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22年度の国内貨物輸送量はマイナスに=NX総研

2022.10.13

NX総合研究所(本社・東京都千代田区、廣島秀敏社長)は7日、「2022年度の経済と貨物輸送の見通し(改訂)」を発表した。今年度の国内貨物輸送量は、前年度比0・5%減の42億3280万tと前年度を下回る見通し。今年7月時点での0・6%減という見通しから0・1pt上方修正した。建設関連貨物を除く輸送量(消費関連貨物+生産関連貨物)は23億8420万tとなり、前年度比1・3%増となる見通し。

国内総輸送量は減少も、一般貨物だけではプラス

21年度の国内貨物輸送量は、コロナ禍に見舞われた20年度 の反動から2・9%増とプラスになったものの、22年度は再びマイナスに転換する見通し。

22年度を上期と下期に分けると、上期は1・5%減。これは生産関連貨物を中心に中国におけるロックダウンや半導体などの部材不足の影響が残るため。下期はその影響が徐々に解消され、下期だけでは0・5%増のプラスに転じるものの、通年では水面下となる。

22年度の品類別貨物輸送量をみると、消費関連貨物は上期が6・6%増、下期も2・8%増となり通年で4・6%増とプラスを見込む。個人消費が堅調に推移しているためだが、それでもコロナ前の19年度の水準には大きく届かない。生産関連貨物は上期が4・8%減と落ち込み、下期は3・3%増と回復するものの通年では0・7%減。建設関連貨物は上期が2・8%減、下期は2・6%減となり、通年では2・7%減となる見通し。

建設関連貨物を除いた一般貨物(消費関連と生産関連)では、上期が0・4%減と水面下にあるものの、下期は3・0%増となり、通年では1・3%増とプラスを確保する。

JRコンテナ、営業トラックなどはプラスに

輸送モード別の貨物輸送量では、JRコンテナは1・4%増と3年ぶりにプラスに転じるが、これは災害からの反動要素が大きく、19年度比では1割程度のマイナス水準。JR車扱は猛暑や厳冬が石油需要を押し上げることで2・2%増を予測する。

営業用トラックは1・2%増と2年連続でプラス。上期は生産関連貨物の低調などでマイナスだったが、下期はプラスに転じる。一方、自家用トラックは3・7%減とマイナスに反転。営業用トラックのうち特積み貨物は1・6%増と2年連続でのプラス。NX総研の佐藤信洋シニアコンサルタントは「特積み貨物の「3~4割を占める宅配貨物がEC需要によって堅調であり、それが底支えしている」と説明する。

内航海運の22年度は0・6%減。原材料や燃料の価格高騰が輸送量を下押しする懸念がある一方、足元の生産関連貨物は堅調。しかし、建設関連貨物の減少があることから全体では水面下に落ち込むと予測する。国内航空は輸送供給力が回復することから13・0%増と3年連続での2ケタ増を見込む。

外貿コンテナ、国際航空とも微増にとどまる

国際貨物では、外貿コンテナは2・1%増を見込む。内訳は輸出が1・8増、輸入が2・2%増。世界経済の減速感が強まる懸念があることに加え、中国でのロックダウン、海上輸送混乱の影響が残ることで、通年では小幅な増加にとどまる。中国でのさらなるロックダウンや米国などでの港湾労使交渉の結果などによっては、伸び率がさらに下振れする可能性もあるという。

国際航空も輸出が0・2%増、輸入が0・4%増の微増にとどまり、合計でも0・3%増となる見通し。下期以降、半導体関連や自動車部品などの復調が見込まれる一方、需要を押し上げていた〝船落ち貨物〟の回帰が下押し要因となる。

荷動き動向はやや改善の動き

荷主企業(製造・卸など700社から回答)への調査による荷動き指数の速報値では、22年7~9月期実績(見込み)指数は前期(4~6月)から4pt上昇の「マイナス4」に改善した。中国でのロックダウン解除や部品・部材の供給不足緩和を受け、荷動きに改善傾向が出てきたことが伺える。10~12月見通しは、「ゼロ水準」を見込む。

運賃転嫁進まず、「日本はいまだにデフレ状況にある」

NX総研の佐藤信洋シニアコンサルタントはオンラインでの説明の中で、トラック運賃の足元の状況について「燃料費などのコスト増加分についてすら転嫁できていない。運賃値上げをお願いすれば、他の事業者に荷物をとられてしまうためだ。この状況は、デフレの最たるものだ」と述べた。「日本は全般的に見ても、欧米のようにコストが転嫁できておらず、製品やサービスが売れなくなるとの不安から自社でコストを吸収している。GDPは付加価値の合計であり、このままの状態ではGDPは伸びない」と解説。

「2024年問題」については、「いやな言い方になるが、こうした状況が続けば、24年4月になる前に廃業するトラック事業者が増えるのではないか。後継者不足ということもあり、ちょうどいい機会だと考える場合も多い。そこで供給力が落ちて、荷主が初めて気付くということが考えられる。いずれにせよ、日本は欧米と違い、いまだにデフレという異常な状況にある」と述べた。
(2022年10月13日号)


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