大和ハウス/大和物流、長距離輸送で鉄道モーダルシフト
大和ハウス工業(本社・大阪市北区、芳井敬一社長)と大和物流(本社・大阪市西区、木下健治社長)では、トラックドライバーの労働時間に罰則付きで上限規制が設定される「2024年問題」を控え、おもに外壁部材の長距離輸送について、鉄道へのモーダルシフトを推進する。トラックの手配が一層困難になることを回避するとともに、労働環境改善や輸送に伴うCO2排出量削減に寄与するのが狙いだ。
トラックの手配難回避し、CO2排出量を削減
大和ハウス工業では、各工場で特定製品を専門に生産する「生産ラインの集中生産化」の試みを進めており、その結果として、製造後の工場間輸送の増加や建築現場までの輸送距離が長くなり、物流コストが増加するという課題があった。
長距離輸送でかつ輸送物量も多いとなるとトラックの手配難やドライバーの労務上の問題も懸念され、大和ハウスグループの「環境長期ビジョン“Challenge ZERO 2055”」に基づく、CO2の排出量が少ない輸送方法も模索されていた。
そこで両社は、長距離輸送について、トラックからJRコンテナによる鉄道輸送へのモーダルシフトを検討。大ロット輸送でCO2排出量の少ない鉄道利用のメリットを生かすため、500㎞以上の輸送となるルートを検証した。
北海道では物流センターの一時保管面積削減も
すでに栃木二宮工場(栃木県真岡市)~東北、北海道の建設現場、奈良工場(奈良県奈良市)~東北工場(宮城県大崎市)および新潟工場(新潟県上越市)、岡山工場(岡山県赤磐市)~九州工場(福岡県鞍手郡)、および熊本、鹿児島の建設現場向けに鉄道を利用している。
鉄道輸送が最も活発なのが栃木二宮工場。宇都宮ターミナルからJRコンテナ輸送により、東北・北海道方面へ納期に合わせて現場配送を行っている。
鉄道を利用する場合、現場の近くのターミナル駅まで鉄道輸送し、そこから現場へ直送するスキームを採用しているため、駅での留め置きを利用することで、大和物流の札幌物流センター(北海道恵庭市)の一時保管面積を削減できるメリットもある。
駅での留め置きは運用上のメリットは大きいが、工事現場への納品のため、納品日の変更が頻繁に発生。このため、駅でフリーで一時保管できるのは2日間という制約がネックとなるケースも多いという。
なお、鉄道輸送の荷姿は鋼製パレット。床フックがないためにラッシングの緩みが発生しやすく、貨物の規格によっては不向き。また、荷崩れのリスクもあり、輸送品質の向上に向けて注力している。
今後、両社では、「2024年問題」対策のひとつとして長距離輸送の鉄道へのシフトについて検討を進めていく。「建材の鉄道輸送はトラックと比べ積載率が悪化し、経済合理性をいかに高めるかが課題」(大和物流)としている。
(2022年5月24日号)