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港湾地区で危険物輸送のあり方見直しへ

2021.09.02

港湾地区における安全で円滑な危険物輸送の実現に向けた検討が始まった。危険物物流に携わる事業者団体や港湾労組などから、手続きの簡素化による物流の効率化や危険物に関する適切な情報伝達の必要性などの要望が示されたことを受け、消防庁ではこのほど有識者による検討会を発足。夏から秋にかけてヒアリング調査などを行い、年明けに対応案を策定、来春に報告書をまとめる。

消防法上の手続き、電子申請の活用も視野

検討項目とされたのは①国際輸送用コンテナにかかる消防法上の手続きの簡素化②コンテナに混載されている荷物にかかる危険物情報の適切な情報伝達③海外製の特殊な容器、国連規格や機械器具等における危険物の運搬④大規模物流倉庫や高層ラック式倉庫における危険物の貯蔵にかかる留意事項のあり方⑤消毒用アルコールにかかる緊急的な危険物輸送――の5つ。

このうち国際輸送用コンテナにかかる消防法上の手続きの簡素化の検討は、移動タンク貯蔵所の変更許可申請や資料提出の手続き、ふ頭などで危険物コンテナを仮貯蔵する際の危険物仮貯蔵・仮取り扱い承認申請の手続きの簡素化について、日本危険物物流団体連絡協議会から要望があったもの。電子申請の活用なども視野に入れ、同手続きの実態調査を行い、分析結果を踏まえて手続きの簡素化について議論する。
現在の国際輸送用コンテナの輸送とそれに連動する消防法手続きの流れでは、船舶における危険物の貯蔵・取り扱いに関し消防法の適用除外規定があり、国際輸送用のコンテナは陸揚げされた時点から消防法の規制が及ぶ。陸揚げ後、10日以内でふ頭内の同一場所で国際輸送用コンテナを仮貯蔵する場合は、所轄消防長または消防署長の仮貯蔵・仮取り扱いの承認が必要となる。

仮貯蔵後の移送にあたっては、シャーシが「移動タンク貯蔵所」の許可を受けていない場合は、国際輸送用コンテナを含めて常置場所(車庫や工場)を管轄する市町村長の許可が必要。シャーシが「移動タンク貯蔵所」の許可を受けている場合は、国際輸送用コンテナの追加を「交換コンテナの追加」として常置場所を管轄する市町村長等に対し、資料提出の届出を行わなければならない。

検討会では、港湾地区における物流のさらなる迅速化に向け、国際輸送用コンテナがふ頭に陸揚げ、仮貯蔵、移送されるまでの間に、消防法上の手続き(申請・届出等)の処理のために運搬に遅延が生じた事案を把握。各種手続きの電子申請等の導入に向けた動向やデジタル技術の活用について情報収集し、国際輸送用コンテナにかかる消防法上の手続きのさらなる簡素化の運用について検討する。

荷主から通関・輸送業者への情報伝達状況を把握

コンテナに混載されている荷物にかかる危険物情報の適切な伝達方法の検討については、全国港湾労働組合連合会、全日本港湾運輸労働組合同盟からの申し入れに基づくもの。港頭地区での蔵置・管理状況や、陸上輸送となるまでの間に、港湾運営会社や港湾労働者などすべての関係者に「危険物であること」がわかるような仕組みの構築が要請されたため、効果的な情報共有のあり方を探る。

具体的には、荷主が危険物に該当するか否かを確認し、その情報を的確に通関業者や輸送業者に伝達しているかを把握。荷主団体(日本化学工業協会、日本化学品輸出入協会)に対し、荷物の危険物確認の状況、輸入に伴う通関業者への危険物情報の伝達状況についてヒアリング調査を実施。結果を踏まえ、危険物輸送時における荷主による関係事業所間での情報共有のあり方をまとめる。
(2021年9月2日号)


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