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【ズームアップ】リチウム電池保管、「ユニット」を提案

2022.04.26

リチウムイオン蓄電池の保管規制の見直しの議論が本格化している。消防庁の「リチウムイオン蓄電池に係る火災予防上の安全対策に関する検討会」ではリチウムイオン蓄電池を貯蔵する屋内貯蔵所の面積、階数、軒高制限の見直しの方向性として、「火災を局限化するために火災の安全対策等を講じたユニット(区画)を位置づけ、それを連続して隣接させる」安全対策案を提示した。

「積み上げ」「ラック」で消火設備を検証

車載用リチウムイオン電池を貯蔵する倉庫については、火災が発生した場合に火炎が激しく噴出し、圧力が上昇するため、その圧力を上部に放出し、近隣建築物等への影響を小さくするため原則、「平屋建て」とされる。また、事業者による消火器等を使用しての初期消火活動や消防隊が開口部から内部に放水した場合に水が届く高さなどを考慮し、軒高は「6m未満」。火災等の被害を局限化するため床面積は「1000㎡以下」としている。

検討会では、規制を見直す場合の安全対策の考え方として、①貯蔵する危険物はリチウムイオン蓄電池に限定②壁、柱および床を耐火構造とし、はりを不燃材料で作るとともに、延焼の恐れのある外壁を出入口以外の開口部を有しない壁とする③天井は6m未満④1000㎡以内ごとの区画⑤区画の開口部は自動閉鎖式の特定防火設備(1時間耐火)⑥スプリンクラー等の自動の消火設備の設置――を示した。

面積に制限を設けなければ、火災時の消防隊による消火が困難となり、防火シャッターの動作不良、物件存置による閉鎖障害等で出火区画の火災が収まらない場合があることを踏まえ、隣接区画に設ける消火設備は出火区画と別系統とするとした。また、リチウムイオン蓄電池の火災については、冷却効果による消火が有効であることから、冷却効果を持つ水を使用する、自動的な消火設備の設置について検討する。

リチウムイオン蓄電池を「積み上げて貯蔵する」場合の消火設備については、スプリンクラー設備がリチウムイオン蓄電池の火災に適応するか検証。リチウムイオン蓄電池を「ラックに貯蔵する」場合の消火設備は、海外の基準では、国内の一般のラック式倉庫に設置するスプリンクラーとほぼ同様のものとされていることを参考に、一般のラック式倉庫に設置するスプリンクラーについて、リチウムイオン蓄電池の火災に適応するか調べる。

消防法上の危険物、火災危険性を指摘

2050年までのカーボンニュートラルおよび30年度における温室効果ガス46%排出削減の実現に向け、再エネ最大限導入のための規制の見直しや蓄電池の導入拡大などの投資を進めるとされている。これを踏まえ、リチウムイオン蓄電池に係る火災予防上の安全対策について調査検討を行うことを目的として、検討会が発足し、3月25日に第1回会合が開催された。

リチウムイオン蓄電池の電解液は消防法で危険物(引火性液体)に定められている。火災等が発生した場合は電解液や可燃性ガスがセルの外部に噴出・着火し、激しく火炎を噴き出すことから、リチウムイオン蓄電池の火災危険性が指摘されている。リチウムイオン蓄電池に係る海外の火災事例としては、熱暴走や大規模な黒煙による環境汚染の懸念も報告されている。
(2022年4月26日号)


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