示が必要

東京通関業会が1月27日に主催した講演会で、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部の守山宏道企業取引課長、優越的地位濫用未然防止対策調査室の山本慎室長が、「優越的地位の濫用規制の概要および荷主と物流事業者との取引に関する調査結果(令和4年5月公表)について」と題し講演し、通関業者による関税・消費税の立替え払いに関し、公取委としての考え方を説明した。

関税・消費税の立替え払いについて、公取委としては「荷主が立替え払いの条件等について事前に明確にしないで要請したかどうか」「立替え払いによって通関業者が得られる直接の利益が負担を上回っているか」に着目。「直接の利益」とは実際の取引数量や取引高の増加など実際に生じる具体的な利益を指し、当該荷主と「将来の取引が有利になる」といった間接的で曖昧な利益は該当しないとした。

荷主の違反行為防ぐためリアルタイム方式推奨

山本室長は、「税金は本来、納税義務のある者が支払うべきで、それを他人に立替えさせること自体が、優越的地位の濫用の観点から、問題となるおそれのある行為だと考えられる」としたうえで、「たとえば、取引先から、『固定資産税を立替えておいてほしい』と言われたら、『なぜ』と疑問を感じるのが普通であり、(同じ税金である)関税・消費税についても立替えさせることに疑問を感じる」と私見を述べた。

一方で、通関業者が荷主を獲得するための営業戦略として、関税・消費税の立替え払いを自発的に行うことについては、独占禁止法上の問題にはならないと説明。ただし、荷主が他の通関業者に対しても同じように関税・消費税の立替え払いをサービスとして求め、「他の通関業者がその要請を断れずに困る」という状況になれば、独占禁止法上、問題となるおそれがあるとの考えを示した。

また、輸入(納税)申告と同時に納税者の預金口座から直接納付するリアルタイム口座振替方式(ダイレクト方式)にも言及し、「この制度を利用すれば通関業者の立替え払いは発生せず、荷主は『問題につながる行為』を未然に防止することができる」とし、荷主の違反行為を未然に防ぐためにも、通関業者から荷主に対してリアルタイム口座振替方式の活用を推奨することを提案した。

荷主・物流事業者向け調査でも立替払いの設問

輸出入者の通関手続きを代理・代行する通関業者は、その商慣習から、輸入者に代わって輸入品にかかる関税、消費税等を対価を得ることなく立替え払いしているケースがある。東京通関業会が昨年行ったアンケート調査では、90・4%が「関税・消費税等の立替え払いを行っている」と回答。立替え払いを行っている理由(複数回答)を尋ねたところ、「荷主からの立替え払いの要請」が92・4%で荷主から要請されるケースが9割にのぼる。

関税・消費税の立替え払い問題について公取委の見解が示されたのは昨年5月25日。荷主と物流事業者との取引に関する調査の結果を公表した中で、「荷主が通関手続きにおいて発生する関税・消費税を荷主において直接支払わず、物流事業者に対し、立替え払いをさせた」事案を、荷主による「不当な経済上の利益の提供要請」の事例に挙げ、「問題につながるおそれがある」と注意喚起を行った。

さらに同年9月に公取委が発送した、独占禁止法に基づく物流特殊指定の遵守状況を調べる調査票では、通関業者の立替え払いに関する設問が初めて盛り込まれた。今年1月13日に発出した物流事業者向けの「荷主との取引に関する調査」でも、「経済上の利益の提供性について」の項目で、関税・消費税の立替え払いについて設問が設けられ、立替え払いの要請に応じたことがあるかなどを問うている。

今回の講演会(写真)は、関税・消費税の立替え払い問題について会員事業者の関心が高いことから東京通関業会が企画したもので、質疑応答も活発に行われた。参加者からは「通関業者による自発的な立替え払い」に関連し、「本当はしたくないが、荷主の圧力でしぶしぶ行っていることもある。(どこからが不当な経済上の利益の提供要請か)線引きを明確にしてもらえれば、立替えを拒否しやすくなる」といった意見もみられた。
(2023年2月7日号)


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