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公取委が関税立替払いを「独禁法上問題」と指摘

2024.04.09

通関業者が納税義務者である輸入者に代わって関税や消費税を立替払いする、いわゆる「立替問題」について、公正取引委員会は3月13日に開かれた衆議院財務金融委員会の質疑応答の中で、独占禁止法上の問題となるおそれがあるとの見解をあらためて示した。鈴木俊一財務大臣も公取委の指摘を受け、「指摘に沿った形で是正される必要がある」と答弁。国会の場で立替払いの「法令違反のおそれ」や「是正の必要性」に言及されたことで、荷主と通関業者との取引で長年続いてきた商慣習の見直しがさらに進む可能性もある。

法令違反のおそれ、是正される必要

長年、「民間同士の契約の問題」とされてきた立替払いについて、近年、行政の対応に変化がみられる。財務省関税局は2021年2月、日本貿易会宛ての文書で通関業者による立替払いが「輸入者の優越的な地位を利用した不公正な取引となる場合がある」と指摘。さらに公取委は22年5月、荷主と物流事業者との取引に関する調査の結果の中で立替払いを荷主による「不当な経済上の利益の提供要請」の事例として挙げ、「問題につながるおそれがある」と指摘した。

荷主と物流業者の取引適正化に関する社会的関心も強まっている中、3月13日の衆議院財務金融委員会では、荷主が物流事業者に関税と消費税の納税を立替払いさせている問題について日本共産党の田村貴昭議員が取り上げた。田村氏は、「荷主が通関業者に支払う手数料に比して極めて大きい関税・消費税の立替払いをさせたという事例」ついて、「これは荷主が通関業者に立替払いを強いていることだ」としたうえで、独禁法違反にあたるかどうかを追及した。

これに対し、公取委の片桐一幸事務総局取引部長は、「一般論として言えば、荷主が物流業者に立替払いさせることにより、物流業者の利益を不当に害する場合は独禁法上問題となるおそれがある」と回答。鈴木財務大臣も、「詳細は把握していないが、公取委の説明では法令違反のおそれがあるということなので、その指摘に沿った形で是正される必要がある」と述べた。こうした国会での質疑応答に関して通関業界関係者は、「寝耳に水であり、まさか国会で取り上げられるとは」と驚きも広がっている。

立替払い解消を「ベスト・プラクティス」に

東京通関業会が昨年夏に行ったアンケートによると、「立替払いをしている」との回答は依然として90・6%に達し、その理由(複数回答)は「荷主からの立替払いの要請」が94・4%となっている。ただ、公取委が立替払いの問題を指摘して以降、改善も見られ、前年調査時に比べ「立替払いが減少した」との回答は46・5%まで上昇した。また、全輸入申告件数に占める立替払いの割合についても、「3割未満」とする回答が前年の33%から46%へ13ptの上昇がみられた。

公取委は昨年6月、包括納期限延長制度の利用やリアルタイム口座振替方式の利用を開始するなど、通関業者による立替払いを不要とする措置を講じた事例について、「ベスト・プラクティス」と位置づけて奨励した。輸出入・港湾関連情報処理センターが今年3月に開催した情報処理運営協議会では、輸入者の口座から直接関税等の納税を行うリアルタイム口座振替方式が月間300件程度増えていることが報告されるなど、立替払い解消が進んでいる兆しがうかがえる。
(2024年4月9日号)


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