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「買いたたき」などで荷主777者に注意喚起=公取委

2023.06.06

公正取引委員会は1日、2022年度における荷主と物流事業者との取引に関する調査結果と優越的地位の濫用事案の処理状況を公表した。独占禁止法上の問題につながるおそれのあった荷主777者に注意喚起文書を送付し、荷主の優越的地位の濫用につながるおそれがある14件に対し注意を実施。問題につながるおそれのある行為には、運賃の据え置きや減額だけでなく、待機時間や手作業での積み込みに対して荷主が料金を支払わなかった事例も挙げられた。また、書面調査で新たに回答項目に設けた、荷主が通関業者に関税・消費税の立替え払いを要請している事案については、「不当な経済上の利益提供要請」として引き続き注視していくとし、各種制度の利用により立替え払いの廃止に至った改善事例も報告された。

運賃の据え置き、減額など「買いたたき」が27%

22年度は、荷主と物流事業者との間の物品の運送または保管に係る継続的な取引を対象として、荷主と物流事業者向けに書面調査を実施。書面調査等の結果を踏まえ、現下の労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコスト上昇分の協議を経ない取引価格の据置き等が疑われる事案について、荷主101者に対する立入調査を実施した。

書面調査と立入調査の結果を踏まえ、独占禁止法上の問題につながるおそれのあった荷主777者に対し、具体的な懸念事項を明示した注意喚起文書を送付。注意喚起文書を送付した荷主の上位3業種は「協同組合」(10・6%)、「建築材料,鉱物・金属材料等卸売業」(7・5%)、「化学工業」(5・8%)の順だった。

問題につながるおそれのある回答を行為類型別にみると、「買いたたき」(26・8%)、「代金の支払遅延」(23・1%)、「代金の減額」(22・1%)の順に多かった。問題につながるおそれのある事例では、協議を行わない運賃の据え置きや一方的な運賃の減額、数時間に及ぶ待機時間や手作業での積み込みに対し、荷主が料金を支払っていないケースなどが挙げられた。

また、「優越的地位濫用事件タスクフォース」では、荷主と物流事業者との取引に関する優越的地位の濫用事案において、優越的地位の濫用につながるおそれがあるとして、14件の注意を実施。14件の注意の業種は、共同組合(=農産物の販売事業等を営む協同組合、5件)、物品賃貸業(4件)、化学工業(2件)などだった。

通関業者の関税・消費税立替え、改善事例も

公取委では、昨年5月25日に公表した「荷主と物流事業者との取引に関する調査結果について」において、問題につながるおそれのある事例として、荷主が通関手続において発生する関税および消費税を荷主において直接支払わず、物流事業者に対し、立替え払いをさせた事例を初めて掲載。

同様の事例を把握するため、22年度の書面調査において、新たに回答項目を設けるなどの対応を行った結果、荷主の包括納期限延長制度やリアルタイム口座振替方式、税関に対して提供する担保には金融期間が提供する保証サービスの利用などで、立替えを廃止し、改善に至った事例も認められた。

ただ、「荷主が物流事業者に対し、物流業務に附帯して輸入通関業務を委託するに際して、物流事業者に支払う手数料に比して極めて大きい額の関税および消費税を立て替えさせた」(生産用機械器具製造業)事案も報告され、公取委は、引き続き不当な経済上の利益提供要請として注視していく方針。

なお、公取委は、荷主による物流事業者に対する優越的地位の濫用を効果的に規制する観点から、独占禁止法に基づき「特定荷主が物品の運送または保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」を指定し、その遵守状況および荷主と物流事業者との取引状況を把握するため、荷主と物流事業者との取引の公正化に向けた調査を継続的に行っている。

また、「優越的地位濫用事件タスクフォース」では、優越的地位の濫用行為に係る全国から寄せられる情報および自ら収集した情報に基づき、一元的に当該行為の類型に特化した調査を行うことで事例の蓄積や処理方法の向上を図り、これらを積極的に活用することにより、優越的地位の濫用事案を効率的に処理できるようにしている。
(2023年6月6日号)


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