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JR貨物、25年度にコンテナ196億トンキロ必達

2022.10.20

JR貨物(本社・東京都渋谷区、犬飼新社長)は12日、2025年度までに達成すべき目標をKGI(Key Goal Indicator)/KPI(Key Performance Indicators)として策定、公表した。7月末に発表された国土交通省の有識者会議「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」の中間とりまとめで示された内容の具体化に向けた取り組みで、KGIとして「25年度のコンテナ輸送量196億トンキロ」を必達目標に掲げた。犬飼社長は同日行われた会見の中で、今後の輸送量拡大に向け「カーボンニュートラルやトラックドライバー不足、『2024年問題』といった当社にとってプラス要因ともなる外部環境を含め、まだまだ当社に乗っていない荷物を引き込んでいきたい」と決意を述べた。

半年に1回、達成状況をレビュー

検討会の中間とりまとめでは、貨物鉄道輸送量を伸ばすために3つの視点に基づく14の課題が提言された。今回のKGI/KPIはその実現に向け、25年度までに達成すべき数値目標などを定めたもので、今後はこれら目標を事業計画などに反映するとともに、達成状況を決算時期に合わせて半年に1回開示していく。

まず、25年度のコンテナ輸送量については、政府の総合物流施策大綱における目標値である209億トンキロをチャレンジ目標とした上で、196億トンキロを必達目標とする“2段構え”にした。その理由について犬飼社長は「20年度実績が168億トンキロにとどまっていることを考えると、本当に届くのかということがある。まずは過去最高の積載率を記録した17年度の196億トンキロを必達目標に置いた」と説明。また、貨物列車への積載率についても、全日平均81・2%をチャレンジ目標とし、過去最高だった17年度の76・5%を必達目標にした(20年度実績は69・6%)。

定温、31ft、中距離帯の需要掘り起こしに注力

高い市場性が見込まれながら、これまで限定的な取り扱いにとどまっていた定温コンテナや31ftコンテナについても、具体的な輸送量を示した。また、「2024年問題」でトラックから鉄道へのシフト需要が見込まれる中距離帯(400㎞~600㎞)の輸送では、20年度比で23・8%増という高い伸び率を設定した。

さらに、5tに満たない小口貨物の混載・共同輸送の定期ルートを関東~関西間に設定することも示すとともに、現在4駅にしかない「積替ステーション」を22駅まで増やし、貨物駅で混載できるインフラを強化していく。犬飼社長は「トラック1台に満たない中途半端なロットや規模の荷物は、まだまだ誘致できる可能性がある。中小トラック事業者も鉄道利用に誘致していきたい」とする。

このほか、国際海上コンテナの海陸一貫輸送への対応では、まずは輸送ニーズや事業性を検証した上で、事業性が「ある」と判断された場合は、ハイキューブコンテナを積載できる低床貨車の発注を増やしていく。

山陽線での災害時カバー率を5割に引き上げ

現在、貨物鉄道輸送における最大の課題ともいえる災害時など輸送障害への対応では、ボトルネックとなっている山陽線での災害時カバー率(直近の実輸送量に占める代行設定輸送力の割合)を30年度までに50%に引き上げる。また、コンテナ偏積を防止するための輪重測定装置・トラックスケールの設置を25年度までに62駅に増やす(20年度は4駅)。

関係事業者、自治体、運輸局などで構成されるBCP対策会議についても、5都道府県以上で新設などを進める。「代行輸送時の駐車場の確保や特車申請許可の円滑化など、早急な初動体制がとれるよう予め緊密な関係を構築していきたい」(犬飼社長)という。

公共インフラとして自衛隊との連携も

公共インフラである貨物鉄道の新たな社会的要請への対応として、自衛隊との関係強化にも取り組む。自衛隊物資の鉄道輸送はここ数年、増加傾向にあるが、今後も定期的な意見交換などを通じて連携を強めていく。犬飼社長は「有事を想定した訓練の際に、輸送面でお役に立てるなど、鉄道が貢献できる部分があると考えている」と述べた。

また、将来的な新幹線による貨物輸送の拡大に向けては、国交省が今後設置する検討会に参画していくほか、貨物専用新幹線車両の設計についても検討していく。

コンテナ3段積で駅のキャパシティ創出

“誰でもいつでも利用できる貨物鉄道”の実現に向け、「物流MaaS(ワンストップ予約システム)」の基本計画案を策定するほか、実証実験の実施も計画。パレチゼーションの推進では、現在は設置がないパレットデポについて全国主要都市を中心とした22の貨物駅で設置する。また、大型物流施設「レールゲート」からの鉄道荷物の発送について、年率3%のペースで増加を図る。安全上の観点から現状2段積としているコンテナについて、今後は3段積にしていくことで手狭になっている貨物駅でのキャパシティを生み出していく。高橋秀仁・執行役員経営統括本部副本部長兼経営企画部長は会見で「技術的には3段積は可能。今後は安全に配慮しながら、どの場所であれば3段積が可能なのか検証しながら進めていく」と述べた。25年度までに12ft換算で900個分のキャパシティ創出を目指す。

荷主に経済的インセンティブ付与へ

「環境にやさしい」という貨物鉄道の特性をさらにアピールしていくため、鉄道にシフトした場合のCO2概算排出量(ドアツードア)が一目で分かるサービスを導入する。また、鉄道を利用する荷主に経済的なインセンティブを与えるため、より精緻なCO2排出量を算定できるようにした上で、Jクレジット制度への申請やESG金融に活用できる仕組みを整備していく。
(2022年10月20日号)


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