荷主対策の深度化、2件目の「要請」発出=国交省・堀内自動車局長
国土交通省の堀内丈太郎自動車局長は11月29日、専門紙記者会見を開き、改正貨物自動車運送事業法の荷主対策制度に基づき、東京に本社のある元請運送事業者1社に対して改善を行うよう「要請」を11月に行ったことを明らかにした。「要請」を受けた元請運送事業者は下請事業者に過積載での運行を指示していた。改正事業法による荷主対策制度では、今年8月に初めての「要請」が中部地方のメーカー1社に対して行われており、今回は2件目となる。
安全運行を阻害する悪質な行為と判断
改正事業法の柱のひとつである「荷主対策の深度化」では、荷主が違反行為に関与している〝疑い〟がある段階から、「働きかけ」を行えるようになり、荷主への疑いに相当な理由がある場合には「要請」、要請をしてもなお改善されない場合には「勧告・公表」を行える。国交省ではトラック事業者からの情報収集窓口を通じて、荷主の情報を収集している。11月に行った2件目となる「要請」では、元請事業者が下請事業者に過積載をさせており、国交省は安全運行を阻害する悪質な行為と判断し、「要請」に踏み切った。
2018年12月に成立して今月で丸4年となる改正事業法について堀内自動車局長は、「トラック運送業の健全な発達を図るため規制の適正化を図るほか、働き方改革関連法の施行により2024年度からドライバーの時間外労働の上限が設定されることを踏まえ、ドライバー不足により社会インフラである物流が滞ってしまうことのないよう、その労働条件を緊急に改善する必要がある」とし、改正法の大きな柱である荷主対策の深度化の趣旨に基づき、11月に「要請」を実施したことを公表した。
公取委や中企庁と連携し「しかるべき対応」
改正事業法のもうひとつの柱である「標準的な運賃の告示制度」について、10月末時点での全国の標準的な運賃の届出率は50・9%となったと報告。9月末時点と比べると0・5ptの伸びで「ハイペースではないが徐々に届け出は拡大してきている。(ゼロベースから)ようやく半数に達した」とし、標準的な運賃を活用して荷主と交渉を行い、運賃引き上げを実現した事業者もあることも強調。「一定の成果は上がっているものの、道半ばだ」とし、届出率引き上げに向け全日本トラック協会とも連携して啓発を行うとした。
また、「標準的な運賃の趣旨について、事業者の取引相手である荷主の理解と協力を得るために周知に注力する」と表明。運輸局や本省の自動車局を中心に様々な機会をとらえて荷主団体への周知活動を展開する考えを示した。正当な理由なしに価格交渉に応じない一部の荷主に対しては、「公正取引委員会や中小企業庁などと連携し、独占禁止法や下請法などの法令違反に該当するものとして、しかるべき対応を図る」とした。
このほか、燃料油価格激変緩和補助金や新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金など政府・自治体によるトラック業界への支援策の実施を報告。それに関連し、補助制度は恒久的措置ではなく補助金交付が終了した後は〝経営自立が危ぶまれる〟との声が一部にあることについて、堀内自動車局長は「現在の支援策はあくまでも燃料価格の急激な高騰などに対するもの。トラック事業者への平時の支援とは切り離して考えるべき」と述べるにとどめた。
(2022年12月6日号)