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【ズームアップ】JR貨物の新座(タ)「積替ステーション」

2020.11.24

JR貨物(本社・東京都新宿区、真貝康一社長)が総合物流企業グループへの成長を図るための施策の一環として、今年7月に新座貨物ターミナル駅(埼玉県新座市)に開業した「積替ステーション」。駅構内で貨物を12ftコンテナに積替えできるようになることで、コンテナ専用車だけでなく、一般トラックによる持ち込み・持ち出しが可能になり、鉄道コンテナ利用の〝間口〟を広げる取り組みとして期待が高まっている。

1日最大35コンテナを積替え

同社はこれまでにも、東京貨物ターミナル駅や熊本駅で同様の積替え機能を提供してきたが、今回の新座タでの開設を機に名称を「積替ステーション」に統一。今後は貨物駅機能の高度化施策の一環として全国の主要駅で設置を進めていく。

新座タの積替ステーションは、屋根付きの上屋施設内に開設。天候に左右されずに、安全に積替え作業ができることが最大の特長だ。エリアは7つに区分されており、同時に最大7個の12ftコンテナの積替え作業が可能。利用時間帯は当初、①9:20~10:40②11:00~12:20③13:10~14:30④14:50~16:10の4回転を設定し、最大1日当たり28個の積替えが可能としていたが、利用運送事業者から夜間にも利用したいとの要望があったことから、9月末から新たに⑤17時~翌9:00の時間帯を新設し、計5回転・最大35個まで対応可能になった。①~④は当日の列車に積載可能だが、⑤は翌日の列車への積載となる。

積替ステーションの予約受付けや駅構内でのコンテナ移送は、グループのジェイアール貨物・北関東ロジスティクスが担当。利用する際には、前日までに希望日や時間帯、コンテナ個数を利用運送事業者経由で予約する。利用者は予約した時間帯に一般トラックで貨物を持ち込み、割り当てられたエリアで積替え作業を行う。基本的には日曜日は休みだが、事前相談があれば対応は可能だという。

定期利用も始まり、徐々に浸透へ

「7月のスタート当初はコロナ禍で思うような営業活動ができなかったこともあって利用は低調だったが、10月に入ってから徐々に利用が増えてきた」と語るのは新座タの安達光宏駅長。引越し荷物の利用が多いというが、ここにきてBtoB貨物の定期利用が始まるなど手応えを感じ始めている。ピークは引越しが繁忙期を迎える3月頃を想定しており、現在は周知期間と位置づけて施設使用料・移送料を大幅に割引く「お試しキャンペーン」を展開中。通常の利用料金は2500円(施設利用料2000円、コンテナ移送料500円)だが、11月までは移送料500円のみ、12~1月は1500円(施設使用料1000円、移送料500円)で利用が可能だ。

また、大型トラックで積替えをしたいという要望があったことから、9月末から10t車での持ち込み・持ち出しも可能にした。利用する際は、7エリアのうち番号5~7の3スパンを使って積替え作業を行う。安達氏は「混雑状況によって対応できない場合もあるが、今後もお客様や利用運送事業者の要望を汲みながら柔軟な運用を心掛けたい」とする。

発着インバランスの解消にも

今回、積替ステーションを開設した新座タは、国鉄時代の1973年に開業した武蔵野線の拠点駅であり、コンテナ取扱量は全国6位の100万7800t(19年度)を誇る。近隣に印刷・製本工場などが多く立地している関係から紙製品の取り扱いが多く、駅構内にはグループ会社である日本運輸倉庫が専用倉庫を構えている。ただ、同駅が抱えている課題のひとつが発着コンテナ数のインバランス。19年度実績でみると、発送29万7500tに対し到着が71万tと2倍以上の開きがある。「発送と到着が同レベルだとコンテナが滞留せずに、空コン回送が減り、効率化や駅収支の改善につながる。新座タの場合、発送コンテナ数を増やすことが大きな課題」(同)だと説明する。

そのための施策のひとつが積替ステーションの開設でもある。「本社から積替ステーションの設置を進めていくという説明があった時、真っ先に手を挙げた。屋根のついた大きな上屋施設があったことも、当駅に開設が決まった大きな理由のひとつだと思う」(同)。積替ステーションに生まれ変わった場所は、もともとは利用運送事業者が資材置き場や駐車場代わりに使用していたが、趣旨を説明して移動に協力してもらったという。

駅構内の安全確保にも効果

安達氏が新座タへの積替ステーションの開設にこだわった理由がもうひとつある。それは駅面積の狭さだ。新座タの敷地面積は東京ドーム約3個分となる約14万㎡あるが、コンテナ取扱量の多さに比べて広さは十分ではない。同駅のコンテナ留置個数は700~750個が適正とされているが、発着のインバランスもあり繁忙期の留置数は最大1800個に達することもあり、スペースを圧迫していた。利用運送事業者は繁忙期などに駅構内の空きスペースで積替え作業を行うこともあり、安全確保の面から課題となっていた。「積替ステーションの開設を機に、駅構内全体の作業スペースの見直しを図り、積替え作業が安全かつ天候に左右されないスペースで行えるようになったことは大きい」(同)と語る。

鉄道コンテナ利用の多様化へ

新座タは関越自動車道の所沢ICや東京外環自動車へのアクセスも良く、周辺には大型物流施設の立地が進むなど、将来的な発送コンテナの増加が期待できる。鉄道コンテナ輸送には、緊締装置が付いたコンテナ専用トラックが必要だと考えられがちだが、一般トラックによる持ち込み・持ち出しという選択肢が広がったメリットは大きい。安達氏は「利用運送事業者の皆さんも、コンテナ専用車による集荷・配達に加え、積替ステーションの利用をベースにした一般トラックによる集配を使い分けることで、サービスの多様化を実現してほしい。我々も〝使いやすい鉄道コンテナ輸送〟〝使いやすいJR貨物〟を積極的にアピールしていきたい」と今後の利用拡大に期待を寄せている。
(2020年11月24日号)


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