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【ズームアップ】再生エネ拡大、倉庫の「屋根」が担う

2021.09.09

政府は2050年の温暖化ガス排出実質ゼロを宣言し、脱炭素へと舵を切ったことで、太陽光発電の供給基地として倉庫の「屋根」が注目されている。30年度に温暖化ガス削減量を13年度比で46%削減する中間目標と連動し、再生可能エネルギーの電源比率を36~38%に引き上げる新目標が設定された。太陽光発電は最も普及している再生エネで、経済産業省では、パネルの価格低下などにより発電コストが30年には最も低コストになると試算している。太陽光パネルの設置場所が限られる中、広大なスペースを持つ物流施設の屋根は有望な候補地となり、企業の脱炭素への取り組みと相まって、倉庫の屋根上太陽光発電の再ブームが到来している。

自家消費のほか余剰電力の買い取り・融通も

物流不動産会社による太陽光発電のビジネス化が加速している。シーアールイー(CRE)はエンバイオ・ホールディングスと共同出資によりグリーン電力供給事業を行う新会社を設立。これまでも開発物件で太陽光発電システムを導入していたが、使用電力を100%再生可能エネルギーへ転換するとともに、物流施設が相互に再生可能エネルギーを融通し合うスキームの構築も目指す。

東京建物と東京ガスは物流施設における再生可能エネルギーを活用の取り組みを共同で実施。東京建物が開発した埼玉県久喜市の物流施設に大容量の太陽光パネルを設置。発電した電力は施設構内で消費し、施設で消費しきれない余剰電力については、東京建物が所有する群馬県伊勢崎市の商業施設に東京ガスグループのサービス「ソーラーアドバンス」の仕組みを活用して自己託送する。

伊藤忠商事は物流施設や商業施設等に設置した太陽光発電で発生する余剰電力を買い取り、CO2フリー電力として設置先および周辺地域に電力供給を行う「余剰電力循環モデル」を構築、サービス提供を開始する。グループ会社の日本アクセスの物流施設を活用した取り組みを進めており、同モデルの活用により定温・常温倉庫への設置が可能となるなど、対象施設が拡大する見込みだ。

物流会社と連携しPPAの活用も

施設の所有者が無償提供する屋根などのスペースに、発電設備の所有・管理会社が設置した設備で発電した電力を施設所有者へ有償提供する「PPAサービス」も注目される。センコー、エフビットコミュニケーションズ、日本ユニシスはセンコーの岐阜県内の大型物流センターで、同拠点の電力自家消費率向上を目的としたPPAによる大規模な太陽光発電設備を導入。余剰電力を電力小売事業の電源として有効活用するためのスキームを構築する。

電力小売のLooopはシモハナ物流グループの物流センターの屋根上に、自家消費型太陽光発電設備をPPAにより納入・設置。岡山県、福岡県、埼玉県の4拠点にLooopが初期費用ゼロで太陽光発電設備を設置。シモハナ物流は発電したCO2フリーの電力を自設備内で使用し、使った分の電気代をLooopに支払う。

30年度の電源構成の再生エネルギーの内訳は太陽光15%、風力6%、地熱1%、水力10%、バイオマス5%程度を見込んでいる。再生エネの“主力電源”として期待されているが、平地では用地不足が指摘されている。そうした中で、倉庫屋根は有力な設置場所となる。物流会社や物流不動産会社の脱炭素化ニーズも追い風に、物流インフラとしての倉庫が、電力供給のインフラとしての存在感を高めていく可能性がある。
(2021年9月9日号)


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