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ヤマトHD、新中計「Oneヤマト2023」策定

2021.02.04

ヤマトホールディングス(本社・東京都中央区、長尾裕社長)は1月29日、2021年度から23年度までの3ヵ年を期間とする新たなグループ中期経営計画「Oneヤマト2023」を策定した。今年4月からヤマト運輸を中心とする新たな経営体制に移行することを踏まえ、生活様式の変化や、それに伴う産業のEC化など新たな流通構造の変化に対応した戦略を具現化する。最終年度となる23年度には、連結売上高2兆円、営業利益1200億円(営業利益率6%)、ROE10%以上の目標を掲げるとともに、3ヵ年で計4000億円の投資を実行する。

法人営業強化など9つの重点施策

ヤマトグル―プでは20年1月に中長期の経営グランドデザイン「YAMATO NEXT 100」を発表し、データ分析による需要予測の精緻化や人員・車両の最適配置、「産業のEC化」に対応した新配送ネットワークの構築などを推進。昨年6月からはデジタルデータに基づく新配送サービス「EAZY」を開始し、新型コロナによる荷物の急増に対応した。

今回の新中計は、そこで打ち出された基本路線を踏襲するとともに、成果をさらに確固たるものにすることを目指し、①データ分析に基づく経営資源の最適配置、②グループインフラの強靭化、③サプライチェーンをトータルに支援する、ビジネスパートナーへの進化、④ECエコシステムの最適解の創出、⑤資本効率の向上、⑥「運創業」を支える人事戦略の推進、⑦経営体制の刷新とガバナンスの強化、⑧データ戦略、イノベーション戦略の推進、⑨サステナブル経営の強化――という9つの重点施策を展開する。

「グループインフラの強靭化」では、約110拠点の営業倉庫、77拠点のベース(仕分けターミナル)、約3700ヵ所の宅急便センターなどをネットワーク上に再配置し、機能統合や自動化などの増強を進めることで、ネットワーク上の仕分け能力を21年3月期比で最大1・5倍に向上させる。また、幹線・ミドルマイル・ラストマイルの各輸送機能の全体最適化を図るとともに、「EAZY CREW」など外部のパートナーとの連携を強化する。業務プロセス改革(BPR)も進め、管理・間接業務を21年3月期比で約4割削減する。

「サプライチェーンをトータルに支援する、ビジネスパートナーへの進化」では法人向け営業の強化を図る。倉庫や輸送機能をシームレスに結合するとともに、デジタル情報による可視化を通じ、上流から下流までサプライチェーン全体にわたる価値提供を目指す。法人向けソリューションを一元的にマネジメントするため「法人ソリューション・コントロールセンター」を新設する。

また、「産業のEC化」に対応し、ECエコシステムの最適解の創出を進める。ライブコマースなどの新たな販売チャネルの創出に加え、実店舗のEC化支援などを実施。さらに、4500万人を超えるクロネコメンバーズ会員と、130万社を超えるヤマトビジネスメンバーズ会員をつなぐ仕組みづくりを検討し、「新たな〝運ぶ〟」を創出するとともに、顧客とのエンゲージメントを強化する。

このほか、人事戦略では、教育専門組織「クロネコアカデミー」を新設するなど人事制度を刷新するほか、デジタル人材の早期育成を図っていく。

4月から「ワンヤマト体制」へ

今年4月からスタートする新たなワンヤマト体制では、ヤマト運輸とグループ7社を統合してリテール部門と法人部門に大別した上で、4つの事業本部(リテール事業、法人事業、グローバルSCM事業、EC事業)に再編。さらにそれを支える4つの機能本部(輸送機能、デジタル機能、プラットフォーム機能、プロフェッショナルサービス機能)を設けるとともに、コーポレート本部を設置する。純粋持株会社は存続するものの、ヤマト運輸を中核としたスピード重視のガバナンスを構築する。

計4000億円の投資を実行へ

数値目標では、最終年度となる23年度に連結売上高2兆円(21年3月期予想値比19・0%増)、営業利益1200億円(同46・3%増)、経常利益1200億円(同46・3%増)、当期純利益720億円(同67・4%増)を掲げた。売上高営業利益率は21年3月期予想の4・9%から1・1pt増の6%の達成を計画。ROEは21年度3月期予想の7・8%から2・2pt増となる10%の実現を目指す。

また、計画実現のための3ヵ年で計4000億円の投資を予定。内訳は、車両・施設・機器等の経常投資が2000億円、デジタル投資(基幹システム刷新、データ基盤強化、EAZY機能拡張)が1000億円、新たな拠点設置などに500億円、荷役機器に500億円となっている。
(2021年2月4日号)


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